軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

196.見かけによらない

俺達四人は傭兵団の人さらいをおびき寄せるため、旅人を装って街道を歩いていた。

俺とイシュタル、そして二人のオノドリム。

中身はともかく、見た目だけなら子供が一人うら若き乙女が三人という、旅人にしてはちょっと無防備な組み合わせだ。

それが逆によかった。

老婆から聞いた話が子供一人と少女三人なら遭遇すれば間違いなく襲われるだろう。

「この格好で大丈夫なのだろうか」

ふと、イシュタルがそんな事をいいだした。

歩きながらそう話すイシュタルは自分の格好をみてなんだか不安げにしている。

「どういうこと?」

「さらわれるのは若い女なのだから、もっとちゃんと女っぽい格好をしなければ。精霊様達は人間に見えないようにしてるから」

「……」

俺は立ち止まって、イシュタルを見つめた。

イシュタルも少し遅れて立ち止まって、俺に振り向いてくれた。

「マテオ?」

「イシュタルは綺麗だよ」

「……え!?」

イシュタルはきょとん、と驚いた。

誰が見ても驚愕してるって感じの顔でめちゃくちゃ驚いている。

「わ、私が?」

「うん」

「そんなこと……」

「僕は初めて会ったときからそう思ってたよ」

「……あ」

俺に言われて、数秒遅れて その時(、、、) の事を思いだした様子のイシュタル。

「あの時も男の人の姿だったのに、僕は『なんて美人さんなんだろ』、っておもったもの」

「そ、そうなの……」

「うん。どんな格好をしててもイシュタルはすごく綺麗だよ」

「……」

イシュタルは顔が真っ赤になった。

なんだかむやみやたらにほめちぎってる見たいな感じになったが、シンプルに本音だ。

マテオに転生してから数年、村人としての前世をあわせて数十年。

その数十年の人生経験の中でもイシュタルはダントツの美女だ。

今も時間移動で男の体は元の場所に置いてきたとばかりに本来の姿、女の姿にもどったが、服装は男の時のままで男装状態だ。

だからイシュタルは「エサ」になりきるためにもっと女らしい格好をっていってるが、正直今のままでも充分だと思う。

「ねえ、そんな事よりもさ」

「うん?」

今まで比較的傍観者として、積極的に話しかけてくる事のなかった過去のオノドリムが急に口を開いた。

みると、何か言いたげな顔で俺を見ている。

「どうしたのオノドリム?」

「もし――」

「マテオ!」

口を開きかけたオノドリムだったが、彼女が本題を切り出す前にイシュタルが切羽詰まった声で更に割り込んできた。

「どうしたのイシュタル」

「あれを」

イシュタルが俺の背後をゆびさした。

さされたのは俺達が来た方角、振り向くと街道の先、地平線に近い所から砂埃が巻き上げられているのがみえた。

「あれは……馬、かな」

「ええ、人を乗せた馬ね」

「結構いるよね。何人くらい何だろ」

「「馬は112頭」」

二人のオノドリムが声を揃えていった。

「わかるの?」

「大地の上をはしってるからね」

「蹄の数でね。何人乗ってるのかまではわからないけど」

「そっか……すごいねやっぱり」

感心しつつ、砂埃の方をまじまじと見つめた。

100――112頭の馬は街道の上じゃなくて、すこし外れた所を走っていた。

地平線の向こうにいる位のとおさだと近づいてくるように見えるが、ある程度までくると街道から大きく外れて、俺達の真横をすり抜けていく形になった。

立ち止まってそのまま見守った。

112頭の馬はいったん通り過ぎてから、大きく旋回してこっちに向かってきた。

あたりかな? とおもいつつ、俺はイシュタルの前にでた。

彼女を背中に隠すように、かばうようにして立った。

「マテオ……」

「大丈夫、任せて」

イシュタルをなだめていると、馬の一団が俺達の前にやってきた。

一斉に手綱を引いて、馬がいなないてとまった。

間近で見た一団はとてもまともな生業をしているような格好ではなかった。

何かの本で読んだ事がある。

人間は40を過ぎたら見た目が全てだ、と。

それまでの人生が格好に、何より表情に習慣として定着するからだと。

その言葉が本当なら、目の前の人間達は弁解の余地がないくらいのならず者ばかりだった。

そう、俺が密かに見た目で品定めをしていると、先頭の男達もまた俺達をじろじろと品定めしたあと。

「女とガキか」

「どうするよ」

「つれてけ。生け贄の質も量も足りねえってヤツの嫁がぼやいてたみてえだからこれくらいのだとまたやる気だしてくれるだろ」

「おうよ。この女はいい女なのか?」

「そこそこだな」

「ふーん」

男たちはそういいあって、手綱を引いてこっちに向かってきた。

馬上から――ということで視線の高低差があって、そこから生まれる威圧感で、背後のイシュタルがビクッとしたのがわかった。

俺はより彼女をかばうように体を入れ替えつつ、男達にきいた。

「おじさんたちは領主の部下の人?」

「あん? だったらなんだよ」

「部下のひとなんだね」

念押しの確認をする。

男達は顔を見合わせて、大半が腹を抱えて笑い出した。

「おいおい、女の前でかっこつけか? 小僧」

「このあたりでまだそんな命知らずがいたとはな」

と、俺の意図を勝手に勘違いした。

その反応でまちがいないだろうと判断した。

俺は腰にあった剣をぬいた。

ほとんど使っていないが、いつも持ち歩いている剣。

その剣を抜き放ち――力を込める。

オーバードライブ。

刀身が高出力の魔力に 溶けて(、、、) 、無形の刃に変わっていった。

「あー、だからなんだ」

「え? なに」

「さっきききそびれたんだけどね、襲われた時大丈夫なのかって。こういう子だから大丈夫だったんだね。だからあんたも余裕そうにしてたんだ」

「うん! マテオはすっごいんだから」

傭兵達には見えない大地の精霊の二人が世間話をするかのようのんきさで話す中、傭兵の一人が剣を抜き放ち、馬上から斬撃を放ってきた。

剣を振るって、無形の刃で傭兵の剣を一刀両断、返す刀で剣を握っていた利き手の手首をきった。

「……なに」

「わるいけど、この数だから一気にやらせてもらうよ」

そういって、無形の刃をふるった。

まだ向こうが油断していて、状況を理解していないのをいい事に、鞭のようにしなる無形の刃で全員の手首を切った。

一拍遅れて、怒号が渦巻くようにわきあがった。