軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

227.集合

あくる日の昼下がり。

燃える氷の一件がしばらくレイフの研究開発がメインになって、俺の手から離れた事で、前からしなきゃいけないと思っていた事に手をつけた。

屋敷のリビングの中、俺は人魚の女王――長年に渡って俺を「待ち続けて」くれた使徒フレンを「みんな」に引き合わせた。

ヘカテー、メーティス、エヴァは俺とフレンの向かいにいて、最近ますます自由になったエクリプスは俺の膝の上でゴロゴロしている。

そんな状態で、フレンをみんなに紹介した。

「人魚の女王様のフレンだよ」

「海神様よりフレンの名を頂戴しました。新参者ですが今後ともよしなに」

人魚ではなく、使徒の力で人の姿になったフレンがヘカテー、メーティス、エヴァに向かって軽く会釈をした。

長年女王で居続けてきたからか、立ち居振る舞いに威厳と気品があって、しかし威圧感はなかった。

「あたしはエヴァ、エヴァンジェリン。よろしくねフレンさん」

「神より賜った名はヘカテー」

「お、同じくメーティスです」

フレンと向き合う三人はそれぞれ「らしい」言葉で名乗った。

その一方でエクリプスはしゃべれるのにもかかわらず、俺の膝の上でゴロゴロするだけでまったく名乗る気配はない。

だから俺が紹介する事にした。

「この子はエクリプス」

「はい」

「イシュタルはちょっとおくれてるけど、あとでちゃんと紹介するね」

「わかりました」

一通り全員がなのって、顔合わせがすんだ所で座るようにうながした。

今日集まってもらったのは全員「尊き蒼き血の使徒」たちで、全員が俺を神だと崇めてる者達だ。

とくにヘカテー、メーティス、フレンあたりは言わないといつまでも平気で立ったままでいるのでしっかりと言葉にだして座らせた。

「ごめんねみんな、それぞれ忙しいのにわざわざ集まってもらって」

「神の召喚であればいついかなる時であろうとはせ参じるのが道理」

ヘカテーは真顔で、堅苦しい表情のままいいきった。

御年300歳を超える大聖女様は、使徒になったあとは一番幼い見た目をしているが、こういうときは一番肩肘張った振る舞いをする。

「うん、それでも来てくれてありがとう」

「ねえパパ、今日はどうしてこのメンツを集めたの?」

「フレンをちゃんとみんなに紹介しないとってずっと思ってたのと」

「のと?」

エヴァが可愛らしく、ちょこんと小首を傾げる。

この中でもっとも実年齢が若い――というか幼いせいか、ヘカテーとは対照的に天真爛漫に振る舞うことがほとんどだ。

そんなエヴァににこりと微笑みかける。

「使徒がね、6人になったから」

「……半分、ですよね」

今度はメーティスがおそるおそる、って感じで言った。

「うん、最初に『使徒』って言葉を知ったときに『12人』という言葉も同時にしったから、その半分ということで。何かあるってわけじゃないけど一応ね」

「ねえパパ、オフィーリアも使徒にしてあげられないかな」

エヴァが急にそんな事をいいだした。

オフィーリアというのは、少し前に生まれたばかりのブルーゴブリンの子だ。

エヴァ――エヴァンジェリンがレッドドラゴンの子という事もあってか、ブルーゴブリンのオフィーリアとは一瞬で意気投合して、いまではどこに行くのも一緒だと聞いている。

ドラゴンの姿に戻ったエヴァに、ゴブリンのオフィーリアがのってあっちこっち駆け回る様子はいうなれば竜騎士というかんじだが、どちらも本来の姿は幼い感じだから、その姿は格好いいや凜々しいよりもどちらかと言えば可愛らしい感じで、メイドの間ではめちゃくちゃ人気が爆発している。

