作品タイトル不明
193.全然違う
「じゃあねえ……その場所をもっと詳しく教えて」
オノドリムが過去のオノドリムにいった。
「教える?」
「そっ、もっと詳しく」
「……ううん、あたしもいくわ」
過去のオノドリムは少し考えて、その間一度俺達三人をぐるっと見回してからそういった。
俺は驚き、聞き返した。
「一緒に来てくれるの?」
「うん」
「いいの? その……危ないかもしれないよ」
「そりゃそうだろうね」
過去のオノドリムはけろっとした感じで言い放った。
「あたしが人間と一緒に時間移動してまで過去に戻ってきた位だから、たぶんとんでもない事が起きてるのは普通にわかるよ」
「それでも一緒に来てくれるの?」
「だからこそじゃん。あたしが一緒に来たくらいの事が起きてる。自分自身を見捨てられるわけがないじゃん」
「そっか……」
一理ある、と思った。
俺も、もし自分がまったく同じ状況に置かれたとしたら、未来からやってきた自分のことを放っておけるはずがない。
オノドリムが協力を申し出たのは考えて見れば当たり前のことだった。
「ありがとう、オノドリム」
「んーん、自分のためだからいーよ」
「そういうことならあたしとあんた、どっちかがちょっと見た目、服か髪型かえよっか」
いきなりオノドリムがそんな事を言い出した。
過去のオノドリムが不思議そうに首をかしげた。
「見た目を変える? なんで?」
「そうしないとマテオが困っちゃうじゃん? 同じ見た目だから、なんか会ったときはもちろん、普段から区別つかないんじゃこまっちゃうじゃん」
「あー、たしかにそうかも」
過去のオノドリムが納得した。
このあたりは双子あるあるって感じの話なんだろう。
オノドリム達はそれに加えて、双子ってレベルじゃなくて、そもそもが まったくの本人(、、、、、、、) 、同一人物だ。
ちょっとは見た目を変えた方がいいのは至極当然の提案といえる。
だが。
「別に大丈夫だよ」
俺はいった。
「大丈夫って、何が?」
「オノドリムのことは見たらわかるから、わざわざ変える必要はないよ」
「わかるの?」
「うん」
「……わかるの?」
オノドリムは俺をじっと見つめて、同じ質問を繰り返した。
「うん」
俺もまた、頷いて同じ返事を繰り返した。
すると過去のオノドリムがいたずらっぽい表情になった。
「じゃあ、これで見分けてみてよ」
過去のオノドリムはそういい、ちょんちょん、って感じで地面をさした。
オノドリムは一瞬きょとんとしたがすぐにハッとして頷いた。
直後、二人のオノドリムが同時に地面にもぐった。
まるで二人が立っているところだけ沼だったかのように、同じような感じで地面に「沈んで」いった。
「何をするつもりなんだろう」
「さあ……」
俺はイシュタルと首を傾げ合った。
次の瞬間、俺達の真っ正面にオノドリム達が戻ってきた。
まったく同じ格好をした、同じ顔をした二人のオノドリム。
二人は俺に向かって。
「「どっちがどっち?」」
と声を揃えて聞いてきた。
「そういうこと……」
イシュタルはつぶやくようにいい、俺も理解した。
俺が見分けがつくと言ったもんだから二人はそれを試してきたのだ。
まったく同じ格好だから同時に身を隠してから再登場すればわかりにくくなる。
これまた双子と特性とまったく同じ話だった――が。
俺は左の方のオノドリムを差した。
「こっちでしょ、一緒に来たオノドリムは」
「!!」
「正解じゃん……本当にわかるの?」
「うん」
「じゃあもう一回」
そういって二人はまた地中にもぐった。
もう一回、と過去のオノドリムは言うが、俺が正解を続けたもんだから結果的にそれは三回繰り返された。
三回やって、三回とも俺は即答でピタッと言い当てたもんだから、過去のオノドリムもいい加減信じるしかない、って感じになった。
「なんで分かるの?」
「わかるよ、全然違うもの」
「全然違う?」
「うん」
「――嬉しい!」
オノドリムはそういい、がばっ、と俺に抱きついた。
俺の頭を胸に押しつけるような感じで抱きつき、ものすごく嬉しそうに身悶えた。
オノドリムはうれしがって、過去のオノドリムは感心していた。
が、大した事じゃなかった。
なぜならすごくわかりやすいからだ。
確かに二人の見た目はまったく一緒だ。
しかし、二人の表情がまるで違っていた。
なんていうんだろう――親しみの度合い?
俺との付き合いからくる親しみの度合い。
その親しみの度合いが顔にでていて、見たらすぐに分かる感じだ。
「その子すごいね」
「だってマテオだもん!」
「それもそうだけど、さっきからあんたやけに好き好きーってなってるけど、何かあったの?」
「マテオに命を助けられたんだもん」
「命を? あんたが?」
信じられない、って顔をする過去のオノドリム。
言葉でこそ「あんたが?」だったが、それは実質「あたしが?」っていってるのも同然だ。
大地の精霊であるあたしが人間に命を助けられた?
それが聞こえてきそうな感じの反応だった。
その後オノドリムを挟んで帝国の一件を話したら、過去のオノドリムは感心して、納得してくれたのだった。