軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

197.正体

一番近くにいる何人かが怒号をあげて、馬を駆って更に襲いかかってきた。

目がこれでもかって位血走ってて、まるで鬼のような形相だ。

「マテオ、手加減はしない方が!」

「うん、わかった」

イシュタルが叫んで、俺は腹をくくった。

向かってくる者達を無形の刃で迎撃する、全員斬り伏せた。

馬には罪はないから攻撃は避けたのだが、斬り倒した男の断末魔に刺激されたのか、何頭かの馬が棒立ちになって、乗っている男を振り下ろした。

そのまま更に、残っている傭兵に向かっていこうとするが。

「それまでだ!」

背後から野太い声が俺にストップをかけてきた。

振り向くと、いつの間に回り込んだのか、手首を切られただけの軽傷の男がイシュタルを羽交い締めにして、首筋に刃を当てていた。

イシュタルは冷静に振る舞っているが、さすがに首筋に刃を当てられているだけあって顔が強ばっている。

「この女がどうなってもいいのか?」

「どうなってもいいなんてことはない」

「わかってるのなら武器を捨てて――」

「けど、そういうことをしてくるかもって予測はしてた」

「投降――」

男の言葉が最後まで紡がれることはなかった。

俺が手をかざすと、イシュタル足元、地面から水の槍が複数飛び出して、男をしたから串刺しにした。

何が起こったのか理解できない表情のまま男は崩れ落ちた。

「イシュタル」

「う、うん」

「何があっても絶対にまもるから、安心してそのまま動かないで」

「……わかった、動かない」

イシュタルは頬を染めつつ、ホッとした表情を浮かべた。

俺は改めて男達に振り向いた。

男達は混乱していたが、それ以上にのっている馬たちが更に混乱を極めた。

前足を振り上げ棒立ちになって乗っているものを振り落とすのもあったが、大半はいななきながら制御を失って、暴れ回ってこの場から逃げ出そうとしていた。

止めなきゃ――と思った次の瞬間。

「な、なんだこれは!?」

「地面から……土の壁!?」

男達が驚愕した。

なんと、男達をぐるりと取り囲むように、地面から土の壁がせり上がってきた。

まるで城壁のような高さの土の壁が俺達諸ども男達を取り囲んで、馬ではとても逃げ出せないようになった。

一瞬何が起きたのか俺も分からなかったが、すぐにハッとしてオノドリム達の方をむいた。

すると、オノドリムが俺にウィンクをしてきた。

「逃がさないように囲んどく」

「すごいな。ありがとうオノドリム」

「えへへ……」

オノドリムは嬉しそうに微笑んだ。

大地の精霊の無駄使いとも言うべき土の壁。

が、効果はてきめんで、傭兵達の混乱が頂点を極めた。

そんな中、傭兵の一人が俺をにらんできた。

「小僧、お前何者だ」

「僕が何者なのかはどうでもいいよ。それよりも、君たちが領主の悪行に手を貸してる人達だよね」

「俺達を討伐しに来たってわけか」

男はそういって、鼻をならして冷笑した。

状況を考えたら不自然な位の冷笑だ。

「そろそろ正義を気取る何者かが出張ってくるころと思ってたけど、それがこんな小僧だとはな」

「予想していたみたいな口ぶりだね」

「身の程をわきまえないヤツは長生きできねえぜ」

「……」

「マテオ、気をつけろ」

イシュタルが俺に近づき、声をころして話しかけてきた。

俺は首だけ振り向き、肩越しにイシュタルをみた。

イシュタルはさっき人質になりかけた時とはまた違う種類の強ばった表情をしている。

「この状況なのに不自然に冷静になりすぎている」

「うん……僕もそう思う」

イシュタルと俺は同じことを思っていた。

戦闘では俺が圧倒していて、更にオノドリムの力で取り囲んでいる。

戦闘ではオーバードライブによる無形の刃だし、オノドリムは姿を見せずに土の壁でとりかこんだ。

向こうにしてみれば、見えない分からないの連続で、普通なら未知の連続に対してパニックになっていてもおかしくない状況。

なのに、必要以上に落ち着いている。

それは不自然で、俺とイシュタルは強く違和感を抱き、警戒せざるを得ないと思った。

「おい、お前ら」

男がぐるり、と傭兵仲間に向かって呼びかけた。

「遊びは終わりだ」

男がそういうと、状況がさらに一変した。

それまで馬が暴れ回って、負傷者が絶叫する阿鼻叫喚の地獄絵図だっ。

それが一瞬でとまり、男達の悲鳴がビタッととまった。

馬たちは相変わらず暴れ回っていたが、男達が気絶させたり殺したりと、暴れ馬たちは瞬く間に沈黙した。

そして、男達は一斉にこっちをむいた。

「マテオ!」

一度は斬り倒した男までもがむくっと立ち上がって、それをみたイシュタルが思わず声を上げた。

全員が無表情でこっちを向く、それがどういう事なのかと困惑した、次の瞬間。

男達の姿が変わっていった。

それまで野放図な格好で、典型的なならず者だった男達の姿が一変。

目の色が変わり、表情がより禍々しくなった。

フォルムはまだ人の形をしているが、見た目は明らかに人手はなくなっている。

「……悪魔」

それはノワールにブランと同じような悪魔の姿だった。

「まさか全員がそうだったなんて」

傭兵は悪魔が化けていたら話が早いとちらっと思っていたが、まさか全員がそうだったのはちょっとだけ驚いた。