軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

216.燃える氷

二本足でたっている女王――フレン。

直後、更に変化が起きる。

もともと巨大な人魚だった彼女だったが、二本足になって、更に体が縮んでいく。

やがて、普通の人間、普通の女性と同じサイズにになった。

「人間になっちゃったの?」

「いいえ」

フレンはそういい、ゆっくり目をとじた。

今度はさっきとは真逆で、二本足が尾ひれに徐々に戻っていきながら、サイズもまた巨大化していく。

五秒とたたずに、また、巨大な人魚の女王の姿にもどった。

「今まで通りでございます。おそらくは」

「おそらくは?」

「海神様の側に侍るため、地上でも問題なく動ける体を授かったのだと思います」

「そうなんだ。それはよかった……のかな?」

最初は普通に良かったのだとおもったが、本人がどう思っているんだろうと思い直した。

が、それはどうやら杞憂だったようだ。

「これでより海神様のお役に立てるはずです、光栄の極みですわ」

言葉は大げさだが、どうやら本気でそう思っているようだ。

本人がそこまで思っているのなら問題ないなと思う事にした。

「すごい、いいなお母様」

「サラも腐らずに、より海神様への信仰を高めていればいつかはお恵みもありましょう」

「うん、がんばる」

「海神様はなにか、お体に不調などはございませんか?」

サラをなだめたあと、フレンが俺に聞いてきた。

「大丈夫、ちょっと感覚が広がって敏感になって違和感があるけど、不調っていうほどのものじゃないから」

「敏感……で、ございますか?」

「うん。ああオノドリムはこういう感覚の中で生きてるんだ、って。なんか、海のいろんな事を感じられるようになったんだ」

「海神様なら当然でありましょう」

「ねえ、何を感じてるの?」

サラが以前とまったく変わらない距離感で聞いてきた。

フレンがより俺をあがめる中でサラが変わらない……のは、正直有難かった。

フレンがそうなるのはもはややめさせられないだろうと思っていたから、変わらないサラの態度が有難かった。

俺はいくつか感じている中の一つを拾い上げた。

「あっちのがちょっと面白いね。いってみる?」

「うん!」

「お供いたします」

俺は頷き、まずは割った海を元に戻した。

空白地帯になった所をもどす、それで一気に海水が流れ込んだ形になったが、海神の力でそれを抑えて、波も渦も、そういった物はいっさい起きないようにした。

「さすがでございます」

フレンがすかさずよいしょしてきたので、それを苦笑いで応えつつ、二人をつれて泳ぎだした。

斜め上のコースをとって、目的地にむかって 泳いでいく。

数分間掛けて、海上に浮上した。

俺は海水の上にたって、人魚の親子は普通に浮かんだ。

俺はそのまま明後日の方を指した。

「ほら、あれ」

「あれ?」

「あれは……燃えてる?」

「うん」

頷く俺、不思議がるフレンとサラの親子。

三人の目が向く先の海上で、炎が立ちこめていた。

それはちょっとした組み木のたき火――キャンプファイヤー的な大きさの炎だった。

炎は青白く、見つけにくかったため二人は理解するのが遅かった。

「何もないのになんでもえてるの?」

「あるよ、ほらよくみて、炎の根元」

「根元……あ」

サラは何かに気づいて、いったん海の中にもぐって、すぐにまた顔をだした。

「なんか海底からぶくぶく空気みたいなのが浮かんできてるよ」

「うん、それが燃えてるんだ。この燃え方は……強い酒が燃えてるみたいな感じの炎だね」

「そういえば、たまに見かけることがあります」

サラとちがって、フレンは見つけるのが遅かったが、まったく何も知らないわけじゃなさそうだった。

「海底から燃える空気が浮かんできて、それが雷などで火がつくことで、海上で燃えているようにみえます」

「へえ、そんなのがあるんだ」

「ええ、あるのですよ」

「こういうのが起きてるって分かるようになったんだ」

「さすが海神様でございます」

「うん! すごいよ!」

自慢する訳じゃなくて、ただ単に「こんな風に感覚が広がったよ」と説明したかっただけなのだが、それで思いっきり褒められて恥ずかしくなった。

それをごまかすように別の話をする。

「にしてもこれ……氷なんだね」

「氷、でございます?」

「うん」

俺は真下をみた。

たっている海面からした、海水よりも更にした、海底を意識して視線をむけた。

「海底のちょっとしたに埋まってる氷みたいなのがあって、それがとけて漏れ出した空気がこれなんだ」

「そうでございましたか」

「……そっか、氷なんだ」

つぶやき、俺はそれに気づいた。

今までは空気だと思っていた。

陸の上でもそういうがある。

特に火山とか、温泉のある場所だと、地中から吹きだしたものが、火のつくガスだということがよくある。

そういうのは危険なだけだ。

燃えるということ、燃えやすいということは本来すごく利用価値があるが、見えない空気を集めて持ち運んで、管理することはできないから、利用価値はあっても利用する方法はほとんどない。

だけど、氷なら。

氷という形なら、それでもまだ扱いがむずかしいけど、ガスよりはいいぞ? と。

「試しにちょっとだけほりだそう」

俺はそういって、フレンとサラを連れて真下にむかってもぐっていった。