作品タイトル不明
報酬
ゼルディアを倒してから十日後――。
僕はアルミーネに呼び出されて、彼女の家に向かった。
部屋にはピルンとキナコもいて、二人はイスに座って紅茶を飲んでいる。
「はい。ヤクモくん」
アルミーネがテーブルの上に湯気が立つ紅茶と革袋を置いた。
「今回の報酬だよ。受け取って」
「あ、ありがとう」
革袋を開くと、その中には黄金色に輝く大金貨が十枚以上入っていた。
「ええっ? こんなにいっぱい?」
思わず、大きな声が出た。
「うん。大金貨十二枚だよ」
「十二枚って……」
僕のノドが動いた。
大金貨十二枚って、何もしなくても四年は暮らしていける金額だ。
「……こんなにもらっていいの?」
「もちろんだよ。ヤクモくんはゼルディアに止めを刺したんだから」
アルミーネが笑いながら言った。
「もちろん、私たちもそれなりの報酬は受け取ってるよ。ゼルディア討伐のサポートをしたパーティーとしてね」
「ピルンも大金貨をもらったのだ」
ピルンがぐっと親指を立てた。
「これで、一角マグロのステーキが食べられるのだ。あれは最高に美味しい魚料理だからな」
「俺は無償でよかったんだが」
キナコが白い爪で頭をかく。
「まあ、酒でも飲むことにするか」
「キナコは毎日飲んでるでしょ」
アルミーネがキナコに突っ込みを入れる。
「ゼルディアを倒したからって、お酒ばっかり飲んでたらダメだよ。キナコはうちのパーティーの大事なメンバーなんだから」
「ふっ、大事なメンバーか」
キナコは目を細めて、僕たちを見回す。
「そうだな。お前たちのおかげで俺は宿願を果たすことができた。その礼のためにも、これからはパーティーの仕事に精を出すことにしよう」
「それは嬉しいな。これからは依頼が増えそうだし」
「そうなのか?」
「うん。うちのパーティーのヤクモくんがゼルディアを倒したからね。そのせいで、すごく注目されてるの」
アルミーネが僕の肩に触れる。
「昨日、冒険者ギルドに行ったら、いっぱい声をかけられたよ。ヤクモくんと話したいって」
「僕と?」
「多分、団へのスカウトだと思う。六魔星を倒した冒険者を団員にしたい団はいっぱいあるから」
「そう……なんだ」
「んっ? どうしたの? 変な顔して」
「いや。こんな風に自分が認められるなんて、思ってなくて」
僕は大金貨が入った革袋を見つめる。
「ユニークスキルの【魔力極大】が復活してくれたおかげかな」
「それだけじゃないぞ」
キナコが言った。
「たしかに【魔力極大】のおかげで、【紙使い】の能力が飛躍的に使えるようになったんだろう。それに加えて白兵戦の能力が上がってるからな。その二つを組み合わせた戦い方は敵にとっては脅威だ」
「そう……なのかな?」
「ああ。特に空中連続ジャンプの技は対応しにくい。突然、空中で停止して、別方向にジャンプしてくるんだからな。しかも、魔喰いの短剣の刃も変幻自在だ。これでは超一流の剣士でもお前に倒されるかもしれん」
キナコは僕の顔を見つめる。
「だから、アスロムはお前を勧誘したんだ」
「本当にすごいことだよね」
アルミーネが僕の顔を覗き込む。
「二人の十二英雄に認められたんだから、ヤクモくんは自信持っていいよ」
「もし、そうなら、アルミーネのおかげでもあるよ」
「私の?」
「だって、魔喰いの短剣はアルミーネが作った武器じゃないか」
「あっ、そういうことね」
アルミーネはピンク色の舌を出す。
「でも、魔喰いの短剣は大量の魔力がないと使えないから、失敗作なんだよね。刃に魔力を注ぎすぎると、すぐに魔力切れになっちゃうし。まあ、あれは【魔力極大】のユニークスキルを持ってるヤクモくん専用の武器だよ」
「僕専用か……」
僕は腰に提げている魔喰いの短剣に触れる。
僕がゼルディアに止めを刺すことができたのは、みんなのおかげだな。魔喰いの短剣は魔力の問題さえなければ、国宝級の武器だと思うし、キナコが毎日模擬戦につき合ってくれるから、白兵戦の能力も向上した。
でも、まだまだだ。ゼルディアとの戦いはぎりぎりだったし、アルミーネの目的でもある混沌の大迷宮には、災害級のモンスターが山のようにいる。
そんな強い敵が相手でも、確実に勝てるようにならないと。
僕はこぶしを強く握り締めた。