軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

181.オノドリムの使い方

「どうしたマテオ、変な顔をしているぞ?」

「あ、うん。ちょっと……なんていうんだろ、もやもやしちゃって」

「わ、私は本当の事をいってます!」

ブランは強く食い下がって、本当の事だと主張してきた。

「ああ、ちがうんだ。嘘を言ってるとか、そういう話じゃないんだ」

「ならどういう話なのだ、マテオ」

「僕もまだ混乱してるけど……ブランさん、あなたは過去から来て、完成した最高の悪魔を連れ帰るのが目的だって言ったよね」

「はい、そうです」

「そして連れ帰った後、完璧な悪魔が二人になって、それで結婚とかさせたりして、二人で完璧な悪魔の子供を作って、最終的に完璧な悪魔の一族、進化した悪魔の一族が出来る――というのが目的なんだよね?」

「はい、そうです」

「じゃあ仮になんだけど、連れて帰った事が成功したとして。完璧な悪魔の一族が新しく産まれたとして。ぼくたちの時代はどうなるの?」

「え?」

ブランはきょとんとなった。

何を言っているのか理解できない、と言う顔をした。

「あのね、過去になかったことを、あったことにする、って事だよね?」

「そ、そうですね……」

「それって歴史がかわっちゃうって事じゃない? 今回だと、成功したら悪魔が絶滅した歴史から、悪魔が進化した歴史になっちゃうけど…………歴史が変わるってどういう事?」

「そうか、そういうことか! すごいぞマテオ、その通りだ」

俺の質問を受けて、イシュタルもようやく何を言いたいのか理解できたようだ。

「真なる歴史が発覚したというレベルの話ではすまなくなる。歴史上の出来事が変わればそれに影響されて歴史が変わるのは当然。強力な生物が一種あった、なかったともなれば差異の大きさはかなりのものになる」

「それは……その」

ブランはもじもじしたあと、搾り出すように。

「すみません……分かりません」

「そうなの?」

「その……時間を行き来してなにかをするのは初めてです。それが出来たという話も聞いたことがありません……」

「そっか……」

ブラン達悪魔にとっても初めての試み、それでどうなるのか分からないという。

うんまあ、そりゃそうだ、としか言えない。

「そもそも論だが」

イシュタルは厳しい顔をブランにむけた。

「お前が過去から来たという証拠は?」

「はい、それでしたら――」

ブランに言われて、俺達は庭にでた。

とりあえず話を大きくしたくないから、人払いをして俺とイシュタル、そしてブランの三人だけで庭にでた。

「ここですね」

ブランはしばらく庭で何かを探すようなそぶりでふらふらキョロキョロしたあと、立ち止まって地面を指さした。

俺とイシュタルはブランの横にやってきて、指さされた地面をみた。

「ここになにがあるの?」

「時間移動する前に地中深く証拠を埋めました。ここから真下に二十メートル掘ってください」

「証拠?」

「はい」

「わかった。ぼくがやるから二人は下がってて」

「うむ」

「はい!」

イシュタルとブランは言われた通りに俺から離れた。

俺は少し考えて、一度その場を離れて、水を持ってきた。

「マテオ?」

「見てて」

訝しむイシュタルににこりと微笑みかけてから、水を二カ所に掛けた。

一カ所はブランが指さした場所で、一カ所はそれから少し離れた所にぶっかけた。

二カ所の水溜まりをつくった。

そして、水間ワープを使う。

水溜りA――ブランが差した場所の土を水溜まりB――離れた所に水間ワープでとばした。

飛ばし続けた。

土をワープさせ続けていくと、水溜まりがまるで地面を溶かしていくかのように下がっていった。

お湯を氷にたらして一点だけとかして穴があいていくのと同じ光景になった。

違うのはお湯はすぐに冷めて止まってしまうが、水間ワープだと下がり続ける。

そして、もうひとつの水溜まりで土が吐き出されて、その真横で土の小山が盛り上がっていく。

「すごいなマテオ、それはマテオがいつもやってるアレの応用なのだろう?」

イシュタルが感心した様子で言ってきた。

「うん! 初めてだから上手くいってよかった」

「ふふっ、さすがマテオだ。……それ、もしかすると温泉を掘り当てるのに使えるのではないか?」

「え? あ、うん、そうだね。温泉がどこに埋まっているのかオノドリムにあらかじめ訊いておいて、そこをピンポイントに掘れば一発で掘り当てられるね」

「あはは、それもさすがだ。大地の精霊の贅沢な使い方だな」

水間ワープで半自動で掘り当てて行くのを眺めながら、イシュタルととりとめのない雑談をした。

そうしてしばらく経つと、水溜まりが何か異物を吐き出した。

それまでの土とか石とか木の根っことか。そういったものとはまったく違う異物。

平べったい板だった。

「それです!」

見た瞬間ブランが声を張り上げて、水間ワープで 吐き出された(掘り出された) それに駆け寄った。

俺は水間ワープでの発掘をとめて、イシュタルとともに歩いて行った。

ブランがそれをとって、表面の土とかを払って、それを俺に差しだした。

俺はそれを受け取った。

「重い! これってもしかして黄金?」

「はい。どれくらい飛ぶのかわかりませんでしたから、土の中に数百年埋めても朽ちないであろう黄金でつくりました」

「あっ、出発――でいいのかな、その時に埋めたものなんだ」

「はい。黄金のプレートでつくった割り符です、これを見てください」

そういってブランはもう一枚、黄金のプレートをさしだした。

今度のはものすごく新しかった。

二枚のプレートは元は一枚だった感じで、切断面がぴったりくっついた。

「なるほど。しかしこれでは決定打にはならんな」

イシュタルはそういった。

「どうしてですか?」

「黄金なのが仇になったとも言える。確かに片方が新しく片方は古めかしく見えるが、片方を割ってここ最近埋めたという可能性も捨てきれない」

「そ、それは……」

「もっとなにかないのか?」

イシュタルはブランをつめた。

「……信じてください! ほんとうなのです!」

「証拠をと言っている」

「……っ」

ブランはした唇を噛んで、苦々しい顔をした。

「……あっ」

「どうしたのだマテオ」

「確認してみるからちょっと待ってね――オノドリムー」

「よんだー?」

声を張り上げた直後、どこからともなくオノドリムが現われた。

大地の精霊という偉大なる存在なのにもかかわらず、俺の呼びかけに間髪いれずに登場し、かつ気さくに応えてくれた。

「せ、精霊……!? どういうことですか……」

気安く大地の精霊を呼び出したことをブランは驚いていた。

それをひとまず放置して、オノドリムに聞いてみた。

「ねえオノドリム。オノドリムは地中に埋まってたものがどれくらい埋まってるものなのか分かる?」

「わかるよ」

オノドリムはけろっと答える。

「ホント?」

「もちろん、そんなの超楽勝だもん」

「えっとじゃあ……これ、どれくらい埋まってたのか見てくれる?」

俺はそういい、割り符の二枚を指しだした。

「まっかせてー。うんうん、これ大体300年はうまってたよ」

「本当に?」

「まちがいないよ」

オノドリムはそういい、可愛らしくウインクをした。

オノドリム、大地の精霊のお墨付きを得た。

「本当にずっと埋まってたね」

「うむ……さすがマテオだ、大地の精霊のこの上ない適切な使い方だ」