軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

212.神の記憶

夜、屋敷の中。

俺を含めた数人が円卓を囲っていた。

左手側にはヘカテーとメーティス。

右手側には人型のエヴァンジェリンとイシュタル。

さらには俺の膝の上でゴロゴロしている球状のエクリプス。

俺を合わせて六人、円卓を囲っていた。

「これで全員でしょうか、神」

集まるまで皆黙っていたが、「集まった」のを察してヘカテーが口火を切って俺に着てきた。

「うん、これで全員」

「我ら使徒を全員集めたのはなにか危急がおきているのでしょうか」

ヘカテーがそう言った、まわりの全員――エクリプスをのぞいた全員が同じように硬い表情になった。

尊き青き血の使徒。

神の力を分け与えて、事実上人間とは違う存在になった者達。

数百年間伝承にしか存在しなかったその存在がここ最近になって復活した。

第一使徒、ヘカテー。

第二使徒、エヴァンジェリン。

第三使徒、メーティス。

第四使徒、イシュタル。

第五使徒、エクリプス。

そう、この部屋に集まった者達は全員、俺が海神ボディで力を分け与えて「尊き青き血の使徒」にした者達だ。

ちなみに「尊き青き血」は比喩表現の類ではない。

ここにいる五人は全員、体に赤い血ではなく青い血が流れている。

「い、祈りではなく実際に招集したのは……すごく大変な事が?」

おそるおそると聞いてきたのはメーティスだった。

彼女は普段俺とあまり会うこと無く、自分のほとんどの時間を読書や信徒から知識を得るために使い、そして得た知識や情報を祈りを通じて俺に捧げて共有している。

祈り。

使徒達に共通している力の一つで、強く敬虔に祈る事で新たに得た知識や記憶を「神」である俺に共有する事ができる。

それは上手く使いこなせば離れていても意思の疎通ができる力だ。

普段からそれを使っているが、そうではなく全員集めて実際に対面したことを、五人の内一番多く「祈り」を捧げているメーティスが違和感を覚えたというわけだ。

「えっとね、大変かもしれないし、そうじゃないかも知れない」

「どういう事でしょうか、神」

「実はね、イシュタルと過去に行ってきたんだ」

俺はそういい、イシュタルをみた。

その場にいる全員――エクリプスをのぞいて一斉にイシュタルに視線を集中した。

イシュタルは驚いた。

その話なのか、と前もって言っていなかったからそれで驚いたようだ。

が、すぐに落ち着きを取り戻して小さく頷いた。

「パパ、それってどういうこと?」

ことの重大さをさっしてか、全員が一斉に口重くなったところに、エヴァがまっすぐ聞いてきた。

俺は事のいきさつを説明した。

ブランが過去からやってきた。

彼女の依頼でノワールに引き合わせて、ノワール共々過去に送り返した。

その瞬間に世界が一変した。

世界が変わったのが過去で歴史が変わったからだろうと推測した。

変わらない俺とオノドリムとイシュタルの三人で過去にもどった。

過去でノワールを説得して、世界が変わる行動をやめてもらった。

そうして戻ってきて、世界は元に戻った。

――が。

「何もかも戻ったと思ったんだけど、ちょっとだけやっぱり変わってたんだ」

「ちょっとだけってなに?」

「おじい様の奥さんのこと」

「メリンダさん?」

「うん、メリンダさんって、僕たちが過去に行くまではいなかった人なんだ。でも戻ってきたらずっと前におじい様と再婚したって言ってる」

「そうなの!?」

「僕とイシュタルの認識だとそう――」

視線を向けて、イシュタルが頷いた。

その頷きをもらって、今度はヘカテーの方を向く。

「おじい様の配偶者を把握できているのはこの中だとヘカテーだけど……ヘカテーはどういう認識なの?」

「神のおっしゃることに反論するなど本来合ってはならないことですがーー」

「ということは昔からメリンダさんがいたって事だね」

「はい……」

イシュタルは重々しく頷いた。

彼女自身が口にした通り、「神」だとあがめる俺の認識を否定することはものすごいストレスのようだ。

「ありがとうヘカテー」

「いえ……その、神は我々を集めて……?」

「うん、僕と一番深く繋がっている使徒のみんなとで、どれくらい認識のズレがあって、どれくらい歴史が変わったのかを確認したいんだ」

「それで全員集めたんだねぱぱ」

「うん」

「で、ですが神」

メーティスがおずおずと切り出した。

「認識の差異をどうやって……神にとって取るに足らない人生ですが、それでも一朝一夕ですべて語るのは不可能……」

「うん、それも考えた。でも、一ついい方法を思いついたんだ」

「方法……?」

「ちょっと待ってね。エクリプス、ちょっと膝から降りてくれる?」

「ろうしてれすかごしゅじんさま」

「お願い、すぐに分かるから」

「……わかったれす」

これまで黙っていて、完全に部外者な空気を出していたエクリプス。

見た目からして最も「人外」であるエクリプスは少し渋ったが、俺に頼まれた通りに膝から円卓の上に飛び移った。

円卓の上でぐるりと、ボール状の体を回転させて、他の四人と同じように俺の方をむいた。

五人の使徒の視線を一身に浴びて、同じように見つめ返して、宣言する。

「それじゃ、やるよ」

五人は一斉に頷いた。

俺は両手を突き出して、横に広げた。

無私に持つものを分け与える――というイメージで両手をひろげて、力を行使する。

「「「「「!!」」」」」

瞬間、全員が一斉に震わせた。

ヘカテーもエヴァもメーティスもイシュタルも、そしてエクリプスも。

全員がビクッと体を震わせた。

「こ、これはっ」

「届いたかな、ヘカテー」

「これは……神の記憶?」

「うん、僕の記憶。僕がみんなに出会ってからの記憶と、僕が持っている知識。それをみんなに共有した」

「このようなことが……」

「いつもの祈りの逆バージョンだよ」

「おお……さすが神。このような使い方ができるなんて……」

ヘカテー――いや、ヘカテーだけじゃなく、全員が等しく感動して、そういう目で俺を見つめてきた。