軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

225.話は聞かせてもらった

「はい、とーちゃく!」

そう言ってオノドリムが俺達を連れてやってきたのは岩山の上空だった。飛んできた俺達は滞空したまま地上を見下ろす。

見下ろした俺は、第一印象こそ「岩山」だと思ったが、よく見るとちょっと違うと感じた。

「もしかして、ここに鉄かなにかの鉱脈があったの?」

振り向き、オノドリムに聞く。

「うん、50年くらい前かな、ここに人間の街があって、どっかんどっかん鉄を掘り出してたよ」

「パラダイス・オブ・アイアン。希少なものはなくて鉄だけだったけど、その鉄の量も質もよかったからかなり栄えたらしい。へえ……この下にあるんだ」

オノドリムとレイフが俺の質問に答えてくれた。

やっぱりか、と俺は小さく頷いた。

「よくわかったねマテオ」

「うん、寂れた街となんか坑道の入り口っぽいのがのこってるし、それに岩山というよりなんか……うん、はげ山って感じだったから」

「あー……めちゃくちゃもやしてたもんね。なんかすっごく不思議なやり方してた」

「えっと、もしかして伐採した木を炭にしてから、その炭で鉄鉱石を焼いてたとか?」

「うん! そうそうそれ! なんでそんな面倒臭い事をしてたのかなって」

「なんだ、精霊なのにそんな事もわからないのか」

レイフが呆れた顔をした。

それを聞いたオノドリムがちょっとむっとした。

ここで喧嘩を始められるとかなわないから、俺は爺さんとイシュタルが集めてくれた本から得た知識で説明することにした。

「あのね、鉄よりもいい『鋼』というのは、鉄にちょっとだけ炭がまざったものらしいんだ」

「へえ、そうなの?」

「そうみたい。それで炭で焼いてちょっと混ぜ込もうってのが理由の一つらしい。普通の木材でもやすと炭以外のものがまざっちゃって鋼にならないみたいなんだ」

「あれってそういうことだったんだ」

「そうみたい」

俺の説明を聞いたオノドリムが素直に感心しだして、レイフとのちょっとした諍いの種火はくすぶることなく消え去った。

「これは都合がいい」

そのレイフもオノドリムと諍いを起こすつもりはまったくなくて、突っかかってこないオノドリムの事を完全に無視した形で地上を見下ろして、そんな事をいいだした。

「炭鉱の町なら再利用も簡単だろう」

「試しにちょっと掘ってみる?」

「最終的に人間が掘るんだ。残ってる坑道で一番燃える氷に近づくポイントまでたのむよ」

「はーい」

オノドリムの案内で、俺達は地上に降りていく。

更にその案内で坑道にはいって、奥に進んでいく中、俺は「大々的に発掘するのならヘカテー達に一言断らないとな、とその辺のことを考えていた。

「話は聞かせてもらったのじゃ!」

「うわっ! おじい様? ――それにメリンダさん」

その日の夜、夕食後に一人で読書をしていたら、爺さんがよくある感じでいきなり現われた。

爺さんは「いつもの」だが、これまでとは違って爺さんの横に、歴史改変後に後妻になったメリンダの姿もあった。

「こんばんはマテオ」

「うん、こんばんは。それよりもおじい様――『話は聞かせてもらった』って、なんの事?」

「マテオが新しい鉱脈を発見したという話じゃ」

「ええ!?」

手に持っている本を置いて、驚きの声をあげた。

「今日の話なのにもう知ってるの?」

「無論じゃ、マテオの活躍はいち早く把握出来る態勢を構築しておる」

「えええ!?」

「マテオの事を自慢するためには必要だものね」

「えっと……そ、そうなんだ」

爺さんがそんな事を――「態勢の構築」をしていることはまったく知らなかった。

もしやそれも歴史改変、メリンダがいた影響か――?

と、思ったけど。

「無論じゃ! 可愛い孫の自慢は老人の一番の娯楽じゃ」

「あはは……」

爺さんの言い分は以前とまったく変わらなかった。

まったくもって爺さんらしくて、むしろらしさ大爆発でメリンダがいようがいまいがそうしてるんだろうなと思った。

「それよりもおじい様、それをしって……どうしたの?」

「うむ、あの街」

「街って……パラダイス・オブ・アイアンのこと?」

「そうじゃ、あの町をまわりの土地ごと買ったのじゃ」

「か、買ったの?」

「うむ! その一帯を統治する称号ごと買い上げたのじゃ」

「ど、どうして!?」

「無論、スムーズに採掘を進めるためじゃ。あの手の廃坑では、再発掘するには相当の邪魔が入ってしまうのが通り相場じゃ」

「あ、うん。レイフさんがそんな事を言ってたね」

「マテオの世紀の大発見に冷や水を浴びせかけられるなど言語道断。だからわしがかったのじゃ。わしが領主なら再発掘の邪魔は一切なしじゃ」

「……そ、そうなんだ。ねえおじい様、街ごと、ううん、まわりの土地ごと買うってことはすごく高かったよね」

「大したことはなかったのじゃ。廃坑じゃったしな」

「あ、そうなんだ」

俺はちょっとホッとした。

――が。

「全財産の3分の1程度で済みましたものね」

「うむ、安い買い物じゃ」

「えええええ!?」

爺さんとメリンダの口から飛び出したとんでもない言葉に、思わず悲鳴のような声をあげてしまう。

俺のために……全財産の3分の1を使ってしまったってこと!?