軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヤクモ参戦

「シルフィールさん!」

僕はシルフィールに駆け寄った。

「ヤクモっ! あなたもエクニス高原に来てたの?」

シルフィールは濃い緑色の目を丸くする。

「はい。キナコたちもいます!」

そう答えながら、宙に浮いている生きている剣を見つめる。

通常の紙の一万倍の重さがある『重魔紙』が何枚も張りついているのに、まだ宙に浮かぶことができるか。

それなら――。

僕は生きている剣の周囲に新たな重魔紙を出現させる。その紙が次々と生きている剣に張りついた。

生きている剣の動きが鈍り、ゆっくりと下降していく。

「シルフィールさん!」

「わかってるからっ! 『風神斬空』!」

シルフィールは双頭光王を投げた。

双頭光王はくるくると高速で回転しながら、生きている剣に当たった。

生きている剣の刃が欠け、地面に落ちる。シルフィールは戻ってきた双頭光王を掴み、浮き上がろうとしている生きている剣に駆け寄った。

「遅いっ!」

シルフィールは双頭光王を強く突きだした。黄白色の刃の先端が生きている剣の眼球に突き刺さる。

眼球から青紫色の血が噴き出し、生きている剣の刃に無数のひびが入る。

「ヒィイイイイ!」

女の悲鳴のような声とともに生きている剣が粉々に砕けた。

「シルフィールさん。キナコがゼルディアと戦ってます!」

「わかった。私たちも行くわよ!」

僕はシルフィールといっしょに走り出す。

「ヤクモ。さっきの紙は何?」

「あれは重力系の魔法の効果がある重魔紙です。粘着性があって、普通の紙の一万倍の重さがあります」

「それで生きている剣の動きが鈍くなったわけね」

シルフィールが走りながら僕を見る。

「ほんと、あなたの能力はとんでもないわね。見た目は弱い新人冒険者だけど」

「それなら、シルフィールさんのほうが見た目とのギャップは大きいと思いますよ。見た目はきれいな女の子なのに、圧倒的な強さだから」

「き、きれい……」

月夜に照らされたシルフィールの顔の色が変化した。

足を止めて、僕の顔を凝視する。

「シルフィールさん?」

「……あっ、うっ!」

シルフィールはもごもごと口を動かしながら走り出した。

「……ヤクモっ! これからは私と喋る時は敬語でなくていいから。名前もさんづけにしなくていいわ」

「えっ? 呼び捨てですか?」

「そうよ。普通に話して」

「でも、シルフィールさんは十二英雄だし、話す時はさんづけにしたほうが……」

「シルフィールっ!」

シルフィールが僕をにらみつける。

「わ、わかったよ。シルフィール」

「そう。それでいいの」

シルフィールは満足げに小さな唇を笑みの形にした。

視線の先にキナコと戦っているゼルディアが見えた。

「ヤクモっ! 先に行くから」

シルフィールが一気にスピードを上げて、側面からゼルディアに突っ込んだ。

「むっ……お前っ!」

ゼルディアは驚いた顔でシルフィールの攻撃を避ける。

「生きている剣を壊したのか?」

「そういうこと」

シルフィールは双頭光王を連続で突く。

その動きに合わせて、キナコが前に出る。

二人の同時攻撃にゼルディアの唇が歪んだ。

「調子に乗るなっ!」

ゼルディアの背中から、八本の黒い触手が這い出てきた。

触手は黒く先端が鋭く尖っている。その触手が別の生物のようにキナコとシルフィールを襲う。

キナコは大きく上半身をそらしながら、伸びた爪で触手を斬ろうとした。しかし、触手の皮膚は金属のように硬く、爪で斬ることはできなかった。

ヘビのように動く触手の攻撃に、キナコとシルフィールはゼルディアから距離を取る。

「ならば……」

ゼルディアは素早く呪文を唱えた。

夜空に巨大な紫色の魔法陣が出現する。

「お前たち、全員まとめて燃やしてやろう」

その時、紫色の魔法陣の上にさらに巨大な魔法陣が現れた。青白く輝く魔法陣が紫色の魔法陣と重なり合い、同時に砕けた。

視線を動かすと、アルミーネが空に向かって、手をかざしているのが見えた。

アルミーネがゼルディアの魔法陣を消してくれたんだな。

「ゼルディアっ! 命をもらうのだーっ!」

狂戦士モードになったピルンがゼルディアに突っ込んだ。

ピルンは巨大化したマジカルハンマーを振る。ゼルディアは両手の甲の宝石でピルンの攻撃を受けながら、八本の触手でキナコとシルフィールの攻撃に対応する。

今がチャンスだ!

僕は背後からゼルディアに駆け寄り、魔喰いの短剣に魔力を注ぎ込む。青白い刃が一メートル以上伸びた。

一本の触手が僕の接近に気づいた。

獲物に飛び掛かるヘビのように細長い胴体を伸ばし、僕の顔面に迫る。僕は上半身をひねりながら、魔喰いの短剣を斜めに振り上げた。触手の頭部が斬れ、青紫色の血が噴き出す。

「むっ……」

ゼルディアが振り返り、赤い爪を振り下ろす。僕は強化した紙を具現化した。その紙が赤い爪の攻撃を防ぐ。

僕は魔喰いの短剣を真横に振る。ゼルディアは左足を引いて、その攻撃をかわそうとした。

その動きに合わせて、魔喰いの短剣に魔力を注ぐ。刃がさらに十センチ以上伸び、その先端がゼルディアの腹部を斬った。

「ぐっ……」

ゼルディアの表情が歪む。

「勝機っ!」

キナコが高くジャンプして、体をくるくると回転させる。

「『肉球回転掌』!」

キナコの肉球がゼルディアの角を折った。ぐらりとゼルディアの体が傾く。

そこにシルフィールが突っ込んだ。

「『神撃月虹』!」

双頭光王の刃が七色に輝き、ゼルディアの胸を貫いた。

「ぐあっ……」

ゼルディアは苦悶の表情を浮かべて、後ずさりする。

キナコとシルフィールが左右からゼルディアに駆け寄る。

「舐めるなっ!」

ゼルディアは七本の触手で二人を牽制しながら、呪文を唱える。胸に開いた穴が塞がり始める。

シルフィールの必殺技でも倒せないのか。ダグルードはあの技で倒せたのに。

でも、確実にダメージは与えている。完全に回復する前に倒す!