軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

194.永遠の若さ

「これは……」

オノドリム達の誘導にしたがって、空を飛んでやってきたそこには目を疑う光景が広がっていた。

かつてはおそらく、農村であっただろう場所。

それがほとんど焼け落ちていて、破損した農具や家財道具が至る所に散乱している。

残骸をみるに元はそれなりの規模で、農具の数と種類などからそれなりに豊かだった方の農村だっただろうと推測出来るが、今やただの廃村――廃墟となっていた。

「略奪……かな?」

地上に降り立った俺達は廃墟の中を歩き回る。

ぼつりとつぶやくイシュタル、その口調には嫌悪感や不快感といったものが微かに見て取れる。

「そうみたい。もう……人は誰もすんでないのかな」

「いないね」

「うん、いない」

オノドリム達が俺のつぶやきに答える。

二人してはっきりと言い切る口調だったのが引っかかった。

「人が住んでるかどうかわかるの?」

「直接にはわかんないよ。でも、人間がいたら出すもの出すじゃん?」

「それでわかるんだけど、それがもう大分ない感じだね」

「そっか……」

なるほどと納得した。

人間そのものがいるかどうかじゃなくて、排泄物を出してるかどうかで判断してるって訳か。

日常生活ででる大も小も、土地にかえって栄養になるのは村人の時から分かっていることだから、オノドリム達がそれで判別しているのは納得だし、こういう時じゃなかったら面白くてその事を掘り下げているところだろう。

「一体何があったのか」

「誰かに話を聞いてみたいね。ねえオノドリム、この村じゃなくても、近くに住んでる人っていそう?」

「うーんとね」

「あっちの山に一人? いる感じ」

「あっ、いるね。この感じだと子供か老人かな?」

オノドリム達は一斉に同じ方を向いた。

「じゃあそこへ行ってみよう」

俺がいうと、オノドリム達もイシュタルも頷いた。

そしてまた、二人の案内で空を飛んでいく。

数分間とんで、小さな山の所にやってきた。

飛んできたから麓にある山道の入り口からじゃなくて、直接空から目当ての場所、山の中に降り立った。

降り立ったそこは、見るからに「隠れ家」って感じの家で、山道からも少し離れた所にひっそりと佇んでいる家だった。

「ここにすんでるのかな」

「昨日まではいたはず」

「そうなんだ、じゃあ――」

「お前達、何者なんだい」

背後から声が聞こえてきた。

俺もイシュタルも、そしてオノドリム達も一斉に振り向いた。

振り向いた先に老婆がいた。

見た目は……どうなんだろう、60歳くらいだが、実年齢は見た目よりちょっと若いかもしれない、というイメージのする老婆だった。

「みた感じ姉と弟か、それとも恋人か?」

「えっと……」

「二人っきりでこんな山にはいって心中でもしようってのかい?」

「え?」

俺は驚いた、イシュタルをみるとイシュタルも驚いていた。

驚いていないのは二人のオノドリムで、二人はニコニコしていた。

心中という言葉よりも、二人っきりというのがひっかかった。

「精霊は普通の人に見えなくする事ができるから」

「そうそう。話が面倒ややっこしくなるかもだから見えないようにしたの」

オノドリム達がいった。

なるほどと俺もイシュタルも納得した。

確かに最近は当たり前のように接しているが、大地の精霊なんて、村人時代からすれば姿がみえなくて当たり前の存在だ。

そして話がややこしくなるかもしれないというのもよく分かる。

俺は微かに頷き、老婆に向きなおって再び話しかけた。

「ごめんなさい、心中じゃないんです」

「だったらなんだい」

「えっと――

「私達は旅のものです」

俺がどうしようかと思っていると、イシュタルが代わりに口を開いた。

「遠くから旅をしてきたのですが、戦に焼かれたような村で途方に暮れていたところ何者たちかに襲われて、それでひとまず山の中に逃げ込んだのです。山の中ならおってはこない、捕まらないだろう、って」

俺の代わりに、イシュタルは淀みのない口調で作り話をすらすらと話した。

それで通用するのか? とちょっとだけ不安になったが。

「ふーん、大変な時期にきてしまったもんだね」

老婆は納得した。

どうやらイシュタルの作り話が通じたみたいでちょっとホッとした。

「不躾なのですが、この土地になにがあったのですか? 私達が襲われた村がなぜああなったのご存じですか?」

イシュタルが聞くと、老婆はため息をついた。

「領主の奥様のせいさね」

「領主の奥様?」

「そう、ちょっと前からあっちこっちの村で人さらいが行われてね。女達が無理矢理連れて行かれたのさ」

「女達が?」

「そう。領主の奥様が永遠の若さを保つ方法を教わったらしくてね、それで女達をさらっているのさ」

「……もしかして」

俺は言いかけ、首を振った。

イシュタルと目があって、イシュタルは怒りと呆れが半々に入り交じった目をしていた。

本で読んだ事がある、皇帝という最高権力者であるイシュタルも聞いた事あるのだろう。

昔の話で、間違った方法だけど。

若い女の生き血をつかって永遠の若さを保つ方法というものがある。

たぶんそれなんだろうな、と、村の廃墟から俺とイシュタルはそう推測した。