そのオフィーリアを自分と同じようにしたい、というのがエヴァの「おねだり」だった。

俺は悩む表情で、しかし即答した。

「ちょっとそれはわからないんだ」

「わからない?」

「うん。フレンのいきさつを考えてるとね」

そうと前置きをしてから、過去にいってから、戻ってきてフレンが使徒になったいきさつを一通りはなした。

既にこのメンツには話していることだが、それでも改めてもう一度説明した。

「それを考えてると、残りの半分、残りの六人も実はもうどこかにいて、『その時』が来るのをまってるかもしれないっておもったんだ」

「そうなの?」

「フレンもそう思うよね」

「はい」

俺から水を向けられたフレンははっきりと頷いた。

「数百年前に、海神様からその時が来るまでは、例え本人になんと言われようと明かしてはいけないと厳しく言いつかっておりました。それと同じ形のものが他にいてもなにもおかしくはありません」

「神の言葉は絶対。当然ですね」

ヘカテーはフレンの言葉に同調した。

「そっか……」

「もちろん、オフィーリアも『その時』をまだ待っているだけかもしれないけどね。でも、たぶんだけど、ぼくも無理にはやらないでそれぞれの『その時』を待った方がいいと思うんだ」

「オフィーリアさんの事は少しだけうかがっています」

フレンがそう前置きして、エヴァにいった。

「ともに海神様に仕えたいと言うのであれば下級使徒にされてはいかがですか? わたくしもそうですし、ヘカテーさんも同じような事をしているとうかがっております」

「そっか……それもありかも」

納得するエヴァ。

一方で、俺はフレンの言葉にちょっとひっかかった。

「フレンも下級使徒を作ったの?」

「はい。娘のサラがそう望んでいましたので」

「あ、そうなんだ」

なるほどと思った。

フレンとサラが実の母娘ということもあって、なんとなくだけどすんなりと納得した。

「でもそれやっちゃうと本当はちゃんとパパの使徒だった――の邪魔にならないかな」

「それについては心配する必要はないと思います」

ヘカテーが落ち着いた様子のままいう。

「私は大聖女、フレンさんは人魚の女王、イシュタルさんは帝国の皇帝。それぞれ、神の元に 戻る(、、) 前の仮の姿がありました。そして戻ったときは必要に応じて神の元に侍るための正しい姿に変化します。下級使徒であっても本来の姿に戻るのになんら問題はないと思います」

「そっか……ありがとうヘカテーさん、あとでオフィーリアを話し合ってみるね」

エヴァはそういい、ヘカテーは穏やかに微笑みながら微かに頷いた。

使徒同士の連帯感、かつ年長者として相談にのってあげてるという感じがほほえましかった。

それを皮切りに、ヘカテー、メーティス、エヴァ、フレンの四人が雑談めいた話を始めた。

俺の膝でゴロゴロすることしか頭にないエクリプスを含めて、全員がイシュタルが来るまでの「暇つぶし」モードにはいった。

「……あ」

「どうしたのパパ」

「イシュタルが着いたみたい。馬車が街の入り口まで来てるって」

「じゃあもうすぐだね」

神と使徒のつながりで、使徒は真剣に祈れば俺にメッセージを届ける事ができる。

それを使ったイシュタルからもうすぐで到着するというメッセージと、遅れて申し訳ないという感情が一緒に届いた。

そのタイミングで全員が自然に口を閉ざした。

雑談タイムがおわって、イシュタルをまった――のだが、ここでもエクリプスは相変わらず俺の膝の上でゴロゴロしている。

それがちょっとおかしくて、クスッとしていると、リビングのドアが控えめにノックされた。

応じると、ドアが開いて、額に汗しているイシュタルの姿がみえた。

「ごめんなさい! 遅れてしまっ――」

そう言いながらリビングに入ってくるイシュタル。

その瞬間だった。

全員がある程度心の準備が出来ていたかもしれない、だから誰も驚かなかった。

リビングにいたはずが、イシュタルが入ってきた瞬間。

昼だったのが、一瞬で夜にかわってしまった!