軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

190.呼び出す方法

とりあえずオノドリムの事を納得してもらえたようだ。

そこで改めて、俺は人魚にむかって自己紹介した。

「名乗るのが遅れちゃってごめん。僕の名前はマテオ、君は?」

「え? あ、モア……です」

「モアさんだね。ごめんなさい、いくつかちょっと教えてほしいことがあるんだけど、聞いてもいい?」

「はい……私に分かる事でしたら」

まだちょっと警戒心が残っているけど、とりあえず話を聞ける状態にはなった。

俺はすこしほっとした。

オノドリムに正体をあかさせて、それで信用させて話をきくという手段を執ったのは理由がある。

海の中が比較的安全だと思ったからだ。

時間をとぶ前、地上は魔族に支配されていた。

しかし海の中、人魚達の城は破壊されていたが、支配されていなかった。

そのちょっとした違いが、魔族が海中で活動しにくいのではないか、と推測した。

根本的に情報が足りない状況だから、とりあえずあるだけの情報でそう判断して、まずは海の中にいたまま、偶然であった人魚のモアに話を聞くことにした。

「えっと、まずは海神様の事だけど。君は海神様の事を知ってる?」

「もちろんです」

「海神様って今……いる?」

「え?」

まずは遠回しに聞いてみたが、モアはめちゃくちゃ驚いた。

「海神様はまだ……復活していませんが……」

「そうなんだ。ごめんね変な話をきいちゃって」

「……」

本来、更に「海神の体はどこにあるのか知ってる?」と聞こうとしたが、モアの反応であまり掘り下げない方がいいと思った。

海神の事をきいたのは、「帰り」にその力が必要になると思ったからだ。

だからまず聞いてみたけど、それでモアの警戒心を強めてしまったようだ。

「大丈夫だよマテオ」

横からオノドリムがいった。

「大丈夫って?」

「全部終わって、邪魔が入らなくて時間をかけれればあたしがその分の力集めるから」

「そっか。さすがオノドリムだね、すごいよ」

「そりゃ大地の精霊だもん!」

オノドリムは得意げに胸をはった。

こういう、無邪気な自慢をするオノドリムの姿はいつもながら愛嬌があってかわいく見える。

そういうことなら「帰り道」の事は心配せずにすむ。

ならば、と別の事を聞く事にした。

「モアさんは……地上の事をどれくらい知ってる?」

「その……あまり。地上の人と関わりをもたないですから」

「そうだよね……じゃあ、悪魔が何か悪さをしてる、って事は知ってる?」

「悪魔?」

「うん」

「ごめんなさい……それも」

「そっか。ありがとう、モアさん」

とりあえずお礼を言った。

得られた情報は少ないが、それでも時間をさかのぼってくる直前の事を考えれば、何も知らないのはまだ何かがおきる前と考える事ができる。

それが分かっただけでも結構大きかった。

「それなら……マテオ、私達も陸に上がった方がいいのかもね」

思案顔をしていたイシュタルが言った。海水の中なのに女の姿に戻った事もあってか、彼女は柔らかめの言葉をつかって言ってきた。

「そうだね……水先案内人がいた方がいい気もするけど」

「今の精霊様がいれば話がもっと早いのかもしれない。混乱はするだろうけど、非常事態なのはすぐに分かってくれるはずだ」

「たしかに! オノドリムはその居場所分かりそう?」

「うーん……」

水を向けるとオノドリムはめちゃくちゃ困った顔をした。

さっきはものすごく得意げに自慢していて、前向きな空気を纏っていたのが一瞬にしてそれが吹っ飛んでしまった。

「ごめんなさい……」

「ううん、わからないんだ」

「うん……自分がどこにいるとか、自分っぽいのがどこにいるとか、そういうの考えた事も無いしどう見つければいいのかも分からない」

「うん、ごめん。それはそうだよね」

俺は謝った、イシュタルも苦笑いした。

そこはまったくもってオノドリムの言うとおりで、そういう事は普通考えないし分からなくて当然だ。

「精霊様を召喚する方法はないのかな。我々がずっとやっていた儀式などは?」

「あれは決まった場所で決まったことやるっていう取り決めがあって、あたしがそこで見てたからだね。試してもいいけど、その取り決めがなかったら届かないね」

「そうか……」

「……そうだ!」

俺はポン、と手を叩いた。

いきなりの事でイシュタルもオノドリムも、果ては人魚のモアまでもがびっくりした。

「どうしたのマテオ?」

「オノドリムを呼ぶ方法、思いついたんだ。たぶんいけると思う」

「なになに? おしえて」

「まず確認してもいい?」

「うん」

「いまでも、オノドリムは大地の事であれこれできる?」

「えっと……うん、出来るよ」

オノドリムは少し考えたが、ほぼ即答に近い速さで答えた。

「それと、大地に何かあったら分かる? 新しく起きたこととか」

「うん、わかるよ」

「じゃあ……ね」

俺はオノドリムの顔をまっすぐみて、目をまっすぐのぞき込むくらい真っ正面からまっすぐ見つめて、いった。

「オノドリムがどこかのおっきな山を割ってみたら?」

「……なんかすごい事がおきたって、今のあたしが見に来る」

つぶやくようにいってから、さっきと同じ、いやそれ以上のハイテンションになったオノドリム。

俺に抱きついて、地上であればピョンピョン飛び回る位の小躍りした感じで喜びをあらわした。

「すごいマテオ! それいい、絶対呼び出せる!」

本人のお墨付きが得られて、俺はちょっとホッとした。