軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

223.海底の埋蔵量

謁見の間から退出した俺は、レイフとならんで廊下の来た道を引き返していった。

俺は普通に自分の両足で歩いているが、レイフは出会った時と同じように、ペットのようなトカゲの背中でウンコ座りをして、そのトカゲが代わりに歩いている。

乗り物だから楽できるのか――と一瞬は思ったがどうなんだろうとも思う。

確かに足では歩いていないが、ずっとウンコ座りは果たして楽なんだろうかと思ってしまう。

そんなレイフはいつもと変わらない表情のまま、俺に聞いてきた。

「大事な質問があるんだが」

「え? うん、なあに?」

「その燃える氷、海底の下にどれくらい埋まっているのかわかるのかい?」

「どれくらい?」

「そう。埋蔵量はその内把握するためにきっちりと調査はするけど、目安として把握しておきたくてね」

「えっと……うん、分かるよう」

「どれくらいなんだい」

「どれくらい……は、どういえばいいのかな。基準は何にしよう……」

レイフへの答えにちょっとだけ困ってしまった。

海神の力を完全に手中に収めた形になったいま、海底に燃える氷がどれくらい埋まっているのかははっきりと分かる。

きっと、オノドリムが俺に埋蔵金のありかとか、地中に埋まっているものの把握をしたときはこういう感覚だったんだろうな、といまなら分かる。

どれくらいあるのかが感覚で分かるが、それを何で例えて、どういう単位を使って言えばいいのかに困ってしまった。

「君の屋敷の、ランタンなどの灯りに使われる油の使用量は把握しているかい?」

「え? えっと……うん、大体は」

「それをベースに何日、いや、何年分ありそうだい」

「なるほど、ちょっとまってね」

俺は立ち止まって、人差し指をこめかみにあてて、頭の中で計算した。

海神の力で総量を感覚的に把握してはいるが、それをレイフが指定した基準に換算していくのは人としての「計算」の力だ。

そっちは転生して、爺さんにそれなりの教育をつけてもらったから貴族としては人並みくらいにはなったが、海「神」の力とちがって「人」並みだ。

人差し指をこめかみにあてて、うんうんうなりながら計算する。

レイフはトカゲを止まらせて、俺をじっと見つめて答えを待ってくれた。

しばらくして、計算がまとまった――が。

「えっと6万年分はある……と、思うけど」

「けど?」

「6万年って数字はおかしいよね、なんか計算間違えてるんだと思う」

俺はそういって、再計算しようとした。

「いいや、かまわないよ」

「え? どうして」

「貴族の屋敷一つ分で6万年、貴族の屋敷数を掛けて、更に人間全体では貴族9庶民1の公式に当てはめれば、まあざっくり200年強といったところだろう」

「200年……」

「全人類が使う分の200年分。資源の埋蔵量としては現実的な数字だよ」

「そうなんだ」

感心しつつ、納得した。

俺の6万年という答えからそういう数字を一瞬でだしたのはすごいと思った。

貴族9庶民1というはっきりとした数字は初めて聞くが、爺さんとイシュタルが集めてくれたご本の中で、貴族全体と庶民全体のお金の使い方みたいな事を書いた本があって、これに近い感覚の説明がされていたのを思い出す。

一つの貴族領の中で、貴族の一家が年間使う金が9で、領民全体の年間使う金が1……まあ、そんなもんだろうなとなんとなく納得した。

「埋蔵量は問題なしと、問題はそれをいま発掘できるかどうかだな」

「……できないで皇帝陛下にあんな事をいってたの?」

「あの手の為政者にはでっかく書いた餅をみせないと。いつまでも金を出し渋って何もすすまないのさ」

「そういうものなの?」

「いまの皇帝はマシだけど、他の連中はバカだね」

レイフは鼻で笑うようにいった。

単純にくさしているようにもみえるが、過去にいろいろあって大変だったのかもな、と何となく思った。

金を出し渋って、というのでなんとなくそう思った。

「ねえ、総量がわかるってことは、どこから掘れるのかもわかるって事だろ? もちろん一カ所にあつまってるって事はないと思うけど」

「あ、うん。わかるよ」

「じゃあ一番浅いところは?」

「それは――」

俺はレイフを連れて、海底にきた。

海神の力を加護にかえて、ただの人間であるレイフでも海底にいられるようにしてつれてきた。

そうして連れてきた海底で、真下の「地面」をみて、レイフに告げる。

「ここが一番浅いところだよ」

「ふむ――」

レイフはそういい、懐から何かを取り出した。

透明で細い筒状のもので、中に色つきの何かが入っている。

温度計のようなそれをレイフがじっと見つめる。

「90の……5、ってところかな。100メートルはないか」

「うん、ぴったり94メートルだね。すごいねその道具」

レイフが作ったのかな、とおもった。

「それもわかるのか」

「うん」

海神の力でわかる。

レイフは上――遠くにある海面を見あげながらいった。

「この深さではいまの技術は難しいな。そのための技術は……どれの開発を再開させようか」

レイフは考え込んだ。

それは俺も前に考えていた事で、海底にある燃える氷をどう取り出すのかの問題。

人間にはそれが難しいから、俺がちょびっと取り出した分をルイザン教に預けて神の奇跡にする事にした。

それがいろいろ巡りに巡って、レイフと組んで大規模採取の話になっている。

「やっぱりむずかしいよね」

「いまはね」

「いまは?」

「大体の新技術はできあがるまでは『いまは無理』でしかないのさ」

「……なるほど」

なんかすごいことというか、深いことを言っているような気がする。

レイフらしいって感じもする。

「いまは無理……いまでも地上だったらどうとでもなるのにね」

「ふっ、地上であろうと100年前は無理だったのさ」

「あはは、そういうことだよね。……あれ?」

「どうした?」

「地上……100年前……ああっ」

俺はある事をおもいだした。