軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ピルン

二日後の朝、僕たちのパーティーは調達した馬車でタンサの町を出発した。

馬車は緩やかな丘が連なる草原を進み、やがて森の中に入っていく。

この道は西の森にあるエジン村に続いていて、その先は歩いてダンジョンに向かうらしい。

ガタガタと音がして、体が上下に揺れる。

馬車は早くて楽だけど、長く乗ってると腰に痛みが出るんだよな。

途中で休憩をしながら舗装されていない道を進み、僕たちはエジン村に到着した。

そこの宿屋で一泊し、翌朝、徒歩で深い森の中を進む。

何度かモンスターに遭遇したが、僕が戦うことはなかった。全てピルンが倒してくれたのだ。

ピルンは狂戦士だから、攻撃力が高い。硬い皮膚を持っているモンスターも一撃で倒すことができる。まだ、Dランクだけど、実力はBランクに近いレベルじゃないかな。

アルミーネも素材を使用すれば強力な魔法が使えるし、キナコは人族よりも圧倒的に強い魔族を何十体も倒している。

僕は恵まれているな。こんな強い仲間とパーティーを組めて。

次の日の午後、僕たちは目的地に到着した。

そこは周辺の草木が刈り取られていて、崖下の穴の側に黄土色のテントがいくつも立てられていた。テントの近くには数十人の男女がいて、食事の準備をしている。

僕たちの姿に気づいて、二十代半ばの男が近づいてきた。

「アルミーネさんのパーティーですね? 私は冒険者ギルドの職員のフランクです。依頼を受けていただき、感謝します」

フランクは丁寧に頭を下げた。

「おまけみたいなものだけどね」

アルミーネは舌を出して、周囲を見回す。

「で、月光の団と聖剣の団は?」

「もう、ダンジョンの中に入っています。月光の団は二十八人、聖剣の団は三十人、どちらもメインのパーティーは四人で、残りがそれをサポートする団員のようです」

「八人の実力ある冒険者がいるってことね」

「ええ。その八人はCランクが三人、Bランクが三人、Aランクが一人、そしてSランクが一人ですから」

「どっちも気合入ってるね。それだけ、状況はよくないのかな?」

「そう……ですね」

フランクの眉間にしわが寄った。

「調査団が行方不明になってから、もう二十日以上過ぎています。最初に救出を依頼したパーティーも中層に危険なモンスターが多数いるのを確認して撤退しましたし」

「危険なモンスターとは何だ?」

キナコがフランクに質問した。

「魔鋼蜘蛛です」

「魔鋼蜘蛛か。たしかにあれは危険だな。すぐに増えるし、女王蜘蛛は背丈が三メートルを超えるものもいる」

「はい。体も硬く魔法耐性もあるので、魔鋼蜘蛛の群れに全滅させられたパーティーも多いです」

「調査団も魔鋼蜘蛛にやられたのではないか?」

「その可能性もありますが、全滅ではないようです。調査団の数人は魔道具の『生命の指輪』を装備しています。対になる『生命の水晶』に彼らがまだ生きている光が灯っていますから」

「なるほどな」

キナコは視線をダンジョンの入り口に向ける。

「ならば、俺たちも急いで動いたほうがいいか」

「はい。よろしくお願いします」

フランクと周囲にいた職員たちが、僕たちに向かって同時に頭を下げた。

ダンジョンに入ると、周囲の空気が一気に冷たくなった。

緩やかな斜面の先には広がった空間があり、そこに多くの木箱が積まれている。多分、調査団が置いたものだろう。その先は通路が二つに分かれている。

通路の前でアルミーネが腕を組む。

「うーん。どっちに行く?」

「ピルンにまかせるのだ!」

ピルンはマジカルハンマーを取り出し、地面に立てる。ゆらりとマジカルハンマーが傾いて倒れた。

マジカルハンマーの頭が右側にあるのを見て、ピルンは右の穴を指さす。

「こっちなのだ。こっちに行けば調査団がいるのだ」

「そんなので決めていいんだ?」

僕は首をかしげる。

「何の根拠もない決め方だと思うけど?」

「ふっふっふっ、ヤクモはわかってないな。このやり方でピルンは宝箱を見つけてるのだ」

ピルンは自慢げに胸を張る。

「戦闘だけじゃなくて、探索能力もあるピルンのすごさに恐れおののくのだ」

「で、宝箱は何個見つけたの?」

「十回試して、一個見つけたのだ」

「運よく見つけただけじゃないか!」

僕はピルンに突っ込みを入れた。

一瞬、スキルの能力かと思ってしまった。

「まあ、探索能力はわからないけど、ピルンがすごいのは認めるよ。狂戦士で【防御力強化】の戦闘スキルも持っているし」

「ピルンはSランクになれる逸材だからな」

「そういや、どうしてピルンはSランクを目指してるの?」

「リムシェラと約束したのだ。ピルンもSランクになって、いっしょに魔王ゼズズを倒すって」

「ん? リムシェラってSランク冒険者のリムシェラ?」

僕はピルンに質問した。

「ヤクモはリムシェラを知っているのか?」

「そりゃ知ってるよ。リムシェラは十二英雄の一人だし」

「そうなのだ! リムシェラは六魔星ガルラードを倒して、ニン国を救ったからな。同郷の誇りなのだ」

「へーっ、同郷だったんだ」

「ミファ村出身なのだ。そこでピルンはリムシェラに冒険者の心得を教えてもらったのだ」

ピルンは両手を腰に当てて、にっと尖った歯を見せる。

「リムシェラはピルンに言ったのだ。『ピルンがSランクになったら、いっしょに魔王ゼズズを倒そう』って」

「それで、前に『魔王を倒す』って言ってたんだね」

「そうなのだ。ピルンとリムシェラが世界を救ってみせるのだ!」

「世界を救う……か」

僕はピルンを見つめた。

魔王を倒して世界を救うなんて、僕は考えたこともなかった。

ピルンは僕より年下で突っ込み所のある言動も多いけど、仲間として尊敬できるな。