軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

バーベキュー

薄暗い周囲を、バーベキューの火の明かりと、魔法で発生させた光が照らす。

空にはもう月が昇り、偽物のはずなのに心を動かす程に綺麗な、満点の星空が広がっている。

「ぬぐぐ……ま、まさか、あそこから負けるとは……」

「フッ、あれだけ調子に乗っておったくせに、いいザマじゃなあ?」

ニヤニヤと笑みを浮かべながら、火の前で作業する俺の周りをうろちょろするレフィ。

「あぁ、美味しい美味しい。お主の作る料理はなかなかに美味いのう。おっと、そう言えばお主は、自身で作った料理を食べられないんじゃったなぁ!なんて可哀想な男なんじゃ。あぁ、こんなに美味い肉なのに……」

口でそう言いつつも、目と口端で笑いながら彼女は、最近ようやく器用に扱えるようになった箸で肉を挟み、それを俺の目の前に持って来てこれみよがしにを見せつけてくる。

「……んむっ」

「あーーっ!?お主食いおったな!?」

「んん、美味しい」

「こ、此奴!!吐き出せ!!今食ったもん吐き出せ!!その部位最後の一切れじゃったんじゃぞ!!」

ポカポカと俺の胸を叩いてくるレフィに、もぐもぐと口を動かしながらにやりと笑みを浮かべる。

「おぉ、悪い悪い、お前が顔の前に持ってくるもんだから、俺に『あーん』てしてくれてんのかと思ったわ」

「誰がそんなことするか!!この鬼畜!!邪悪!!魔王!!」

「フハハハハ!!そうだ、俺こそが邪悪なる魔王だ!!気付くのが遅かったな!!」

「そんなこと、とっくに知っておるわ!!」

あの後、俺は調子良く何匹か釣り上げて首位独占状態だったのだが、その時にレフィが「お主は釣りを何度もやったことがある。それに対して儂らは今回釣りというものを初めてやった。これは公平ではないんじゃないかの?」という抗議に、「フッ、ならば弱者は弱者で群れるがよい」と自信満々に俺が言い放ったために、途中から俺VSレフィ、リューチームという勝負に変わった。

まあ、それでも全然俺が勝っていたのだが……なんとレフィのヤツ、釣りを切り上げようとした土壇場で、本当にデカい当たりを引きやがったのである。

当然竿の引きもかなり強かったはずだが、見た目は華奢な少女でもその身に宿す力は覇龍そのものであるレフィが力負けするはずもなく、なんかシュッとした、魚のくせにイカした外見のデカいヤツを釣り上げることに成功。

本当ならこのまま優勝はレフィ、最下位はリューとなるはずだったのだが、ここに来て自分の言葉が俺の首を絞め、結局俺の一人負けとなってしまった。

敗者の仕事は、バーベキューで皆の肉を焼いて魚を捌くこと。俺自身が食べるのは皆が腹いっぱいになってからだ。

というかまあ、レフィやリューに料理なんか出来ないので、彼女らが負けた場合でも料理自体は俺とレイラの二人でやるつもりで、その場合二人にはただお預けだけさせるつもりだったのだが、俺が負けてしまったためにレイラも食べる側に回り、俺一人で料理をするハメになってしまったのだ。

もう魚も捌き終わったし、ほとんど焼くだけなので、そんなに負担ではないがな。

「もう、おねえちゃんもおにいちゃんもお互いにいじわるしないの!ほら、おにいちゃん、あーん」

「あーん……んん、美味いぞ。イルーナが食べさせてくれたから美味さ百倍アップだな」

「えへへ、じゃあもっといっぱい食べさせてあげる!」

嬉しそうに笑って、そう言うイルーナ。まさに天使である。

「全く……イルーナよ、あまり甘やかすでないぞ。此奴は敗者なのじゃからな」

「でも、おにいちゃんだけ仲間はずれでかわいそうだもん!おいしいものはみんなで一緒に食べなきゃ!ねー、シィ!」

「ネー!」

もぐもぐと美味しそうに食べながら、顔を見合わせる幼女二人。可愛い。

「見たか、レフィ。これが優しさというものだ。お前ももっと俺に優しさを見せてもいいんだぞ」

「…………仕方ないのう。じゃあ、ほれ」

そう言うとレフィは、箸で野菜を掴み、俺の顔の前に持ってくる。

「え、お、おう。何だ、わかったんならいいさ。それじゃあ、失礼して」

首を伸ばしてパクッと彼女の箸を口に含み、咀嚼する。

「ほれ、次じゃ」

「お、おう、ありがと」

「あとこれも食わせてやる」

「ん、サンキュ――ってこれ全部野菜じゃねえか!!」

思わずそうツッコむと、レフィはさも心外そうに肩を竦める。

「何じゃ、儂が手ずから食わせてやっておるのに、文句を言うとは狭量な奴め」

「おう、そう言うんだったらそっちの肉を食わせろ」

「あ、この肉美味そうじゃな。よし儂がいただこう」

わざわざ俺が示した肉と同じものを取り、自身の口に運ぶレフィ。

グッ、コイツ……。

「そのー、魔王様、よろしければ代わりますがー」

焼き魚を上品に食べながら、控えめにそう提案してくるレイラ。

ちなみに魚なのだが、レフィが釣った例の気持ち悪い生物は川に返した。流石に食いたくないし。

「駄目っすよ、レイラ。あれは敗者の仕事っすから」

「お前、結局ほとんど釣ってなかったくせによく言うな」

「フッ、ご主人、いいですか。それでも勝ちは勝ちっす」

ニヤリと笑みを浮かべるリューに、俺はうぬぬと唸る。

「……オイ、聞いてくれよリル。リューがよぉ、ひでぇこと言うんだ」

「うわっ、ちょっ、リル様に言うのは卑怯っすよ!!ほ、ほら、ご主人、ウチの肉あげるっすから!!」

「いや、結構だ。俺は敗者なんでな。敗者は敗者らしく自分の仕事をするさ」

「ご主人!?リ、リル様!!違うっすからね!!別にウチ、そういうイヤな女じゃないっすからね!!」

「……クゥ」

自分を巻き込まないでくれと言わんばかりに、困ったような鳴き声を上げるリル。

「ユキ、肉を焼く手が止まっておるぞ」

「はいはい、今焼きますよ。あとお前は俺に食わせるばかりじゃなくて自分も野菜を食え」

「ウッ…と、というか、以前から疑問に思っておったが、何故わざわざ草を食べねばならん。今までそんなもの食わなくても儂は生きて来れたぞ」

「草言うな。確かに野菜を食わなくても生きてはいけるが、こういうのはバランス良く食べないと身体に悪いんだ」

まあ、覇龍はその辺り違うのかもしれないが、しかし好き嫌いさせるのはよくないからな。コイツは甘やかすと調子に乗るし。

「……まあよい。ほれ、食いたがってたろ。肉じゃ」

「んあ?あぁ、ありがと。……俺に肉を食わせても野菜はちゃんと食えよ」

「……チッ」

お前の魂胆など見え見えだよ。