軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

釣り

「…………」

「…………」

「…………む!よし、掛かった!」

「何ッ」

こちらにガバッと顔を向けるレフィを横目に、クイッと反応のあった竿を俺は勢いよく引き上げた。

「おらよっと!……フフフ、これで二匹目だな。どうやらこの勝負は俺の勝ちかぁ?」

「ぬぐぐ……フン、早急な奴じゃ。まだまだ勝負はこれからに決まっておろう」

これみよがしに釣り上げた魚をレフィに見せびらかしながらドヤ顔を浮かべると、悔しそうにしながらそう吐き捨てるレフィ。

「第一、何じゃ、この釣りというのは。魚を食いたいなら、こんなことせずとも川を干からびさせればよかろう」

「フッ、風情がないなぁ、レフィは。こうしてのんびりボーっとしながら魚を釣るのが楽しいんだろ。あと干からびさせるのはやめろよ。マジで」

お前が言うと、本当に出来ちゃいそうで洒落にならないからな。

――俺達は今、草原エリアにある川辺で釣りをしていた。

近くでは、もうすでに釣りに飽きてしまったイルーナとシィがリルを引っ張り込んでキャッキャッと遊んでいる。

俺達の横には同じように釣りをしながらも、幼女達の方が気になるらしくチラチラとそちらに視線を送っているリューが座り、そして近くに敷いたレジャーシートの上ではレイラが俺達全員の様子をニコニコしながら眺めるも、急にハッと気が付いたかのような顔をすると同時に手元のノートっぽい紙の束に何かを書き始めている。

リューは恐らく、リルに気を取られているのだろうが……レイラのアレは、ちょっと前に彼女に魔法を教えてもらって以来、ずっとあんな感じである。家事をしていても心ここにあらず、といった様子で、よくブツブツと何かを呟いているのが窺える。

ぶっちゃけちょっと怖いのだが、まあそれでも仕事はしっかりやっているので、何も言えないでいる。

部屋にいる時も「フフ、フフフ……」と笑いながらカリカリカリカリずっとノートっぽい紙に何かを書き込んでいるようで、「最近、レイラがなんかちょっと怖いんす……」とリューに相談を受けたのだが……まあ、その内治まるだろう。

うん。そう信じるしかない。

……話を戻すが、今日は以前のピクニックのように、皆でレジャーの日である。釣りをすることになったのは、俺が少し前に、川に魚がいることを初めて知ったからだ。

そう、全然気付いていなかったのだが、草原エリアにDPを費やしてプラスしたこの川、中で普通に魚が泳いでいたのだ。

当然俺が放った訳ではなく、そのことに気付いた時は「えっ、何で……」と結構驚いたのだが、恐らくは魚が泳いでいることまでを含めて川、という扱いなのだろう、きっと。

それを考えると、あの背景として追加した山にも、もしかしたら何かの動物が住んでいるかもしれないな。

まあ、その辺りはどうでもいい。魚がいるのであれば、これはもう釣りをするしかないと皆を誘って、こうして外へ出て来た訳だ。

と言っても、実際に釣りをしているのは俺以外にレフィとリューだけなのだが。

「……あっ、ウチも来たっす!」

「ぬっ、リューもか!」

「むふふ、これはもう、最下位はレフィ様ですかねぇ」

「ぐ、此奴ら、調子に乗りおって……」

うぎぎ、と唸るレフィ。

俺達釣り三人組は今、晩飯のバーベキューの料理を掛けて勝負していた。勝負内容は晩飯になる予定の魚を誰が一番多く釣れるかどうか。

基本は数で勝負だが、しかし晩飯のメインディッシュを飾れるようなデカいヤツを釣ることが出来たら、それでも勝ちとなる。

――と、その時、シィ達と遊んでいたイルーナがトトト、とこちらに走り寄り、後ろからレフィに抱き付くようにして寄り掛かる。

「おねえちゃん!おっきいお魚釣れたー?」

「うぐっ、ま、まだじゃが、しかし待っておれ。必ず儂がでかい奴を釣り上げてやる」

「わかった!楽しみに待ってるね!がんばって、おねえちゃん!」

それだけを言い残してからイルーナは、再びシィ達のところへと戻って行った。

「……何じゃ、そんな戯けた顔しおって」

ニヤニヤしながらその様子を見ていた俺を、レフィがジロリと睨み付ける。

「いや、別に?なんか仲良さげだなー、と思っただけで」

そう言うと彼女は、ちょっと恥ずかしそうに頬を染めつつも、ぶすっとした表情を浮かべる。

「……フン、イルーナは儂にとっても妹分のようなものじゃ。邪険にする理由はあるまい」

「そうかそうか、妹分か」

「何じゃ、何か物言いたげな様子じゃな?」

「何でもないさ」

お前がイルーナのことをそう思ってるってことが、嬉しいだけだ。

「腹の立つ顔しおってからに。見ておれ、儂がお主の度肝を――おお!?来たか!?」

レフィがそう話している途中で突然、グイ、と彼女の持つ竿が大きくしなる。

「また地面でも釣り上げたか?」

「フッ、言っておれ!!今度こそ大物じゃ!!」

そう意気込み、レフィが勢いよく竿を引き上げると同時、水面から勢いよく跳ね上がったのは――何だあれ?木の幹みたいな胴体から、ウネウネと蠢く触手みたいなヒゲみたいなものが生え、そして口の中には小さい牙がぎっしりと並んだ、何だかよくわからないちょっと気持ち悪い生物だった。

「…………レフィさんよ、せめて魚か魚じゃないのか、わかるものを釣ってくれないか?」

「つ、釣れたのだからいいじゃろう!これで儂も一匹だな!」

「お前それ、ちゃんと晩飯で食べるんだな?」

「…………リルが食べるじゃろう」

ウチのペットにヘンな物食べさせようとしないでください。

「……ゴホン!とにかく、これでお主が二匹、リューと儂がそれぞれ一匹ずつじゃから、まだまだ勝負はこれからじゃな!リュー、気合入れて釣っていけ!此奴だけ晩飯を貧相なものにしてやろうぞ」

「えっ、あ、はいっす!最近なんかウチの扱いが雑なご主人に、目に物見せるっす!!」

「フッ、弱者どもが咆えよるわ。圧倒的強者というのがどういう者であるのか、お前らにたっぷり教えてやる」