軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

賑やかなコメント

コメントが来ない。

明石さんが止めてるのか?

と思ったら、一気にコメントが流れてくる。

〔幸運値のシャープアブノーマルって存在するの!? マジかっ!〕

(ヨーロッパ人にいたはず)

〔ベータカッコいい! 結婚して! 給料は俺が管理するから!〕

〔スライム酒の最低幸運値は50。18歳で幸運値50以上は勝ち組確定〕

〔最低黄う〇ち〕

〔↑通報しました〕

〔政府から依頼を受けてるパーティって時点で勝ち組〕

〔男一人に女三人パーティの時点で勝ち組〕

〔他のメンバーも強いの?〕

なんか思ったより好意的な感じがする?

意を決しての告白だったのに。

明石さんが悪意のあるコメントを送ってきてないだけかもしれないけれど、ひとまずは安心だ。

てか、明石さん、なんで「最低黄う〇ち」をスルーしてこっちに送って来てるんだ?

場を和ますギャグが必要だと思ったのか、それとも下ネタギャグが好きなのか。

「ええ、私たちも強いわよ。私は俊敏値の 尖端異常者(シャープアブノーマル) だし、残り二人は覚醒者だもの。泰良一人でも凄いけど、四人揃ってこその最強のパーティよ」

「そうね。泰良に負けてられないよ」

「はい。強い敵が出てきたら、壱野さんに負けないくらい、凄い魔法をお見舞いします!」

みんながそう言った。

俺たちは気合いを入れ直す。

〔いいパーティだな。昔の登山仲間に声をかけて、あの時挫折した山にもう一度挑戦してみたくなった〕

そのコメントに、何か心に温かいものが過ぎった。

そっか、配信って何が楽しいのかって思っていたけれど、こういうコメントがいいんだな。

俺たちの行動が誰かの心を動かす。

そして、その動いた心が俺たちに喜びを与えてくれる。

こういうのっていいな。

〔富士山だったらいまはやめておけよ。入山規制かかってるから〕

〔どこだろ? エベレスト? マッターホルン?〕

〔みんな知らないかもしれないが、天保山って山だ〕

〔※天保山の標高、4.53メートル〕

〔少し感動した俺がバカだった〕

やっぱり、明石さんはこういうシンプルなギャグが好きなようだ。

頼むからやる気を削がないでくれ。

十分スライムを倒したところで、さらに奥に行く。

五階層に現れたのは石人形という魔物だった。

「石人形は力は強いけれど、動きは遅い魔物ね。五階層に出てくる魔物の中では厄介よ。アヤメ、いってみる?」

「はい。解放: 一陣の風(ショートウインド) 」

ちゃんと制御しているのか、文字通り一陣の風が石人形を真っ二つにする。

落としたのはDコインと魔石か。

「五階層の魔物ならまだ余裕ですね」

「鏡石――綺麗な石だけど、持って帰るのは面倒よね」

「俺のアイテムボックスに入れておくよ――ん? この先に宝箱の気配だ」

俺はそう言って、皆を宝箱のある場所に誘導する。

さて、中身はなにかな?

