軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

どでかいの一発打ち込んでやれ

姫のD缶が開いて、リスナーたちもまたお祭り騒ぎ。

ワクワクした笑みで姫は中身を見る。

だが、直ぐにその笑みは露骨に残念な顔になった。

「ハズレだったわ。飴玉一つだったわよ」

と姫が言った。

〔D缶の中身、舐めてんのかっ! 飴玉だけに〕

〔ベータの幸運もD缶の中身までは反映されず〕

〔D缶が開いただけで幸運もの〕

〔未開封のD缶:1000円、飴玉なら10円だから開封して損してる〕

とお祭りムードから葬式ムードに早変わりだ。

しかし、飴玉一つってことは、きっとそういうことなのだろう。

「あぁ、姫、飴玉預かっておくよ」

「え? むしゃくしゃしてるからかみ砕こうかと思ったんんだけど」

「ダメ!」

ミルクが思わず大声を上げた。

「どうしたの、ミルク。そんな大声を上げて」

「ほ、ほら、飴玉を噛んだら虫歯になるって言うでしょ? それに、今回の調査で出たものは一度提出する必要があるから、ちゃんと泰良に預けて」

「そうだったわね。泰良、お願い」

「おう、預かった」

詳細鑑定をすると、やっぱりスキル玉だ。

あとで普通のダンジョンドロップとすり替えよう。

見た目は同じだから大丈夫だろう。

さて、このスキル玉、どうするか?

俊敏値に関係するスキルってことは、姫が得るべきスキルの可能性が高いんだよな。

とりあえずインベントリに収納しておこう。

十一階層に出てきたのは、因縁のある敵だった。

オーガだ。

万博公園記念ダンジョンで出てきたのはイビルオーガで、あれは十三階層に出てくる魔物らしいが、こいつは通常のオーガ。肌の色もイビルオーガは黒色なのに対し、こいつは赤い肌をしている。

