軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

147.力の完成系

塗り終わった後の、俺の皮をじっと見つめる。

「どうかな」

「あんまり変わった感じはしないんだけど……これで良かったの?」

すこし不安になって、オノドリムに聞き返した。

俺の不安とは裏腹に、オノドリムはいつものように、実に気軽な感じで答えた。

「うん! マテリアルコーティングしたら自然の劣化はしないし、もとの状態よりかなり丈夫になるよ」

「丈夫になるんだ」

「うん! あと水に入れっぱなしでも土の中に埋めてもくさらなくなるよ」

「そっか。それが本来の目的だもんね」

「うん!」

オノドリムは満面の笑みでうなずいた。

本来の目的、皇帝の遺体の保存を考えたら、「腐らなくなる」というのは間違いない所なんだろう。

「……」

「何を考えているのだ?」

「ちょっとためしてみたいことをおもいついたんだ」

「ほう? 何か手伝いはいるか?」

「ううん、まだ思いつきだから、試しにやってみる」

「そうか」

イシュタルにそう言って、俺はまず「皮」を作った。

ナイフを使って、自分に刃を突き立てて皮を削いで、二枚目の俺の皮を作った。

念の為、それにもエクリプスの力を通してみたけど、無事に操作する事が出来た。

一枚目のと合わせて、可愛らしい「皮」の俺が二体も目の前に立っていて、それが自由自在に動かせるのはちょっとシュールな光景だった。

つぎに、新しい皮の方にも海神の血をオーバードライブして、「自分の手」で全身に満遍なく塗り込んだ。

二回目だったから手慣れたもんで、瞬く間に全身に塗り込めた。

「つぎは……水、がいいかな?」

いろいろ考えて、まずは、って感じで水を選んだ。

色々と便利使いしていた水を使って、一枚目の皮の全身を覆った。

覆ってから、力を加えた。

まるで大きな布で包み込んでから、その中身を絞り込むかのような感じで力を加えた。

まるで人間のように動かせているとは言え、元々は皮だ。

エクリプスの力を抜いた後、それはみるみるうちに水によって圧縮されていった。

みるみるうちに小さくなっていった皮は、最終的には手の平に乗る、金貨一枚ほどのサイズになった。

「これを――こう」

「わー」

「ふむ……なるほど」

金貨のサイズになったそれをポケットの中にしまうと、オノドリムは目を輝かせて、イシュタルは冷静な表情のまま感心した。

「そんなにちっちゃく出来るんだ」

「うん、できちゃった。皮だからね、もともと」

「そっかー。でもどうして?」

「これくらいのサイズの方がいつでも持ち運べるとおもって」

「海神といっしょで、使いたいときによべばいいじゃない」

「できるからといって、突き詰める事を怠らないということか。さすがマテオだ」

「あはは」

イシュタルに褒められたのがちょっと恥ずかしかった。

オノドリムはまだきょとんとしていたが、イシュタルは完全に理解しているみたいだ。

オノドリムの言うとおり、どこかに置いて、使いたいときに水間ワープで取り寄せればいい。

でも水間ワープは水がなければ使えないし、そもそも水があってもつかえない可能性も0じゃない。

今の所そういう状況にはなってないけど、0とは言い切れない。

それにどんなに便利な力でも、手元にものとして置いておけることに強みがある。

だからこうして、圧縮してポケットにはいるくらいのサイズにした。

俺はまだ首をかしげてるオノドリムにいった。

「もうひとつあるけど、オノドリム、大地の力で圧縮してみてくれる?」

「あたしの?」

「うん。水じゃなくて大地の力でぎゅってしたらどうなるのかも試してみたいんだ」

「おっけー、じゃあはい!」

オノドリムはそういって、ノータイムで指を立てて天井にむかって突き上げた。

するとどこからか砂が現われて、二枚目の皮にまとわりついた。

エクリプスの力を抜くと、一枚目の時と同じような感じで、今度はオノドリムの力に圧縮されていった。

あれよあれよのうちに小さくなっていったあと、オノドリムは満足げに砂を退けて、圧縮したものを手にとった。

確認して、更に良い笑顔でそれを俺にさしだした。

「できた!」

そういって差しだしたのは一枚目にしたのと同じような、金貨サイズのものだった。

まるで測ったかのように、俺がやったのとまったく同じサイズにしたオノドリム。

「ありがとう、すごいねオノドリム」

「えへへー」

俺は「皮金貨」を二枚ともポケットの中に入れた。

金貨サイズなだけあって、ポケットの中に入れてもなんの違和感もなかった。

これが十枚くらいあってもまったく違和感なく持ち運べると思った。

「マテオ、どう?」

「うん、いいと思う。持ち運びやすいし、使う時は――」

そう言って、ポケットの中から二枚とも取り出して、まるでばらまくようにして放り投げた。

放り投げられた「皮金貨」の二枚にエクリプスの力を使う。

すると、金貨サイズに圧縮された皮はみるみるうちにもとのサイズになって、やがて人間の姿になって、両足で地面にしっかりとたった。

「……うん」

二枚の皮がしっかりと自分の足でたって、エクリプスの力で問題なく動かせる。

それを確認して、俺は。

「これで完成、かな」

ここしばらく模索を続けていたエクリプスの力が、ようやく自分に最適な形になったのだとかくしんしたのだった。