軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

234.二人の信頼

「海神様」

「うん? どうしたのフレン」

「私の役目は終わったかと思いますので、海に帰ってもよろしいでしょうか」

フレンはそういい、俺を見つめた。

静かな瞳だが、それはなんだか意味深にみえた。

何かを察しているがこれ以上は聞かない、と、そんな事を言っているような瞳だった。

思慮深い人魚の女王は、明らかに事情をもつ相手のそれにずかずかと入っていくような事はしないようだ。

「うん、ありがとうフレン。今度改めてちゃんとお礼をさせて」

「恐縮です」

「じゃあ――」

俺は手をかざし、指で体前方にぐるりと円を描くような軌道でなぞった。

水間ワープでつかった水が指先からまるでインクのように空中で円を描き、空間をねじ曲げるゲートをつくった。

水間ワープの変形、俺以外の人やものを飛ばす魔法だ。

「さすが海神様。では失礼致します」

フレンはそういい、ゲートをくくってその先にある海に帰った。

彼女を送り返したあと、改めてナナとカナの方をむいた。

「すごいね、本当に二人は心が通じ合ってるんだ」

フレンに来てもらったのはそれを検証して、はっきりさせるため。

それが間違いのない形ではっきりした事で、俺は普通に感心した。

俺は海神の力をつかって、使徒達と念じるだけで意思の疎通――心の中での会話ができる。

ナナとカナもそれが出来るが、それをやったときに「力」を使ったような感じはしない。

つまり二人は力を使わずにそれが出来る。

それに加えて、二人の見た目だ。

今でも黙っていればほとんど見分けがつかないレベルでそっくりな双子の姉妹。

母の腹の中にいた時からずっと一緒にいた双子の姉妹。

爺さんやイシュタルが集めてくれた本の中には、双子というのは魂をわけあって生まれてきた存在だとするものもある。

腹の中からずっと一緒、魂を分けあった存在。

そんな二人が心で会話ができる。

どんな強大な力ともまた違う美しい関係だなと思った。

「ねえ、あんたさ」

黒いレースドレスを着た、強気な感じのカナを 選んだ(、、、) 方の彼女が詰問するような眼差しとともに聞いてきた。

「なに?」

「なんでさっきの女の人になにも言わなかったの? あたしたちの事」

「二人が隠したがってるって感じたから、かな」

「心で会話ができるのはいいのに?」

「そっちは隠したがってるって感じなかったから。むしろ……なんだろう」

俺は少し考えた。

二人の それ(、、) に感じたものを言葉にしようとする。

少し考えて、一番近いと感じる言葉を口にした。

「自慢したいくらいに見えたんだ」

「へえ」

「……正解」

黒いドレスのカナが目を見開き、白いドレスのナナがぼそりとつぶやいた。

「やっぱりそうなんだ」

「そっ。あたし達ってね、5歳くらいの時まで喋ってなかったらしいんだ」

「喋ってなかった?」

「赤ん坊の時から、二人で通じ合ってた」

白いナナが静かに語る。

「言葉がなくても通じた。それと同じ他の人にも通じるって思ってた」

「それで他の人に何か伝える時も喋ってなかったみたい。それがあれ通じてないのもしかして、って気づいたのが5歳くらいの時」

「そうなんだ」

「その事はおじいちゃんもしってるし、屋敷の使用人も知ってるから」

「だから隠す事……じゃない」

強気な感じのカナはもとより、対照的に物静かな感じのナナまでもが、それを説明する時は今までにほとんど見られなかった、誇らしげな表情をしていた。

超高速詠唱の魔法を二人で協力して放ったときでさえも見られなかった、自分達の関係性を自慢するような仕草。

それをみて、俺は――

「とても素敵な関係だね」

と、思った感想をそのまま口にした。

それを聞いた二人はきょとん、と目を見開いて驚いた。

「……本気で言ってんの?」

「うん、そう思うよ」

「……ふーん」

「でもそっか。だから魔法を使うのが早いのかな。ずっと昔から一心同体だからで、それぞれが白と黒の魔力を持ってるのはドレスの色に引っ張られた僕の勘違いだったんだね」

俺はそう思った。

そもそもそれはただの推測だった。

はっきりと感じた訳じゃない。

俺が感じたのは、あるいは見えたのは「魔力の変換がない」ということだけ。

それを二人のドレスの色となぞらえて、それぞれが白と黒の魔力を持っているって思った。

それはどうも違うみたいだ。

一心同体レベルの双子なら、普通の人以上の効率で魔法を使えるの事もあるのかもしれない。

「そうおもうんだ」

「うん、そう思う」

「ふーん、そう思ってるって」

「……普通の判断」

ナナとカナは顔を見合わせた。

黒いカナはにやりと笑って、白いナナはフッと微笑んだ。

顔の作りでは見分けはつかないが、表情でようやく区別がつける様になったかもしれないとおもった。

「……」

「……」

二人はそのまま見つめ合った。

見つめ合って、黙り込んでしまった。

何を――と思った瞬間ハッとする。

二人は二人にしか分からない、心の中での会話をしているのだ。

俺は気づいた。

そうしている時の二人の顔はさっきまでとはまたちょっと違った。

なんて言うんだろ……お互いが穏やかなに、心底相手を信頼しているような、そんな顔をした。

やはり素敵な関係なだなと思っていた――その時。

「あんたにならいってもいいかな」

「うん、いい」

二人は何か結論を出したようで、頷き合って二人同時に俺の方を向いた。

「何を?」

「あたしは黒の魔力しかない」

黒のカナがそう言い。

「白、だけ」

白のナナが続けていった。

「……そうなんだ」

俺はかなり驚いた。

仮説が証明された以上に。

ナナとカナ、二人からの信用をもらえて、その事がちょっとうれしくなった。