軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

146.スキンケア

「じゃあ海神ボディの血を使えばいいんだね」

俺はオノドリムに聞く。

ノワールの反応は一種の答え合わせになったけど、そこにいま触れるのは得策じゃないから、 何にも気づかなかった(、、、、、、、、、) フリをして話を続けた。

「うん、アレならいいと思う。それかあたしのとか」

「オノドリムのを使うのはちょっと申し訳ないから、まず僕の方でやってみるよ」

「別にいいのにぃ」

「どうしてもダメな時はまたお願いするよ」

「そか、いいよ」

オノドリムは一瞬だけ唇を尖らせ、拗ねたような顔をしたが、すぐにけろっとしていた。

数百年間盟約に縛られ続けてるみたいに我慢強い所もあれば、こうして一瞬一瞬の感情に生きている様なサバサバとした一面もある。

そういう所が、村人おっさんのメンタルには魅力的だなと思った。

そう思いながら手をかざす。

水間ワープで海神ボディを取り寄せる。

キリッとしたイケメンの海神ボディが部屋の中に現われた。

俺はオノドリムに確認する。

「血って、どれくらいあればいいの?」

「幼い方の君の体だから――コップいっぱい分くらい?」

オノドリムは俺の「皮」をみて、そう言った。

「そうなんだ。じゃあコップを――」

「どうぞ、こちらをお使いください」

「ありがとう――すごいね」

俺は二重の意味で感心した。

こんな時(、、、、) なのに、全くのノータイムで用意してたかのようにコップを差し出してきたノワールを本気ですごいと思った。

いつものように謙遜するノワールをよそに、コップを持って海神ボディと向き直る。

水間ワープにも使った水を改めてつかって、水の刃で海神ボディの手首を切った。

手首からボタボタと血が流れ出したのをコップで受け止める。

それがコップいっぱい分、満杯になったところで血を止めた。

「当然といえば当然だが、血も自在に止められるのだな」

イシュタルが感心した様子で口を開いた。

「うん。海神ボディだったら、これくらいの傷だったら自分の意志で治せるよ」

「マテオの方だとダメなのか」

「治すのはできないけど、血を止めるのは出来るよ。これくらいの傷だと――こうかな」

俺はそういい、刃にした水を更に操って、自分の――マテオボディの方の手首を覆った。

ただの水が粘性の高いゼリーのような感じになって、手首にくっつき覆った。

「こうすると血はとまるよ」

「ほう……さすがだな」

俺はコップいっぱい分の海神の血を持ったまま、オノドリムに確認する。

「これでいいかな」

「うん、たぶん足りると思う」

「これをどうすればいいの?」

こう聞きながら、頭の中では同時にいろいろ想像してみた。

飲ませるのかな、それとも塗りたくるのかな。

でもこれは血だからそう思ってしまうのであって、オノドリムは最初に髪でも爪でもいいといったから液体を起点とした発想は違うよな――などなど、色々と思考を巡らせていた。

オノドリムから返ってきた答えはちょっと意外で、でもなるほどと思うようなものだった。

「それを溶かして――なんだっけ、そうそう、オーバードライブ」

「オーバードライブ?」

「うん」

「それで僕ならっていったんだ」

「そういうこと」

オノドリムはウインクをした。

俺は持っているコップの中身、海神の血にむかって力を流し、オーバードライブするようにした。

「むっ……」

さすがに海神の血は「頑丈」だった。

普段、剣とか普通の道具ならとっくにオーバードライブ出来ているくらいの力を注いでも血は血のまま変化がなかった。

力を注いでいるせいか、手の震えか。

それで血の水面がちょっと波打っていたけど変化はなかった。

「大丈夫そう?」

オノドリムは心配そうに俺の顔をのぞきこんできた。

「大丈夫」

一言だけ、そうとだけ応じてから、俺は更に力を込めた。

顔はけろっとしているのを維持しつつ、力は全力で。

こっそり奥歯をかみしめるくらい全力をだした。

たぶん「マテオ」になってからで一番全力をだした。

その甲斐あってか、海神の血に徐々に変化が起きた。

さらさらだった血が、すこしずつ透明になっていき、波打っていた血の水面は見て取れるくらいドロッとした感じになった。

全力を出しているから結構キツい、でも変化があったから頑張れた。

更に奥歯をかみしめて力を振り絞る。

そうして、コップいっぱいの海神の血を全部透明で粘度の高い何かに 変えていった(オーバードライブした) 。

「これで、いいかな」

「いけると思う。でもこうなったか……ちょっと難しいかな」

「どういう事?」

「液体だとね。マテリアルコーティングは対象に満遍なく塗りつけるんだ。あたしの髪だと空気みたいになるから楽なのよね」

「そっか」

「うん、やっぱりここはあたしが――」

「大丈夫」

ちょっとだけ見栄があった、もう少しでいけるという感じがしたから自分で最後まで仕上げたいと言うのもあった。

俺はオノドリムにそういって、俺の皮に視線を向けた。

オーバードライブで全力を出してるから、意識をそっちに向けないとちょっと難しかったのはある。

だから意識を向けて、皮にエクリプスの力を使う。

皮を操作して、指でコップの中身を一掬い。

粘度の高い、油のようなそれを皮のほっぺに塗る。

「これでいい?」

「その手があったか! うん! 行ける行ける!」

オノドリムのお墨付きを得て、俺は皮に海神の血を塗っていく。

傍から見れば、それはまるで石けんを全身に塗っていくような感じで、液体だが問題なく全身に満遍なくぬっていけたのだった。