作品タイトル不明
ヤクモvsゼルディア
僕、キナコ、シルフィール、ピルンが四方からゼルディアに突っ込んだ。
ゼルディアはふわりと浮き上がり、上に逃げた。
そうはさせないっ!
透明な紙を魔法のポケットから具現化する。
宙に固定した透明な紙を足場にして、僕は連続でジャンプした。
見えない足場をジャンプする僕の動きを見て、ゼルディアの口が大きく開く。
「なっ……何だっ?」
ゼルディアは驚愕の表情を浮かべ、動きを止める。
チャンスだ!
僕は魔喰いの短剣を振り下ろす。ゼルディアの腕から青紫色の血が噴き出す。
「くあっ!」
ゼルディアは唇を歪めて赤い爪を突き出した。僕は別の足場にジャンプを繰り返し、魔喰いの短剣で攻撃を続ける。
ゼルディアの首、胸、太股から血が流れ出す。
一瞬、冒険者たちの姿が視界に入った。
多くの冒険者が目を丸くして僕を見ている。
やっぱり、空中での連続ジャンプは予想できない動きなんだろう。
「ぐうっ……」
ゼルディアは肩を上下に動かしながら、僕をにらみつけた。
「貴様……何者だ?」
「ただの新人の冒険者だよ」
「くっ……」
ゼルディアは僕に両手の指先を向ける。紫色の光線が発射された。
「『魔防壁強度九』!」
銀色に輝く紙が重なり合って壁を作った。その壁が光線の攻撃を止める。
「ならば……」
七本の触手が伸び、別方向から僕に襲い掛かる。
基礎魔力はまだ残ってるっ!
僕は魔喰いの短剣に大量の魔力を注ぎ込む。青白い刃が枝分かれしたかのように増え、その輝きが増した。
「はあああっ!」
気合の声をあげて、僕は魔喰いの短剣を振った。
三本の触手が同時に斬れる。
「まだだっ!」
別の触手が鞭のような動きで僕の右手に当たる。強い痛みを感じて、僕は魔喰いの短剣を落としてしまう。
「はははっ、これで終わらせてやる!」
ゼルディアが長い呪文を唱え始めた。
高位魔法を使うつもりか。なら、その前に勝負をつける!
僕は新しい魔式を脳内でイメージする。
「『戦神の大剣』!」
数千枚の黄金色の紙が組み合わさり、黄金色の大剣が具現化する。長さが三メートルを超える大剣は厚みがあり、その刃はぶれるように細かく振動していた。
僕は魔法文字が刻まれた柄を両手で掴む。
「ぐっ……」
ゼルディアは呪文を途中で止めて、半透明の魔法の壁を具現化する。
さすがに速いな。でも……。
僕は左斜め下に透明な紙の足場を出す。その足場を左足で強く踏み、戦神の大剣を振り下ろした。高速で振動する刃が半透明の壁を砕き、そのまま、ゼルディアの体を真っ二つにした。
「ばっ……ばか……なっ……」
ゼルディアは青紫色の血を噴き出しなら、草原に落下する。ぐしゃりと大きな音がした。
同時に戦神の大剣が消える。
なんとか倒せたか……。
戦神の大剣は紙で作られた剣なので、見た目に反して軽い。だから、パワーのない僕でも扱うことができる。そして、高速振動する特別な刃は魔法の壁も壊すことができる。欠点は紙を振動させるために多くの魔力が必要で、十秒程度しか、具現化できないことだ。でも、その一撃を防ぐことができる生物は、ほとんどいないだろう。
一瞬、僕は自分の腕を見つめる。
こんな細い腕でも、戦いの神バルドが使っていたような大剣を振ることができたな。
憧れの存在に少しだけ近づくことができたのかもしれない。
地面に下りると、僕は足元に落ちていた魔喰いの短剣を拾い上げる。
「ヤクモ!」
キナコが僕に駆け寄ってくる。
「よくぞゼルディアを倒してくれた。見事な攻撃だったぞ」
「まだ、骸骨のモンスターが残ってるよ。みんなを助けに行かないと!」
「あ、ああ。そうだな」
キナコが絶命したゼルディアをちらりと見る。
「……よし! 残りのモンスターを倒すぞ!」
僕たちは冒険者たちと戦っているモンスターに向かって走り出した。