軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

233.あたしはカナでいい

「もしかして迷惑だった?」

「それは……」

「迷惑っていうかさ……」

ナナとカナは更に困惑して、お互い顔を見合わせた。

そのまましばらく見つめ合った。

困惑の表情が少しだけ薄れて、真剣な表情でお互いを見つめる。

そのまま黙り込んでしまう。

どうしたんだろうか――と、思ったその瞬間。

脳裏に白い雷が突き抜けていったような、そんなひらめき。

一瞬のひらめきで、それが思わずくちをついてでた。

「もしかして、二人は言葉じゃなくても会話ができるの?」

「「――ッ!?」」

互いを見つめていた二人は同時に俺の方をパッと向いて、死ぬほどびっくりしたような顔をした。

「どうして……」

「なんで分かったの?」

「あ、やっぱりそうなんだ。あのね、僕も同じことができるんだ」

「同じこと……?」

「うん、特定の相手だけだけど、声と言葉にしなくても、心の中でやり取りができるんだ」

「「……」」

ナナカナはますますびっくりして、目が倍以上になったんじゃないかってくらい目をみひらいている。

「そういう心の中だけのやり取りを見てきててね、そういう時と同じ感じだったから、もしかしてって」

「……証拠は?」

「証拠……そう、証拠よ! 証拠はあるの!?」

片方がぼそりとつぶやき、もう片方はそれを受けて強い口調で俺を詰問する。

さっきまでとは少しイメージというか、空気が変わった。

まったく見分けがつかない双子だと思っていたのが、実はちょっと違うんじゃないか? ってこの時思った。

「ちょっと待ってて」

俺はそういい、二人をその場に待たせて、いつものように水筒から水を出した。

いきなり何を――言葉に出さなくてもそういう感じで不思議がっている二人を置いて、水間ワープで飛んだ。

飛んできた先は海底、女王の宮殿。

そこに人魚の女王――フレンがいた。

フレンは俺を見るなり水中なのにもかかわらず 腰を浮かせて(、、、、、、) 体を乗り出してきた。

「ようこそ海神様。何かご用でしょうか」

「うん、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど、人間の姿になって一緒に来てくれる?」

「喜んで!」

フレンは言葉通り、満面の笑みを浮かべた。

そして使徒の力で人魚の姿から人間の姿に変化する。

人間の姿に変化したフレンを連れて、もう一度水間ワープでナナカナの所に飛んだ。

「わっ! でた」

「戻ったのよ」

俺とフレンが戻ってきたのをみて、片方がちょっとオーバーな感じで驚き、もう片方が静かなまま突っ込みをいれる。

「待たせてごめんね。フレン」

「はい」

「この二人となんか内緒話をして、それを言葉に出さずに僕に伝えてくれる?」

「お任せ下さい」

フレンはそういい、ナナカナに近づいていく。

初めての相手でナナカナはちょっとだけ警戒した様子で表情が硬くなったが、一連のやり取りを全部聞いてるから、追加の説明無しにフレンを受け入れた。

俺から少し距離をとって、三人が顔をつきあわせてこそこそと内緒話をはじめた。

俺も数歩後ずさって距離をとって、押し殺した声で聞こえていないがより聞こえないように距離をとった。

神と使徒。

使徒が六人になって、海神の力をフルで使えるようになってからは、使徒とのやり取りがよりスムーズに出来る様になった。

どこにいてもどれだけ離れてても、使徒と俺は心で思うだけで会話ができる。

『海神様』

しばらくして、フレンは俺に背中を向けたまま、言われたとおりに心の中で話しかけてきた。

『うん、話は済んだの?』

『はい』

『じゃあ教えて』

『ぷいっとぅ、てへろのっぱー』

「え?」

びっくりして、思わず声にでた。

それでナナカナもびっくりして俺をみた。

『ぷいっとぅ、てへろのっぱー……だそうです』

『…………ああ』

なるほど、と思った。

ナナカナ――二人の女の子は賢いな、と思った。

意味のある言葉だったら千に一つ万に一つの確率で前もってなにか仕掛けることができるけど、意味のない適当な音をつなげただけのものだったらそうも行かない。

確実に俺とフレンのそれが確認できる為にやってることだ。

それに感心するとともに、ナナカナは普段から双子の間でそういう言葉にしないやり取りをずっとし続けてきたんだろうなと改めて確信した。

「ぷいっとぅ、てへろのっぱー。だよね」

「うっそー、本当にできてるの?」

「信じるしかない」

片方がいって、もう片方は渋々と頷いた。

「本当にあたしたちと同じなんだ」

「うん。僕も今びっくりしてる。それって双子だからなのかな」

「……そう」

「たぶんね。理屈とか分かんないけど、でもそういう風にはなしてるときそうなんだろうなって感じるの」

「だったらそうだよね。そういう双子ってたまにいるらしいから」

「そうなの!?」

「うん」

俺ははっきりと頷いた。

「おじい様が集めてくれたご本の中でそういうのを見た記憶があるよ。すごく希少だけど、でもあるみたい」

「そう……」

「へえ、そうなんだ」

ナナとカナ、二人はそれぞれ違う反応の仕方で納得した。

心の会話ができるという話をするようになってからそれがよりはっきりしてきた。

いまなら二人の見分けがつけられると思った。

「ねえ、どっちがナナで、どっちカナなのかな」

「……ナナよ」

「じゃああたしはカナ」

「……じゃあ?」

これで区別できるようになったとおもったけど、カナの方の言い回しに新たな疑問をもってしまった。