軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

235.二度と変えない

「どうしてそうなの?」

単刀直入に、二人に聞いた。

それぞれが黒と白の魔力を持っている。最初にそうかもしれないと推測した時の反応のように、それは通常あり得ない事で、驚くに値すること。

人間は通常黒の魔力しかもたない。

ちょっとでも白の魔力を持っていたらそれだけでもすごい話なのに、ナナは自分が白の魔力しか持っていないといった。

今の所それは彼女の証言だけで、何かではっきりと確かめた訳じゃないが、二人が超高速で魔法を使ったことに加えて、警戒心を解いたあとの告白ならば間違いはないだろうと思う。

だからそれが そう(、、) だという前提で、二人にその先をたずねてみた。

「あたし達にもわかんない、気づいたらっていうか、生まれた時からこうだったし。ね」

「そう……これが、私達の普通」

「そっか」

本人達にも分からないようだ。

そういうこともあるかもしれない、というかそういうことの方が多いかもしれない。

ナナとカナ。

こういうタイプの二人はこういう時うそはつかないだろう。

本当に分からないんだなと俺は受け入れた。

「不思議に思ったこともあるけどね」

「いまとなっては、どうでもいい」

「不思議に思ったことはあるんだ?」

「ちょっとだけね。たしか心の中で会話できるのがあたしたちの間だけって気づいた頃?」

「それくらいの時……」

カナが顔と目線を向けて、ナナが小さく頷いた。

「そうなんだ?」

「あたしたちが他と違うって気づいてさ、その流れでね。その時にちょっとだけ何でかって気になったけど、だからといって何か分かる訳でもなかったからそのうちもういいやって」

「じぃじも、喜ぶから」

「あー、魔法だとそうだね。あたしたちが魔法を上手く使うとすっごい喜んでくれるんだよね。細かい事とか一切聞かずにさ」

「いいおじい様だね」

ナナの「じぃじ」呼びがちょっとだけ気になったけど、話の腰を折ってしまうからスルーする事にした。

「あんたんとこも似たようなもんだって聞いたけど?」

「じぃじ、いつも張り合う」

「おじい様にはほどほどにしてほしいけどね」

「なんだ、あたしらと一緒じゃん」

「うん……一緒」

俺達三人は向かい合って、それぞれの笑い方で笑い合った。

期せずして、共感して気があった俺達三人。

心の距離が少しだけ縮まったような気がした。

そんな二人に対して、俺は少し考えて、まずは聞いてみた。

「ねえ、二人とももうその事は何も気にしてないの?」

「魔力のこと?」

「うん」

「うーん、本音を言えば気にならないってこともないけど……ねえ」

「知れるなら、知りたい」

「自分達のことだもんね」

「じゃあ……僕に協力させてくれないかな」

「あんたがぁ?」

「……?」

ナナとカナ、二人は俺の申し出に驚き、目をみはって見つめてきた。

その日の夜。

自分の屋敷に戻ってきた俺はノワールを呼び出した。

膝の上で相変わらずエクリプスがゴロゴロしているが、俺もノワールもそれはもはや慣れと諦めが相まって、いないものとして接する事にした。

「よびつけてごめんね、ノワール」

「いいえ、ご主人様の召喚とあらばいついかなる時だろうとはせ参じます」

「そっか、やっぱり執事ってすごいね」

いついかなる時は割と慣用句だけど、実際にこんな夜でも呼んだらすぐに来るのはスゴイと俺は思った。

――が、ノワールの次の言葉がそれを否定した。

「執事としてではなく、ご主人様には返しきれないほどのご恩がございますので」

「ご恩?」

「はい」

過去の一件、悪魔の一件かと俺はすぐに理解した。

「そんなに気にしなくてもいいのに」

「そうおっしゃっていただける方だからこそより報いるべきだと強く思います」

「そうなっちゃうんだ」

だったらこれ以上くり返し言うのは逆効果になるか。

と、俺はその話を終わらせた。

「ノワールに来てもらったのは、ちょっと相談にのってほしいことがあるからなんだ」

「何なりとお申し付け下さい」

「実はね――」

俺はナナとカナのことを話した。

爺さんに呼ばれて、ウォルフ侯爵の孫娘の二人と会ってきたこと。

その二人の高速詠唱にびっくりして、その後二人と仲良くなって、お互い白と黒の魔力を持つ特殊な双子だということ。

今日知ったことをノワールに話した。

「申し訳ございません。これも時間移動の爪痕ということになりますね」

「え? ……そっか、ノワールは『元の状態』を知ってる人なんだ」

「はい、ご主人様の人間関係は一通り知識として蓄えていました。ウォルフ侯爵のお孫さんはご主人様と直接関わり合いはありませんでしたので最低限の知識しかありませんでしたが、それでもお一人だったのは確実です」

「うん、そこは僕も驚いた」

「 大奥様(、、、) 同様、歴史改変の影響でしょう」

「だよね」

「片方が白の魔力のみなのは初めて聞きますが、白の魔力を持つ人間はいままでごく稀にはいました」

「そうなの!?」

ノワールの言葉に驚く。

「はい。亜人との混血で稀にそういうものが生まれます。代表的な所で言えばハーフエルフなどが」

「そうなんだ……」

驚き納得が一斉にきた。

確かに、黒の魔力しか持たないのは「人間」だけの話だ。

他の種族で白の魔力を持つものもいる。

だから人間とそういう種族の混血なら両方持つものが生まれることもある――は、理屈で言えば何もおかしい所はない。

「なぜ、それぞれが白と黒しか持たないのは不思議ですが」

「それがノワールに相談したいことなんだ」

「はい」

いよいよ本題――って事で。

ノワールはビシッと背筋を伸ばし、真剣な表情で俺の次の言葉を待ち構える。

「二人のことが知りたい、生まれに何かがあるかも知れない、ってのは僕も思ってたことなんだ」

ウォルフ侯爵が二人の過去をまったく二人に話さないのがちょっと引っかかる。

俺がそうだったから。

爺さんは俺の前で、俺が橋の下から拾ってきた子だと言わない。

そういう繊細なことをいわない。

翻ってみれば、まったく言わないのは何かがある――と思ってしまう。

「さすがご主人様です」

「だからこの場合、たぶん一番いいのは――」

一瞬だけ言葉が詰まった。

それを口にするのはちょっと抵抗があったが。

だからこその相談、ということで改めてそれを切り出す。

「――二人が生まれたときのことを見てくることなんだ」

「…………時間移動」

ノワールもハッとして、真顔になった。

「うん、そう。だけど」

「だけど?」

「絶対に歴史を変えないような時間移動じゃないとダメだと思うんだ」

「はい」

時間移動に関わったもの同士。

俺とノワールははっきりと、力強く頷き合った。