軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

聖剣の団

タンサの町の大通りにある四階建ての建物の一室で、聖剣の団のリーダー、キルサスが幹部のエレナと話をしていた。

エレナは二十代半ばのエルフでAランクの魔道師だった。髪は金色でダークグリーンのローブを身につけている。

「……じゃあ、調査団の救出の依頼は、このメンバーにやらせることにするわ」

エレナは団員の名前が書かれた紙をキルサスに渡す。

「パーティーのリーダーはこの前入団してくれたガルディでいいよね?」

「ああ。彼には高い給料を払っているからな。しっかりと働いてもらわないと」

そう言って、キルサスは金色の髪をかきあげた。

「強い団員が増えたのはいいが、人件費が高くなるのが難点だな」

「そりゃしょうがないでしょ。ガルディはAランクなんだし」

エレナは肩をすくめる。

「私の給料が払えないなんて、言わないでよ。こうやって、裏方の仕事もやってるんだから」

「大丈夫だ。仕事の依頼は増えたし、新人を一人追放したからな」

「えっ? 追放って誰を?」

「紙使いのヤクモだ」

「ヤクモ……」

エレナは首をかしげた。

「どうして、ヤクモを追放したの? 新人の四人の中で一番ましに思えたけど」

「んっ? 何を言ってる?」

キルサスは整った眉を眉間に寄せる。

「ヤクモはユニークスキルを持っているが、それは紙を操るだけで、効果はたいしたものではなかった。それに比べて、アルベル、ダズル、カミラは複数の戦闘スキル持ちだ。将来性を考えても、追放するのなら、ヤクモだろう」

「あーっ、そっか。あなた、新人たちとパーティーを組んでなかったわね」

「何か問題があるのか?」

「私は一度、彼らとパーティーを組んで、モンスター退治の仕事をやったからわかるの。ヤクモが一番使えたなって」

エレナは尖った耳に触れながら、言葉を続ける。

「ヤクモは戦況を見て戦ってたからね。ピンチの仲間がいたら、しっかりサポートしてたし。紙を具現化する能力も役に立ってたと思うよ。基礎魔力を増やす訓練をすれば、もっと強くなるんじゃないかな」

「……ふっ、君は美しくて強い女性だが、人を見る目はないようだ」

キルサスが微笑した。

「仮にヤクモの基礎魔力が増えたとしても、奴は紙を具現化することしかできない。強力な攻撃魔法が使えるわけでもないし、防御魔法も使えないんだ」

キルサスは持っていた紙をひらひらと動かす。

「具現化できる紙の量が増えたとしても、それに何の意味がある? 紙は斬れるし、燃えるし、一瞬の時間稼ぎにしかならない」

「その一瞬が大事だと思うけど?」

エレナはキルサスが動かしている紙を人差し指で突く。

「戦闘中に一瞬でも敵の動きを止められれば有利に戦えるわ。特にヤクモの能力は珍しいから、相手の意表をつけるし」

「ふーん、君がそこまでヤクモを買っているとは思わなかったな」

「彼は真面目で努力を惜しまないタイプだったから、将来性にも期待できるかなって」

「そこが間違っているんだよ」

キルサスは右手の人差し指を立てて、それを左右に動かした。

「使えないスキルしか持っていないヤクモに将来性などない。最大限の努力をしても、Dランクまでだろう」

「アルベルたちとは違うってこと?」

「そうだな。アルベルたちなら、これからの訓練次第でBランク以上になれると僕は予想している。ならば、追放する者はヤクモで間違いない」

「間違いない……ねぇ」

エレナは、ふっと息を吐き出す。

「まあ、アルベルたちも、この前、Eランクの昇級試験に問題なく受かったみたいだし、あなたの判断が間違ってるというわけでもなさそうね。特にアルベルは、二番目にいい成績を出したみたいよ」

「ほぉ、二番目だったのか」

「ええ。冒険者ギルドの職員が教えてくれたわ」

「どうせなら、一番になってもらいたかったが、試験には運もあるだろうからな」

キルサスは口角を吊り上げた。

「まあ、彼らがBランク以上になった時、僕の判断が正しかったと、君も認めることになるだろうね」

「……そうね」

数秒間の沈黙の後、エレナはうなずいた。

――アルベルたちは弱いわけじゃない。キルサスの言う通り、Bランク以上になる可能性は十分にあるだろう。だけど……ヤクモがそれ以上に強くなる可能性もあるんじゃないかな?

「追放した役立たずの話はもういいだろう」

キルサスはエレナの白い腕に触れた。

「エレナ、今夜は僕と食事をしないか? 馴染みの店に、いい黄金牛の肉が入ったらしいんだ。シェフが言うには極上の味らしい。その味を美しい君といっしょに味わいたくなってね」

「……止めておくわ。人間のあなたと恋仲になっても、むなしいだけだし。どうせ、百年も経たずに死んじゃうから」

エレナは金色の髪をなびかせて、部屋から出ていった。

「……ふん。相変わらず、ガードが固いな」

キルサスはカチリを歯を鳴らした。

――まあいい。エレナも僕が英雄になれば、考えが変わるだろう。いや、その時は、あんなエルフより、もっといい女が寄ってくるか。

そう言うと、キルサスは笑みの形をした唇を舐めた。