軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

226.パラダイス・オブ・マテオ

「だ、大丈夫なのおじい様?」

めちゃくちゃ驚いて、慌てて、爺さんに聞き返した。

これまでも爺さんにいろんな事で、あの手この手で溺愛をされてきたけど、今回のは規模が圧倒的だった。

爺さんと、そしてメリンダもあっけらかんと言い放ってるけど、「全財産の3分の1」はどう考えてもヤバイ。

「なにがじゃ?」

爺さんはきょとんとした顔で聞き返してきた。

いや「なにがじゃ?」じゃないだろ。

「……ああ、そういうことか」

爺さんは俺の顔をしばし見つめたかと思えば、やっと理解してくれたような表情をした。

「マテオの想像通り、相手にバカだと言われたのじゃ」

「え? いやそういう――」

事じゃないと思ったが、爺さんは構わず続けた。

「確かにそれは正論じゃ、栄華を極めた鉱山の町、掘り尽くして更に調査までをおこなって、それでももう鉄は出ないと実質無人となった町。もはや所持しているだけで損であるまさに負動産。うむ正論じゃ」

爺さんはそういい、腕組みまでして「うんうん」とうなずいた。

その頷き方はしかしコミカルで、わざとらしく感じた。

その感じ方は正解だった。

「じゃが、それは所詮マテオを知らぬ、井の中の虫けらの正論じゃ」

「それは言いすぎだよねおじい様!?」

思わず声を上げてしまった――が。

「あなた、確かにその通りだけどその言葉はマテオの教育には悪いわ」

「いや、マテオはこの程度の悪い言葉に影響されるほどではないのじゃ。ちゃんと分けて考えられる聡明さをもっておる」

「それもそうですわね……あっ、でも」

「今度はなんじゃ」

「汚い言葉を使うおじい様を嫌いになってしまうかもしれませんわ」

「――っ!?」

爺さんはカット目を見開いた。

直後に「ガーン」と、世界の終わりが訪れたかのような衝撃を受けた。

「ま、マテオ、おじいちゃんを嫌わないでおくれ。いまのは冗談、冗談じゃ。そう、常識に凝り固まったただの一般人という意味じゃ」

「えっと……そういうことじゃなくて……」

というかそんな事はどうでも良くて。

別に爺さんが多少口が悪かったところで嫌いにはならないし真似もしない。

爺さんの口の汚さは正直どうでもいい。

問題なのは――。

「おじい様、財産の3分の1もつかっちゃって大丈夫なの?」

「うむ? ああ、それは何も問題はないのじゃ」

爺さんはそういい、にやりと笑った。

「わしの勘では一年もすれば投資分は回収、その後はひたすらもうけが出るはずじゃ」

「え? そうなの?」

「レイフから話はきいた」

爺さんはちゃんとした表情になった。

俺を溺愛するデレデレな孫バカ爺さんから、大公爵ロックウェルの顔つきにかわった。

「帝国の主要の町を結ぶ、牛馬いらずの 自動の車(、、、、) 。それの有用性と波及する諸効果を考えれば当然のこと」

「……」

「むしろ安すぎる買いもので本気で申し訳なく感じるほどじゃ」

「そうなんだ……」

そう話す爺さんの顔は「大公爵」の顔のままだ。

なんとなくだけど、本気で爺さんは安い買い物だとおもてて、本当に1年で回収出来ると信じているんだと感じた。

そして、それは。

「おじい様がそう言うのならそうだよね」

俺は心の底からそうおもった。

おれの前ではいつも孫バカジジイに変貌してしまう爺さんだがあれでめちゃくちゃ有能な貴族だ。

これが俺に何かを買うために財産の3分の1を使ったとかなら何を言われても受け入れられなかっただろうしいまからでも止めようとしただろうが、俺きっかけではあるが投資に使ったんならそこは爺さんの言葉を信じるべきだと思った。

「ふっふっふ……これでいよいよ小童と対等の勝負ができる様になるのじゃ」

「へ? 陛下の事?」

「うむ、いままではマテオに何かを買ってあげるときは資金面でいつもあの小童に遅れをとっていたのがじゃ、これで対等の勝負ができる収入が見込めるようになる」

「ええ!? そんな事を気にしてたの!?」

瞬間、大公爵からまた孫バカジジイの顔にもどった爺さんの言い草に俺は悲鳴のような声をあげてしまう。

「もちろんじゃ! わしはマテオの祖父、マテオを可愛がることにかけては人後に落ちるつもりはない」

「あらあら」

メリンダは楽しそうに微笑んだ。

「人後に落ちないって……相手は陛下だよ」

「所詮は 皇帝程度(、、、、) じゃ」

「えええ!?」

「精霊殿ならば素直に兜をぬぎもしようが、小童相手なら同じ人間同士、ならば他人のアヤツよりも祖父であるわしの方がマテオをよりかわいがれるのが道理だというもの」

「えー……」

いやその理屈はおかしい、とおもったが一瞬で思い直した。

いつもの爺さんだ。

おかしくて突っ込みが追いつかないような理屈だが、それはいつもの爺さんだ。

それを理解すると、一周回ってほっとした。

歴史が変わって爺さんがいなくなった事がまだ記憶に新しい分、「爺さんらしい」事に俺はめちゃくちゃホッとした。

「ふふふ、アヤツの悔しがる顔が目に浮かぶようじゃて」

「あはは……」

「そうですわ。あなた、陛下をもっと悔しがらせるいい方法を思いつきましたわ」

「ほう? なんじゃ」

「町の名前ですわ」

「町の名前?」

俺はきょとんとした、爺さんも同じだった。

しかし俺は理解できないままでいるのに対して、爺さんはすぐにハッとした。

「なるほど! その手があったか。わしとしたことがうっかりしてたのじゃ」

「どういう事なのおじい様」

「パラダイス・オブ・マテオ」

「へ?」

俺は思わず間抜けな声をだしてしまう。

たぶん顔も間抜けっぽくなってしまっているはずだ。

「マテオが新たな資源をみつけて再生した町はマテオの名前を冠して当然じゃ。ふふふ……あやつの悔しがる顔がますます目に浮かぶようじゃ」

「楽しみですわ」

爺さんとメリンダがめちゃくいちゃ意気投合していた。

「……」

その事はやめてほしいが、俺にもイシュタルの悔しがる顔が簡単に想像できてしまった。