軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

232.提案

「え? 違うの? でも……」

爺さんだけじゃなくてウォルフ侯爵もびっくりしていた。

答えを知っているはずのウォルフ侯爵の反応に、俺は自分が間違っているのかとおもった。

が――改めて二人の少女をみた。

黒いドレスと白いドレスをそれぞれ纏った、双子の少女。

ナナとカナ、まだどっちがどっちなのか分からないが二人をみた。

やっぱり――間違ってない。

二人は変換のプロセスを経ていない。

「マテオや、わしらにもわかりやすく説明してくれんか?」

「うん、あのね――」

爺さんの要請で説明しようとしたその時。

ナナとカナがスッ――と近づいてきた。

まずは無言で俺に迫り、二人の爺さんと俺の間に割って入った。

そして鼻息が当るほどの距離に二人の顔が迫ってきた。

「二人っきりで話そう」

「どこか静かなところで」

「え? えっと……?」

「「話そう」」

「う、うん」

俺は思わずうなずいた、迫力に押された。

一方で、俺を押し切った二人は爺さん達の方に振り向き、侯爵にいった。

「おじいちゃん」

「この子とちょっと話してくる」

「そうかそうか、わしもついて行こうか?」

侯爵は今まで聞いた事の無いような、デレデレな、グズグズに煮詰めたジャムみたいに甘い口調で二人に聞き返した。

「いい」「邪魔」

が、ナナとカナの返事は実に素っ気ないものだった。

孫娘に提案を一蹴されたウォルフ侯爵。まるで「シュン……」という擬音が聞こえてくるくらいにしょげてしまった。

その様子は俺に――

『歴史改変で人格もかわちゃったのか?』

と思わせるほどのものだった。

そんな爺さんをすげなく斬り捨てた二人の少女は俺の手を引っ張って歩き出した。

「来て」

「こっちよ」

「マテオや、何かあったらすぐにわしを呼ぶんじゃぞい」

と、相手がか弱い少女だからか、爺さんの心配(?)もまったく危機感のないものだった。

二人に手を引かれて応接間を出た。

俺をひっぱって廊下をズンズンと進んで、そのまま階段の裏の暗がりに連れ込まれた。

そこで俺を壁に押しつけて、二人が俺を取り囲んだ。

「正直にいいなさい」

「なんでわかったの?」

「なんでって……えっと、変換してないこと?」

二人は何も言わなかった。

ただ真顔で、そして場合によってはただじゃ済まさないぞ、という眼差しで俺を見つめた。

何か事情があるのか?

そう思いながらも、俺はとりあえず二人の質問に答えることにした。

「あのね、半分みえて、半分推測なんだ」

「どういう事?」

「謎かけはやめて」

「魔法って、黒の魔力と白の魔力を混ぜて使うんだ」

「……」

「……」

二人は唇を尖らせて、なんだかちょっとだけ拗ねているようにみえた。

俺は更に話を続けた。

「人間は黒の魔力しか持ってない、だから魔法を使うとときは黒の魔力を白の魔力にかえてからじゃないと魔法が使えない――その、魔力をかえてるかどうかが僕には分かるんだ」

「あたし達が」

「それをやってないってこと?」

「……うん」

ここまで来たらごまかしが効かないだろう思った。

そもそも既に、階段裏に連れ込まれての内緒話だ。

だから俺はごまかさず、素直にそれを認めた。

ナナとカナは困り切った顔、あるいは苦虫をかんだような顔でお互いをみた。

そしてまた同じタイミングで俺の方を向く。

向いてきた顔はかなり真剣で、鬼気迫るほど真剣な顔だった。

「「その事――」」

「とおもったんだけど、僕の勘違いかも」

「「――っ!?」」

おそらくは釘を刺そうとしたんだろう。

そう思って口を開いた二人に先んじて、俺はすっとぼけた。

実は今の所、二人はそれを「認めていない」。

俺をここまで連れ込んで問い質しているけど直接認めてはいない。

でもいま、釘をさそうとしてた。

それは間接的に認めるようなことになってしまう。

理由は分からないけど、そこまで行くことを二人は望んでいない様な気がする。

だから俺はすっとぼけた。

二人はすごい事をやった、それをみた俺は思わず「すごい」という意味合いでそれを口にしてしまった。

だけどそれはどうやら二人にとって隠したいことみたいで、こうして俺に口止めをしようとしてる。

だから俺はすっとぼけた。

ナナとカナ――今でもどっちがどっちなのか分からないけど、別に二人を困らせるつもりはさらさらない。

俺さえとぼけてしまえば全てが丸く収まるはずだ。

だからそうした。

すると、二人は驚いた。

目を見開き、俺をじっと見つめた。

何となくだけど「こいつ何を企んでるんだ?」という風に思っている、そんな気がする。

当然だな。

人前であんなことを言っておいて今更何を……は当然といえば当然。

「信用してもらうしかないけど――そうだ」

俺はポン、と手を叩いた、思いついたことを二人に提案する。

「もしよかったら、僕に協力をさせて?」

「「協力?」」

「うん、二人は隠したがってるみたいだから、もっと隠せるように協力するよ」

「「……」」

俺の提案に、ナナとカナはぽかーん、となってしまうのだった。