軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

224.海と大地

「どうした?」

「ちょっと待ってて」

俺はそういい、レイフが海中でもしばらくは問題なく過ごせるように海神の 力(加護) をかけ直してから、水間ワープで屋敷に飛んだ。

屋敷の庭にそれなりのほこらがあった。

屋敷の庭、ということで規模こそ小さめだが作りはちゃんとしているほこらだった。

神殿風な意匠で作られていて、近づくだけで何の能力もない一般人でも分かるくらいの神々しい波動を放っている。

実際、これを維持するためにメイドを割り当てているが、そのメイド達から

「心地いいから常に担当したい」

「神々しすぎて落ち着かないから担当はしんどい」

という、両極端な意見が出ている、が、どっちも根っこはすごい場所だからこそだ。

そのほこらは大地の精霊オノドリムを祀るほこらで、屋敷におけるオノドリムの「部屋」みたいな感じの場所だ。

俺が水間ワープで飛んでくると、すぐさまオノドリムが現われた。

「あれー、どうしたのマテオ」

「ちょっとオノドリムに相談があるんだ」

「えー、なになに。なんでもいってよ」

オノドリムは俺の「相談」という言葉に食いついた。

言葉にこそしていないがそれはまるで「なんでもするから」と言ってるようなものだった。

「まずは状況を説明するから、一緒にきてくれる?」

「もっちろん!」

「じゃあ――」

俺はオノドリムを連れて、水間ワープで元の場所に戻ってきた。

海底の、レイフを待たせているあの場所へ。

「海の底……あっ」

レイフを見つけたオノドリムがわずかに目を見開いた。

そして、その表情のまま俺をみる。

「なんかすごい事をしようとしてる?」

「どうしてそう思うの?」

「この子。この子は人間でいうと『猛毒』とか『劇薬』とかそういう類の子じゃん? その子と一緒に何かをやるのはすごい事じゃないと必要が無いから」

「言ってくれるね」

レイフはふっ、とシニカルに笑った。

口角をつり上げての笑みは、しかし悪感情はなさそうに見える。

オノドリムがいう『猛毒』とか『劇薬』とかという言葉をレイフは嫌がっていない、いやむしろ好ましく思っているようにもみえる。

なんだか不思議だなあ、と思いつつオノドリムに話を続ける。

「あのねオノドリム、ここの真下に燃える氷が大量に埋まってるんだ」

「燃える氷?」

そういえばまずはそこからか、と、俺は一連の事をオノドリムに説明した。

燃える氷を発見して、ルイザン教に提供したが、熱石からレイフとつながって、帝国が大規模運用したいとなったので発掘方法を調べてる。

一連の流れをかい積まんで説明した。

「へえ」

「でね、ここがその燃える氷が埋まっているところで、一番浅い所にあるんだけどね。それでもまだ人間には深いんだ」

「深いねー、これ」

「でもね、これ、実は海底でかなり埋まってて、埋蔵の部分がたぶんだけど陸地に伸びてる感じなんだ」

「へ? 陸地って一番近いのはこっちの事?」

「うん――ちょっとまってね」

俺は海神の力を使って、海底から燃える氷をこぶし大の分掘り出した。

掘り出したものをオノドリムに手渡す。

「これなんだけどね」

「あー、これかー」

「やっぱり知ってた?」

「うん、だって埋まってるものだもん」

「だよね」

俺はにこりとほほえんだ。

「名前は?」

「わかんない。いままで人間がこれを使ったことがないから名前なんてついてないよ。でも――燃える氷かー、うん、なるほどね」

オノドリムが受け取った燃える氷を眺めつつ、色々と納得してくれた。

「それでね、陸地側でこれがどう埋まってるのか――オノドリムならわかるよね」

「もっちろん♪」

オノドリムはウインクにピースもつけての、とても頼りになる返事をしてくれた。

「ということは、人間が一番掘りやすいポイントもわかるってことかい」

レイフが聞く。

ほとんど彼に説明をしないでオノドリムを連れてきたが、彼はすぐに全部飲み込んで、理解して必要な質問をした。

天才は伊達じゃないなと思った。

「炭鉱みたいに掘るってこと?」

「今ある技術だとそうなるね」

「氷だと掘り出したら溶けるけどそういうのは大丈夫?」

「貴族が使ってる氷室の事を考えれば、掘り出すのは地下、そこで密封すればいいだけの話だ」

「そっか。じゃあつれて行くね」

「うん、海上までは僕が」

そういって、水間ワープで三人を海上に連れて移動した。

そこからはオノドリムが飛んで先導して、俺がレイフを連れてあとについていく。

「……ふっ、中々だね、これは」

「なにが?」

急によく分からない事を言い出したレイフに俺は首をかしげて聞き返す。

「海の神と大地の精霊が協力して人間に恩恵をもたらしている、信心深いルイザン教の連中に言わせればそういう形になるだろうね」

「あー……うん、そうかも」

「人間の歴史で、これだけ超越者に甘やかされた事は未だかつてない。君は中々にすごい事を主導しているよ」

「えっと、うん」

そういうことになるのかな、と。

レイフに褒められているらしいが、ピンとこないままオノドリムについていった。