まぁ、五階層だし期待はできないだろうけれど。

中を開ける。

入っていたのは――D缶か。

宝箱から出るのは何気に久しぶりだな。

ん? これは――

俺はD缶を手に取ると、

「姫、持っていてくれ」

と言って姫に渡した。

「 私が持ってい(・・・・・・) ればいいのね(・・・・・・) ?」

と尋ね返したので頷く。

そういうことだ。

これは姫が持っていれば開くD缶だ。

【開封条件:俊敏値300以上の人が所有している状態で2時間経過】

また姫のためのD缶だったからな。

持っているだけで開く系はありがたい。

六階層に行くと、今度は石の兵士が三体現れた。ハニワ兵の亜種っぽい。

「石の魔物が多いわね」

「たぶん、石切が近いからじゃないかな?」

「石の兵士って珍しい魔物ですね。何を落とすんでしたっけ?」

アヤメが尋ねる。

さすがに姫も覚えていないらしい。

倒してのお楽しみかと思ったら、

〔石の兵士が落とすのは石切剣。文字通り石を切るための鋭い剣〕

〔日本だと茨城の稲田ダンジョンに出てくるよな、石の兵士。ここで二例目か〕

〔石切剣の買取価格は14万円〕

〔イ(1)シ(4)でってダジャレ?〕

〔滅多に出ないから、オークションに流せば結構高くなると思う〕

〔滅多に出ないって、もうベータさんへの前振りでしかない気がする〕

とコメントが来たので、リスナーにお礼を言う。

じゃあ、最初は俺が倒すとするか。

俺は布都御魂を構え、

「薙ぎ払い!」

と一度に三体の石の兵士を薙ぎ払う。

その一振りで、三体の石の兵士は上半身と下半身が二つに分かれて死に絶えた。

そして残ったのはDコインと、二本の剣。

「あぁ、なんか滅多に出ないって言ってたのに、ごめんな」

俺がそう言って二本の石切剣を拾うと、

「「「だと思った」」」

〔〔〔だと思った〕〕〕

三人とコメントが見事にシンクロした。

特にリスナーたち、タイムラグがあるはずなのに反応早すぎるだろ。

さてはこうなることわかっていて、文字入力して待機してたな。

教育されすぎたリスナーに対して脅威を覚えるのだった。

十階層まで降りてきた。

現れたのは石巨兵。

巨人というほど大きくはないが、それでも体長2メートルは越えている。

「解放: 石槍(ストーンジャベリン) 」

ミルクの放った石の槍は当たり所はよかったのに、石巨兵に弾かれた。

石槍(ストーンシャベリン) は初級の土魔法の中では威力がある方だけど、石巨兵の守備値の方が高いようだ。

ちなみに、石巨兵に対して火魔法は禁止となっている。

効果はあるかもしれないが、倒しきれなかったとき、熱した石が襲い掛かって来るのは脅威でしかないからだ。

石巨兵がミルクに反撃をしようとするが、

「 注目の的(アテンションプリーズ) 」

姫がスキルを使って石巨兵の注目を集めて、攻撃のターゲットを自分に移すと、その大振りの攻撃を躱しながら、石巨兵の関節部に攻撃を的確に打ち込んでいき、確実に倒した。

蝶のように舞い、蜂のように刺すっていうのは姫みたいなことを言うんだろうな。

しかし、ここに来て戦闘時間が長くなってきている。

アヤメの魔法でも削ったり潰したりはできるが、一撃では倒せないし、俺の剣でも相手の身体が大きすぎて胴体を切断できない。

結局は比較的細い腕や足、首などを狙うしかないのだが、石巨兵の場合は首を落としても死なないのが厄介なところだ。

「ねぇ、みんな。次はあの魔法を使おうと思う」

「あの魔法って、あれってゾンビやスケルトン以外にも効果があるのか?」

「うん、石巨兵みたいに魔法で動く生物にも特に効果があるんだって」

だったらミルクを信じてみるか。

リスナーたちも、〔デルタちゃんが面白いことを始めるっぽい〕とワクワクしている。

しかし、もう三時間以上調査してるのに、こいつらずっといるんだよな。

平日の昼間から何をしていることやら。

「こっちだ」

魔物の気配のする方に誘導する。

さっきと同じ石巨兵。

「ミルクちゃん、頑張って」

「ありがとう、アヤメ。じゃあ、行くよ」

ミルクは杖を構え――

「解放: 聖放水(ホーリーシャワー) 」

水が噴き出た。

そして石巨兵の顔に命中する。

当たったが、特に変化はない。

〔やったか!?〕

〔魔法名に情報規制が入ったみたい〕

〔失敗フラグやめろ〕

〔デルタの魔法は放送禁止用語?〕

〔デルタちゃんの聖水、はぁはぁ〕

〔↑通報しました〕

〔おかしいな、石タイプの弱点は水のはずなのに〕

〔ポ〇モン厨乙〕

〔石巨兵「さっぱりした」〕

ってコメントは諦めムードだ。

石巨兵は仁王立ちして動かないからだ。

効果がなかったと思うのが普通だろう。

だが、俺には確信があった。

ミルクは成功した。

石巨兵から気配が消えたからだ。

石巨兵は立ったまま、その姿をDコインに変えた。

リスナーたちは何があったかわからないだろう。

ここで改めてミルクがみんなに説明をする。

「私は薬を生み出す薬魔法を使えます。さっき生み出したのは聖水で、他にもポーションを生み出せます。生み出した薬は直ぐに消えるので、売ったりはできませんけど。あ、いまのでレベルが上がりました」

ミルクがそう言ったとき、またもコメントが騒ぎになった。

〔ユニーク魔法キタ―――(゜∀゜)―――― !!〕

〔ユニーク魔法だ!〕

〔薬魔法ってすげー! デルタのアトリエだ!〕

〔レベルアップおめでとう〕

〔【悲報】デルタちゃんの聖水がモノホンの聖水だった〕

〔やったかと言われて、本当にやられてる石巨兵ザァコザァコ〕

〔石巨兵は十階層の中でもトップクラスの魔物なのに一撃って〕

〔ダンジョン局がさっき発表したこのアバター配信アプリの説明読んでたが、個人情報保護MAX状態だと、登録されていない魔法やスキルは一度情報規制が入るみたい。サポートのダンジョン映像編集者がOK出せば今後は魔法名出しても規制かからないはず〕

〔石巨兵「さっぱりしすぎて昇天してもうたー」〕

リスナーたちは大盛り上がりだな。

同接数が増えているため、俺の幸運値のときより騒ぎになっている気がする。

と――

「押野さん、鞄が光ってますよ!」

アヤメが言う通り、姫の腰が光っていた。

どうやら姫のD缶が開く時間になったようだ。