軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

――昼に目一杯ふざけ、エネルギー切れで幼女達が寝静まった室内。

大人組も酒が入っているためにすでに深い眠りに就いており、まだ起きているのは俺とレフィのみ。

「ぐぬっ……お前もいい手を打つようになったじゃないか、レフィ」

「フッフッフ、儂かて成長するのじゃよ」

そして俺達は、ほぼ日課になっているボードゲームで勝負していた。

今日は将棋だ。

最近レフィも、それなりにボードゲーム類が強くなってきており、苦戦させられることが増えてきた。

まあ、毎日こうして対戦している訳だしな。

上手くならない方がおかしいというもんだ。

「……ふむ、認めよう。お前は確かに強くなった。強くなったが――まだ俺の方が強い!」

バシ、と駒を進めると、彼女は「うっ」と唸る。

「……な、ならばここじゃ」

「フハハハ、残念だったな。王手だ」

「ぐっ――負けじゃ、負け! いい線行っておったと思うたのに」

「フフフ、確かにお前の勝率は上がってきたが、まだまだそう簡単に負けはせんのだよ」

と言っても、今の勝負も大分ギリギリではあったのだが。

……ちょっと、レイラに相手してもらって、特訓するかな。

きっと、的確な助言をしてくれることだろう。

「……さ、儂らもそろそろ寝るか。あんまり起きるのが遅いと、童女爆弾の餌食になるからの」

「ハハハ、そうだな」

レフィの言った『童女爆弾』とは、俺達が寝坊した時に、レイラの指示によって起こしに飛んでくる幼女達のことだ。

朝になって回復し、有り余る元気で起こしに掛かってくるため、それはもう劇的に目を覚ますことが出来るのである。

俺達は笑いながら、将棋盤の片づけを始める。

手を動かし、おもちゃ類を全て突っ込んである棚にしまいながら、俺は隣の少女へと向かって口を開いた。

「――な、レフィ」

「うむ?」

「子供でも作るか」

その俺の言葉に、彼女はかぁっと顔を赤くさせ、少しはにかみながら、こちらを見上げる。

「……お主が望むなら……ま、いいぞ。お主の子なら、幾らでも産んでやる」

そんな剛毅なことを言ってくれるレフィが無性に愛おしくなり、俺は片手で彼女の頭を掻き抱く。

彼女もまた、抵抗することなく俺に身体を預け、片腕を胴へと回してくる。

柔らかい彼女の身体の感触。

もはや、嗅ぐと条件反射で安心してしまう、彼女の甘い香り。

「じゃが……どういう心境の変化じゃ? お主は今まで、その……あまり、そういう行為をしようとはせんかったが」

俺は、銀髪の少女と密着したまま、眠る幼女達の方を眺め、口を開く。

「――俺はさ、レフィ。自分が、本当にどうしようもない存在だと思ってるんだ」

「…………」

俺の言葉に、彼女は黙って耳を傾ける。

「自己中心的で、自分の好きなことにしか興味がなくて、多分ここにいるヤツらの中じゃ立派って言葉から最も程遠いのが俺だと、そう思ってるんだ。とても、人の親になれるような男じゃないってな」

「……儂から見れば、お主は立派にここの主としてやれていると思うが」

こちらを案じるかのように、キュッと片手の指を絡ませてくる彼女に、俺は大丈夫だと示すため、笑いかけながら言葉を続ける。

「お前と、ここのみんなとふざけて過ごす毎日は大好きだが、自分が子供を作って、何かを教えられるとはとても思えなかった。自身の子の人生、自身の子の『命』に責任を負って育てるなんて、とてもじゃないが出来そうもないって。……けど、最近少し、自信が付いてきてな」

「ふむ?」

「こっちが本気で当たれば、子供らもその本気をわかってくれるんだってことを、最近わかったんだ。こっちが愛情持って接すれば、ちゃんとそれに応えてくれるんだって。……なんか、愛だなんて言うと、ちょっと恥ずかしい感じだが」

「カカ……ま、言いたいことはわかるぞ」

小さく、微笑を浮かべるレフィ。

「それにさ。俺一人じゃダメ人間でも、俺は一人じゃない。俺がダメなところはお前が補えばいい。お前がダメなところは俺が補えばいい。んで、二人揃ってダメなところは、ネルやリュー、他のヤツらに補ってもらえばいい。そういうことが出来る家族がここにはいる」

「そうじゃな……お主には儂らがいるし、儂らにはお主がいる。それが、家族というものじゃ」

彼女の言葉に、俺はコクリと頷く。

「あぁ。そう考えたら、何だかそれなりにやれそうな気がしてきたんだ。だったら俺は、お前との子供が欲しい。お前と一緒に、この世界を生きたという証が欲しい。――お前は、どうだ?」

そう問い掛けると彼女は、俺の瞳をジッと見詰め、答える。

「……ユキ。儂はお主を、心の底から愛しておる。お主と共に生きるためならば、世界を敵に回し、 滅ぼしてもいい(・・・・・・・) 。そうである以上、お主からそう言われて、嫌な訳がない。お主と共に、この世に証を残せるなど……嬉し過ぎて、言葉もないわ」

銀髪の少女は、目尻に涙を浮かべながら、口元に微笑みを携える。

内心の感情が滲み出るような、とても、とても綺麗な微笑みだ。

「あー……なら、すまん、待たせちまったか?」

「カカ、ま、お主の心配もようわかるし、確かに子育てというものも、大変じゃろうからな。それでも……お主と、そしてここの 皆(みな) がおれば、これまでのように、これからもやって行けるじゃろう。お主と共にならば、どんなことがあっても乗り越えられるじゃろう。儂は、そう思っておる」

「あぁ……俺もだ」

コツンと、レフィと額を合わせる。

俺の頬をくすぐる、熱い吐息。

潤んだ瞳。

両手の指を絡ませ、しばし銀髪の少女と見詰め合う。

俺とレフィだけが、存在する世界。

俺は顔を近付け、彼女と唇を重ね――。