軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

191.二人の精霊

話が決まったところで、俺はモアに振り向いた。

「ありがとうモアさん、すごく助かった」

「え、は、はい」

「落ち着いたら必ずお礼しにくるから」

「はい……」

そういってモアと別れた。

イシュタルとオノドリムを連れてゆっくりと海上に向かって浮上していく。

「どこかいいところがあるかな」

「えっとね……東の方にちょっといって、陸にあがってからさらにちょっと進んだところで山があるの」

「そこを割るんだね」

「ううん。あそこは千年以上噴火してない山でね、この先も当分はしない感じなんだ」

「山の噴火も出来るの?」

びっくりした俺は目を見開いてオノドリムに聞き返した。

「もちろん! それくらいはよゆーよゆー」

オノドリムは軽いのりのまま返事してきた。

千年以上噴火してない火山を噴火させるなんて、どうかんがえても「よゆーよゆー」ではすまない所業だけど――。

「ん? どうしたのマテオ」

「ううん、オノドリムってやっぱりすごいなって」

「えへへー、まあ、そんな事もあるかなー」

オノドリムはめちゃくちゃ上機嫌になった。

俺達はそのまま浮上して、海面近くまで来たところで、そのまま海上には出ず、水中10メートルくらいの深さをたもったまま、オノドリムの指示通り東に向かっていった。

ぎりぎりまで海中に潜ったまま、隠れての移動をした。

海岸が近づいてからようやく浮上して、上陸した。

上陸したあとはオノドリムにバトンタッチして、俺とイシュタルを連れてその山にむかった。

移動をオノドリムに任せて俺はまわりを警戒したが、運が良かったのかそれとも別の理由からか、途中誰かに襲われる事なく山に着いた。

「ついた」

山頂を空から見下ろす、という感じで到着した。

見下ろすその山は綺麗に三角形の形をした、自然豊かな山だった。

「なるほど……この様子だと長らく噴火していないようね」

山の光景をみたイシュタルが感想を漏らした。

「そういったじゃん」

「じゃあオノドリム……早速お願いできる? 出来れば早いうちに今のオノドリムと合流したいから」

「わかった、任せて」

オノドリムはそういって、空中に浮遊したじょうたいのまま、ふわふわと山頂の方をむいた。

瞬間、鳥獣達が一気に逃げ出した。

まるで蜘蛛の子を散らすかのように、山に棲まう鳥獣達が一斉に逃げ出した。

そこから数呼吸の間をあけて、地鳴りが聞こえてきた。

ごごごごご――という地鳴りととともに、山が目に見えて揺れ出した。

そのまま更にしばらく待つと、山頂に小さな爆発が起きて、そこからマグマが吹きだした。

オノドリムが「やり始めて」から一分も立たない短い間に山が噴火した。

しかも恐ろしいことに、オノドリムは山頂に向かってじっと見つめただけで、何かをした様には見えなかった。

「さすが……精霊殿だわ」

「そうだね、すごいよね」

人間である俺とイシュタルは目の前で起きた出来事に舌を巻く。

想像出来ていた光景、いやむしろ望んでいた光景なのに、いざ実際にされるとやはりすごいって思ってしまう。

大地の精霊の権能というか、管轄というか、そういうものなのは分かっているが、それでもめちゃくちゃすごいって思ってしまった。

さて、これで――。

「何これ――なにあんた」

背後から声が聞こえてきた。

聞き慣れた声に振り向くと、そこにもう一人のオノドリムがいた。

新しい――過去のオノドリムは俺達と一緒に来たオノドリムの方を見て、眉間がくっつくほどの勢いで眉をひそめた。

一方、「呼び出した側」のオノドリムは平然と振り向いて、過去オノドリムと向き合った。

「簡単に説明するね。あたしはあんた、本人よ。こうなったのは未来から来たから。以上」

「……」

オノドリムは前もって考えていたからか、とてもシンプルで、簡潔な説明だった。

その説明で理解、そして納得してもらえるのかと俺とイシュタルはハラハラして見守っていたが。

「……時間移動って実際に出来たのね」

意外にも、過去のオノドリムはあっさりと受け入れてくれた。

「信じてくれるの?」

あまりにもあっさり受け入れたもんだから、こっちが逆にいいのかと念押しするような形になってしまった。

過去のオノドリムはちらりと俺を――まったく親しみを感じさせない視線で俺をみてから、答えた。

「目の前にいるのが自分とまったく同じ存在なのはわかる、自分の事だからね」

「そっか……」

「だったら信じるしかないじゃん」

俺はホッとした。

オノドリムの性格に助けられた感じだった。

「で、なに。なんでこんなことになってるの?」

俺達はまず説明をした。

ノワールの事、ブランのこと。

時間移動してきて、ノワールを連れて帰ったら未来が変わってしまったこと。

それで追いかけてこっちも時間移動してきたこと。

ちょっとだけの噴火でとまった山頂の更に上空で、出来るだけわかりやすく、かみ砕いた感じで過去のオノドリムに説明した。

「というわけなんだ」

「そうなんだ」

「で、あたしに聞きたいんだけど」

オノドリムが過去のオノドリムに聞いた。

「なに?」

「色々考えたけど、ここ最近急に豊作になった土地ってある?」

「そりゃあるよ?」

「洪水とかの氾濫が起きてない所で」

「…………あるね」

「戦争とか、疫病は?」

「起きてない」

「まずはそこ、教えて」

オノドリム達がなにやら通じ合っているような感じで、色々と説明やらそういうのをすっ飛ばしたやり取りをした。

「どういうことなんだ?」

「えっと……たぶんね」

俺は眉をひそめて、イシュタルの疑問に答えた。

「戦争も疫病もないのに、大地の肥やしになるほどたくさん人が死んでる土地があるのか、って質問だと思うんだ」

「……悪魔」

「うん」

イシュタルも遅れて気づいた。

何かがおきるときって広域に起きることがむしろすくなくて、最初に起きたところから地形の影響を受けつつも円に広がっていくのが普通だ。

時間移動で「追いかけて」来たのだから、「人が大量に死にだした」所を、オノドリムは聞いたのだ。

そしてそれはあったのだった。