軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

180.二人の悪魔

「悪魔の事を知っているのですか?」

目の前の女が驚いた様子で答えた。

「そう話すってことは、やっぱり悪魔なの?」

「そうですが……ということは時代を間違えてしまいました? どうしましょう、もう一往復するだけのエネルギーなんてないのに……」

「ねえ、君は本当に悪魔なの?」

「え? ええ……そうですよ」

「本当に? 悪魔って、ノワールだけになったって聞いたけど」

「え!?」

俺の言葉を聞いた女悪魔は目を見開くほど驚いた。

「それは本当なのですか!?」

女悪魔は俺に詰め寄ってきた。

あまりの勢い、顔がくっつくくらいの勢いで詰め寄ってきた。

「う、うん。そうだけど……」

「はあ……よかった……。失敗したのかと思いました……」

女悪魔は俺から離れた。

言葉もそうだが、心底ほっとした、という表情は事情ありありに思えた。

「ねえ、ちょっと聞いてもいいかな」

「え? あ、はい。なんでしょうか」

「あなたは悪魔なんだよね」

「はい。悪魔のブランっていいます」

「ブランさんだね。ねえブランさん、僕は悪魔はもう一人しかいないって聞かされたけど、それって嘘だったの?」

「……いいえ、きっと本当の事だと思います」

「…………きっと本当の事だと思います」

女悪魔ブランの言葉をリピートした。

言葉として成立するが、意味を考えたらまったくおかしかった。

それは俺だけじゃなく、さっきから黙って成り行きを見守っていたイシュタルも同じことを思ったようだ。

「そもそもお前がその悪魔だろうに、そのうえまるで他人事のようなそのいい方は矛盾しているぞ」

「はい……すみません。あなた方はその最後の悪魔を知っていますので、きっと相当な方です。ですので……お話します」

「何をだ」

「私は……過去から来ました」

「「…………」」

俺とイシュタルは言葉を失った。

視線を交換して、お互いに困惑している事を確認して、耳が聞き取れた言葉自体は間違っていない事を確認し合った。

「あ、たぶんですよ? 悪魔が最後の独りになったという事からの状況判断です」

「どういう事ですか?」

「今、悪魔の一部で、最高で究極の悪魔を生み出そうとしています」

「うん、しってるよ。その結果がノワールなんだよね」

「おそらくはそうです。その、私にはまだ途中ですので結果までは」

「あっ、そうだよね」

そりゃそうだ、と俺は思った。

本当に過去から来たのなら、悪魔の全てをいわば生け贄に捧げて作りあげたノワールの事なんて知るよしもないだろう。

「じゃあ今――ブランさんから見ての未来に来たのは、『結果をしる』ためなの?」

カンニングみたいなモノなのかなとおもった。

過去とか未来とか、時間を自由に行き来出来たら、未来の情報を過去に持ち帰っていろいろ上手くやる――というのは一度は妄想することだ。

ギャンブルなんてその最たるものだ。

10秒後にでるサイコロの目が分かっていればギャンブルに100%勝ててしまう。

だからそうだと思っていたのだが、ブランはゆっくりを首を振った。

「違います。実は、最高の悪魔を作り出す道筋はもうつけられました。たぶん間違いなく成功すると悪魔はだれもが確信しています」

「そうなんだ」

「ですが、ここで一つ問題が生まれました。それは、最高の悪魔は一人しか出来ないのです」

「……うん」

そうだよな、と俺はおもった。

何しろ既に結果を知っている。

最高の悪魔、いやはてのノワール。

それを知っているから「まあそうだよな」という反応をした。

「それの何が問題なの?」

「最高の悪魔を生み出せます、ですがそれは一人のみです」

「うん、そうだね」

「一人ではダメなのです」

「……」

「……そうか」

イシュタルが何かに気付いたようだ。

俺はイシュタルに振り向き、きいた。

「何かわかったの?」

「おそらく……悪魔も生物だ、ということか?」

イシュタルはブランにきいた。

ブランは小さく頷いた。

「はい、その通りです」

「道理だな」

「どういう事なの?」

「あれは執事だったな。生物がオス一体では失敗だということだ」

「…………あ」

俺もハッとした。

イシュタルに少し遅れてハッとした。

「そっか、子供が作れないんだ」

「はい、そういうことです。もちろん、私達悪魔は何らかの形で混血を生み出せますが、純粋な悪魔は生み出せません」

「うん、だからノワールはずっと一人なんだよね」

「そういうことになります。それが私が時間を越えてきた理由でもあるのです」

「どういうことなの?」

「私がいた時間で今まで通り最高の悪魔を産み出します」

「うん」

「そして、どこかの未来から最高の悪魔を一人連れて帰ります。すると――」

「あっ、二人になる」

「その通りです」

ブランは小さく、しかしはっきりと頷いた。

なるほどと思った。

そのやり方なら確かに「最高の悪魔が二人」という状態を作れる。

本当に過去とか未来とか、時間の行き来ができるのかというのも、ブランが嘘をついていなければ本当だとおもう。

それで解決出来る――ようにきこえるのだが。

「…………」

なんだかすっきりしなかった。

時間移動に関しての知識は今まで読んできた知識にはなくて、なんともいえないところはあるが、それでも「本当にそれでいいのか? いけるの?」と、めちゃくちゃモヤモヤしてしまうのだった。