持っているのは鉄の棒ではなく、黒い木の棍棒か。

「これは一撃食らったら危ないわね。アヤメ、 風の速足(ウィンドウォーク) を――アヤメ?」

アヤメの様子がおかしい。

じっとオーガを見ているが、その顔色は非常に蒼い。

万博記念公園ダンジョンでイビルオーガに襲われたことを思い出したのだろう。

あの後も普通にダンジョンに潜っていたのでつい忘れそうになるが、死を目の当たりにしたのに、そのショックが簡単に消えるはずがない。

ミルクが魔法を放つも効果は薄い。

万が一のことを考えて、補助魔法の無い状態で姫はオーガに近付けない。

ここは俺が倒すか。

いや――

「アヤメ!」

俺は彼女を呼ぶ。

「壱……野さん?」

「お前が倒せ」

「で、でも――」

「男なら、ここは俺に任せてろって言うべきなんだろうけれどな。ただ、今の俺はアヤメを守る男ではなく、アヤメと一緒に戦う仲間でいたいと思っている」

オーガが近付いてきた。

姫がオーガの注目を集めて、その攻撃を避けながら、「何でもいいけど早くして!」と怒っている。

「アヤメのことは俺が絶対に守る。だから、アヤメは安心してどでかいの一発打ち込んでやれ! お前の魔法はオーガに負けやしないさ」

俺はそう言って剣を構えると、

「姫、下がれ!」

と言って疲れが見え始めた姫と位置を入れ替わる。

オーガ相手に紙一重の回避ができない分、大きく動いてスタミナを消耗しているのだろう。

オーガが振り下ろしてきた木の棍棒を剣で受け止める。

そこそこ重い。

安全マージンの範囲はとっくに超えている。

これがダンジョンの戦いか。

パチンと肌を叩く音が聞こえた。

振り返ると、さっきまで蒼かったアヤメの顔に赤みが戻っている。

「壱野さん、横に跳んでください!」

「おうっ!」

俺が横に跳んだ。

直後――

「解放: 風強大弓(ウインドバリスタ) ! 三連!」

不可視の風の矢が三本も放たれた。

その風圧に、横に逃げたはずの俺も壁に押し付けられる。

そして――

「は?」

俺は思わず声をあげた。

三発の魔法の風の矢がオーガの身体に三つの穴を作っていた。

文字通り風穴だ。

オーバーキルすぎるその魔法に、俺は乾いた笑みを浮かべる。

「は、はは、思ったより弱いんですね」

アヤメはそう言って座り込んでいた。

「アヤメ、どうした?」

「緊張の糸が切れちゃいました」

「お疲れさん」

俺はそう言って、アヤメの手を握ると、彼女を立ち上がらせた。

オーガとの戦いのあと、姫は調査の終了を俺たちに打診してきた。

アヤメはいまので魔力をすべて使い切ってしまったらしい。

オーガの攻撃力を考えると、ミルクも一撃貰ったら身代わりの腕輪が砕けるダメージを負いそうなので、ここで調査を終えることにした。

十五階層までの調査という話だったが、それは一番深い場合の話で、十階層まで潜れば調査としては十分なのだと。

安全性をアピールするための動画配信なのに大怪我を負ったらむしろ今回の調査が失敗扱いになるので、安全を考慮しての姫の打診だった。

俺たちはそれを受け入れる。

もちろん、地上に戻るまでがダンジョン探索だ。最後まで気を抜かずに一階層を目指す。

そして、無事に出口付近に到着。

「これで調査も終わりね。視聴者のみんなも最後まで付き合ってくれてありがとう」

と姫が配信を見ている視聴者に向かって礼を言う。

〔アルファちゃんお疲れ〕

〔最後に、ザァコザァコって言ってもらっていいですか?〕

明石さん、なんてコメント通してるんですか。

姫が深いためいきをついて、

「私はメスガキじゃないわよ。何言わせようとしてるの? そういうの聞きたかったらコンセプトカフェにでもいきなさい」

と真摯に注意をする。

〔ガチ説教あざぁす〕

視聴者から感謝の言葉が。

なんか、うちの視聴者ってこんなんばっかりだよな。

「じゃあ、私たちの調査は終わり。政府から要望があれば、第二回、第三回と配信があるかもしれないからその時はよろしくね!」

と終わろうと思ったら、一階に待機していた自衛隊の人が一枚の紙を持って姫に渡す。

「ダンジョン局では新しいダンジョン情報や公式のダンジョン配信を日々更新しています。詳しくはダンジョン局の公式チャンネルの登録をお願いいたします――」

〔自衛隊からのカンペ提供〕

〔登録しました〕

〔ワカラセ系お嬢様が最後は国にワカラセラレタのか〕

とここで、配信終了した。

「ちょっとだけ面白かったな、ダンジョン配信」

「そうだね。でも、学校を休んでするものじゃないね」

「私もあんまりお母さんを心配させたくはないので、こういう緊急の仕事はこれっきりがいいです」

「付き合わせてごめんね。たぶん、私が前にちょっと防衛大臣とコンタクト取ったことが原因かもしれない」

姫が謝るけれど、違うんだ。

悪いのは全部、家でポ〇モン銀をやっているであろうダンポンなんだ。ポ〇モンみたいな見た目と名前をしてるダンポンなんだ。

あと、ちょっとだけ俺も悪いんだ。

その後、防衛省の役人さんと打ち合わせ。

配信クリスタルとドロップアイテムを全部引き渡し、俺たちの仕事は終了した。

もう昼の三時か。

ダンジョンの中で携帯食を食べたが、少し足りなかったので腹が減ってきた。

「ダンジョン内でも軽く食べたけれど、どこかでご飯食べに行く?」

「でも、晩御飯まであんまり時間ないですよ?」

「だったら、たこ焼き屋に行こうよ。泰良、たしか石切参道にたこ焼き屋さんあったよね?」

「石切大仏の下にあったと思うぞ……いや、あれは明石焼き屋だったか? あそこは昼までだった気がする」

「そっちじゃなくて、神社から近い方。あそこも明石焼き屋だけど、夕方までやってるはずだよ」

「明石焼きって食べたことがないのよね! 明石! 車の手配を」

「姫お嬢様。かしこまりました」

俺たちは五人で明石焼きを食べに行き石切神社の参道に。

初めての明石焼きに姫も満足しているようだった。

ついでに神社でお参りをして今後のダンジョン探索の成功をお祈り。祈亀という亀の置物を購入して亀のお腹の中に入れて池に沈め、最後にカワイイ白馬のおみくじを引いた。

おみくじの結果、姫とアヤメは中吉、ミルクは凶、そして俺は――

「どうせ大吉でしょ?」

「大吉よね?」

「大吉ですね」

大吉だった。