軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

217.神の恵み

海の底に到着した、俺とフレンとサラ。

俺は両足で海底に降り立ち、フレンとサラは人魚の姿で海底から少し高い位置で 浮いて(、、、) いる。

俺達三人の目の前で、海底からボコボコと泡が発生し、海上へと浮いていく。

「これだね」

俺はそういい、指を突き出して、簡単な火炎魔法をつかった。

海神の力じゃなくても元から使えた炎の魔法は、泡に当ってボッ! と一瞬だけ大きな炎をだして、すぐに消えてしまった。

「本当に燃えた」

「まさかこの泡が……」

フレンとサラ母娘は目の前で起きた事に舌を巻いた。

「海の底から気泡が立ちこめるのは至る所にありますけど、まさかこのようなものがまざっていたなんて」

「みた感じはただの泡だもんね」

「それを発見されるなんて、さすが海神様です」

「あはは。あっ、ちょっとだけ掘り出すから、少し下がってて。燃えるものだし危ないかもしれないから」

「わかりました」

「うん」

母娘は素直にさがった。

俺から、気泡が立ちこめている海底から数メートル離れた。

俺は腰にある剣をぬきはなった。

力を込めて、刀身をオーバードライブする。

「あはは、そっか、海の中だと見えるよね」

思いがけない光景に、ちょっとだけおかしくなかった。

刀身をオーバードライブすると、金属の刃が「溶けて」みえなくなる。

無形の刃は鞭のようにしなり、その上本来の刃よりもするどくものを切り裂く。

見えなくなるからオーバードライブ中はどんな感じになるんだろうと、オーバードライブを覚えた直後はちょっと興味に思ったが、まさかの所でそれが判明した。

海の中――水の中で、溶けた刃の形がはっきりと見える。

柄の先に透明の刃があった、透明だが剣の形をたもっていた。

試しに振ってみると、形が変わって鞭のようにしなった。

「こんな風になってたんだ……」

なんとなく感覚として掴んではいて、これまたなんとなくで使っていたのが、初めて視覚的にそれがどうなっているのかをとらえられた。

しばらく試してから、そのまま鞭状の刀身をふるって、気泡が立ちこめている地面をきった。

気泡がでている場所を中心に、数十センチ四方の正方形にきった。

切って、刀身の先端を突き立てて、塊をえぐり出すように手首を返す。

数十センチ四方の塊がえぐられた。

それでもまた「土」だったから、同じ感じでどんどんしたへ向かって掘り下げている。

鞭のようにしなる、オーバードライブの無形剣でどんどんどんどん縦に掘り進めていく。

やがて――ボコッ! と。

かつてないほどの大きな気泡が飛び出した。

湯船の中に大きなタオルで空気を包んで解放した時の、その十倍近い大きさの気泡が飛び出してきた。

「ほりあてたの?」

サラが近づいてきた。

娘よりすこしフレンは離れたままひかえていたから、手招きをしてやった。

「うん、たぶん――」

鞭状の無形剣で穴の底を器用にえぐって、 ほじくり(、、、、) だす。

鞭に巻き上げられたものが俺の手の平でキャッチする。

触った瞬間に冷たさを感じる氷だった。

「うん、これだね」

みた感じただの氷。いや、溶けかかったアイスクリームのような、どろどろとした感じの氷。

感触はドロドロしているが、みた感じ「水の氷」とすごくよくにている。

ちょっと前までだったら「これはなんだろう」と首をかしげている所だろうが、海神の力を完全に手に入れたいまはわかる。

「これがガスの凍った状態だね」

「そうなの?」

「うん。これ結構おもしろいよ」

「どう面白いの?」

「さわってみて、冷たいでしょ」

「うん」

サラは指で俺がもっているシャーベット状の氷をつんつんした。

「つめたいね、普通に氷って感じ?」

「この状態で燃えるんだ」

俺はそういって、手のまわりに海水をどかした、空気が充満する空間をまずつくった。

その空間を作ってからガスの氷に火をつけた。

俺の手の平で、氷が青白い炎で燃えはじめた。

それをみたサラも、サラの一歩後ろでひかえるフレンも目を丸くした。

「すごい! 氷が燃えてる!」

「奇跡的な光景でございます」

「……そんなに不思議でもないよ」

「え? そうなの?」

「うん、多くのものがそうなんだけど、一番冷たいときが固まってて、ちょっと熱くなると液体にとけて、さらに熱くなると空気になってきえてしまうんだ」

「ええ!? うそぉ」

「ほんとうだよ。水もそうだし、油も魔法で冷やせば凍るし、鉄もドロドロになるまで熱して、さらに熱すると空気になってきえるんだよ」

「うそぉ!?」

「ご本で読んだんだけど、鉱山で働いて、病気で死んだ人の肺の中から塊の鉄が見つかるもあるんだ」

「そうなんだ……知らなかった。そういうのもしってるんだ、すごい」

「あはは」

ちょっと恥ずかしくなった。

鉱山のじん肺症の直接的な死因はそれじゃないって別の本で書いてあったけど、それをいうと話が盛大にずれるだろうからやめておいた。

「だから、すっごく燃えやすい油を凍らせればこれと似たようなことが出来るんだ。純度のたかいお酒でもできるかもしれないね。これもえきたいとしてはお酒とすごくにてるし」

そうこうしているうちに手の平の氷が燃え尽きたから、俺は空気のスペースを解除して、あたりが普通の海にもどった。

「でも、これすごく便利だけど、海底だと大量に取れないよね」

爺さんとイシュタルが大量に集めてくれた本で勉強したから、人間が社会を維持していく上での「生産」の形とやり方をかなりの数をおぼえた。

いま、人間がもっている技術じゃ海底にあるこういう資源を安定採取するのは不可能だ。

俺なら大量に持って行けるが、それは社会を賄える量にはならない。

面白いし実用性もあるけど、量産出来ないんじゃしょうがないな、とおもった。

「ご提案、よろしいでしょうか」

フレンが真顔でいった。

硬い言葉、硬い口調。

女王かつ使徒の彼女は娘とちがっていろいろと「硬かった」。

「うん、なあにフレン」

「ヘカテー殿、あるいはメーティス殿に少しばかり預けるというのはどうでしょうか」

「ヘカテーとメーティス? どうして?」

その二人の名前をあげたのは使徒同士だからかもしれない、までは何となく察しがつくけど、なんで使徒のうちでもその二人なのかピンとこなかった。

「燃える氷――ルイザン教のお二人なら神の奇跡として活用出来るかとおもいます」

「……おお」

フレンの発想と提案が面白くて、俺は思わず手を打った。