軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

236.ご主人様なら行ける

「ご主人様の懸念はただ一つ」

ノワールは真顔で言った。

「大旦那様がまたいなくなる事は避けたい、ということかと存じます」

「うん、それはそう。でも」

「はい」

「やっぱりできたらこれ以上歴史が変わるのは避けたいんだ。今はおじい様の側にメリンダがいるようになったという、幸せそうな変化で済んだけど、おじい様がいても実は悲しい記憶ができてしまった、なんてのは避けたいんだ」

「ごもっともでございます」

ノワールは俺の考え方に理解を示してくれた。

「であれば、過去には赴きますが、一切の関与をしないが望ましい形になるのではないかと」

「そうなるよね。僕の考えだけど、見るだけなら大丈夫だと思うんだ」

「……はい、わたくしもそう思います。それによって『今』このあとの歴史が変わるのかも知れませんが」

「あっ、そうなるんだ。……でもそれは」

「はい、人は絶えず変化していて、未来は常に不確定であると言えます」

「うん、そうだよね」

頷く俺、うんやっぱりそうだと改めて思う。

「過去を見るだけなら大丈夫そう」

「わたくしもそう思います」

俺がそう思い、ノワールが太鼓判を押してくれた。

同じく時間移動に関わったことのあるノワール。「完全なる悪魔」であるノワール。

そのノワールが言うのなら大丈夫だろうと自信がつく。

「見るだけ、何も手出し出来ない状況。……幽霊、魂の状態で行けばいいのかな」

「それはおすすめいたしかねます」

ノワールは即答で否定した。

ちょっと驚いて、聞き返した。

「どうして?」

「ご主人様の強大な力は魂であろうといささかも減衰するものではないと考えます。むしろ肉体の枷から解き放たれた魂のみの状態ではより大きく周囲に影響を及ぼすと考えられます」

「そうなの?」

「おそらくは。それほどにご主人様のお力は強大です」

「そっか……」

力が強すぎる、といわれると返す言葉がない。

実際俺は海神の力を使える、俺本来の力はともかく海神は文字通り神、その力は強大きわまりない。

その力が影響してしまうといわれたら、そりゃそうだとしか言えなくなってしまう。

「……うーん、エクリプスの力がもっと応用が利いたらいいんだけど」

「なのれす?」

俺の言葉に反応して、ずっとゴロゴロしているエクリプスが反応した。

これまでもエクリプスはずっと俺の膝の上でゴロゴロしていた。

俺とノワールがどんな話をしていようと、どういう反応をしようと。

まったくの我関せずという感じで、ひたすら俺に甘えるだけの、ゴロゴロだけをしていた。

究極のマイペース、空前絶後のマイペースと言っていい。

それでも、俺の口から直接自分の名前が出れば反応はしてしまう。

俺はそんなエクリプスを撫でてあげた。

球体の体の、その頭を優しくなでなでポンポンとした。

それでエクリプスはまたゴロゴロに戻った。

「と、言いますと?」

エクリプスの反応とは関係無しに、ノワールが不思議そうに首をかしげた。

「エクリプスの力は死者を操る力」

「おっしゃる通りです」

「それは死者のことを僕の思い通りに動かすだけの力。死者に例えば――生前の記憶を話して、ってさせようとしても無理なんだよね」

「過去に時間移動するのではなく、過去を実際に見てきたものから聞くという事でございますか」

「うん。記憶を話すだけなら歴史は変わらないでしょう?」

「おっしゃる通りでございます」

「でもエクリプスの力じゃそういうふうにはならないんだよね。できるなら、あのエクリプスならもっと大喜びでもっと早く僕に教えてくれてるはずだから。そうだよね」

「よくわからないれす、れもごしゅじんさまにはぜんぶおしえてるれす」

「だって」

「……さすがご主人様でございます」

「へ?」

いきなりなんだ? と、ノワールの脈絡のなさに俺は目を丸くした。

「解決の糸口が、いえ、解決そのものの方法が見つかりました」

「そうなの?」

「はい。しかも、あらたな何かを必要としません。今までのご主人様がなさっていたことだけで事足ります」

ノワールはきっぱりと言い切った。

そんな事があるのか? と、ピンと来ない俺はまだ半信半疑のままだった。

「本当できるの?」

「はい。ご主人様のお力ならたやすいことかと」

「それ教えて」

俺ならたやすい。

そうまで言い切ったノワール。

完全なる悪魔ノワール、俺に恩義を感じているノワール。

そのノワールが言うのならきっとそうなんだろう、と。

俺はそのやり方がものすごく気になった。