軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

若草山ダンジョン四十一階層から四十四階層までの移動

若草山ダンジョン四十一階。

相変わらず植物だらけの森のようなダンジョンだけれども、これでも植物系ダンジョンの中ではまだマシらしい。

ジャングルのような熱帯雨林をモチーフにしたダンジョンに行けば、自然に圧倒される。

ちなみに、その森を愛してダンジョンで何ヵ月もサバイバルする探索者もいるらしい。

よくそんな場所で眠れるなと思うかもしれないが、本物のジャングルと違って毒を持った小さな蜘蛛とかヒルとかいない分、むしろ本物のジャングルよりも楽にサバイバルできるのだとか。

少し休憩してから配信を始める。

[始まった!]

[待ってました!]

[チームメシア、こんにちはー!]

[いきなり同接10万人突破おめでとう!]

[前日告知の平日昼配信で10万人は凄い]

「こんにちは! 随分間が空いちゃったけど早速探索を始めるわよ。移動しながらみんなのコメント読むわね。あと激しい移動になるから設定を調整するか、音声だけで楽しんでね」

姫がそう警告を出す。

そうしないと、俺たちの激しい動きについてこられなくなった視聴者が画面酔いしてしまうからだ。

[既に設定済み]

[俺はVRモードで見る]

[VRモード設定済み]

[新しいVRモード]

[それ三半規管絶対タヒぬ奴<VRモード]

[みんな俺みたいに食事抜いてきたか?]

[吐くこと前提で草しか吐けん]

なんかバカなこと言ってる奴がいる。

VRモードはその名の通りVRゴーグルを使って疑似体験できる機能だ。

配信クリスタル対応のVRゴーグルをGDCグループが開発して売り出したと聞いてはいた。

確かセットで30万くらいとかなりお高めらしいが、売れ行きはいいらしい。

何人かはネタで言っているだけだろうが、本当にVRゴーグル付けてる奴はヤバイと思ったら直ぐに脱ぐように。

四人で移動を開始する。

もちろん、質問は読み上げて答える。

「えっと、なになに? 『初詣はどこに行きましたか?』だって」

「みんなで住吉大社に行ったな。あとは地元の石切神社も」

「はい。三が日過ぎて行きました」

どちらか一つにしようと思っていたんだが、結局両方に行った。

「関連して次の質問ね。『御神籤は引きましたか? 引いたなら何が出たか教えて下さい。ベータさんとデルタさんは聞かなくてもわかりますが』だって。ええ、御神籤ならもちろん引いたわよ。私は末吉ね」

「私は大吉でした」

「俺も大吉だった……それでミルクは……」

[大凶だよな]

[いや、大吉だったけど、実は悪いことしか書かれていないパターンだと思います]

[上げて落とすとか最悪だな]

[悪い大吉はないはず。普通に大凶に一票]

[でも、大凶って今が最も低くてこれからは上がるだけだから縁起がいいって話だろ?]

みんなが次々に予想を上げる。

そうだよな。

例年なら大凶を引くはずのミルク。

だが、いまのミルクは笑顔だ。

[デルタさんが笑ってる]

[まさか、大吉?]

[いや、デルタちゃんなら末吉でも大当たりで笑うでしょ]

[……俺、傘持ってきてないよ]

視聴者が焦ってる。

「私は白紙だったわ。神主さんが言うには、白は百の一本線が足りないから、九十九の幸せが舞い込んでくる大吉よりも幸運の当たりみたいなの」

それを言った途端、視聴者たちのコメントが察したモードに変わった。

[そ、そう。おめでとう、デルタちゃん]

[凄いな。俺もまだ引いたことない。白紙の御神籤]

[不運も一周回って幸運って本当にあるんだな]

[それって印刷ミ……おっと誰かが来たようだ]

うん、俺たちも何も言わなかったよ。

ミルクも実は内心でわかっているのかもしれないが、神主さんがそう言ったんだ。信じよう。

神主さんもなんか焦ってる感じがしたし、無料で引き直してもいいって言ってくれたけど。

「次の質問。これはアヤメに質問ね。『ゼンちゃんを召喚していませんが、ゼンちゃんは元気ですか?』だって」

式神のゼンについては召喚魔法という説明をしている。

「はい。ゼンちゃんとは意識を共有できますので、いまは空から私たちの移動先を誘導してくれています。こうして森の中でも迷うことなく移動できるのはゼンちゃんのお陰です」

アヤメが飛んでくる鳥の魔物を風の矢で射抜きながら言った。

形代も同時に使っているが、自律移動できるゼンの方が状況把握しやすい利点がある。

実はうちのパーティの縁の下の力持ち的存在だ。

「『アルファさん、新しいダンジョンはどうでしたか? 感想をお願いします』そういえば、昨日は配信も途中で終わっちゃったわね。とにかく広かったわ。階層の広さが普通の五倍くらいあるんじゃないかしら? 調査のための詳しい地図とかは後日作るそうだけど、たぶん大変な作業になるわね」

姫はどこか他人事のように言った。

途中倒した魔物の素材もかなり集まっていた。

やっぱり植物ダンジョンだから、果物や野菜も多く採れた。

姫がいくつか視聴者プレゼントすると言って応募方法を説明したときはかなり盛り上がっていたな。

視聴者から、俺は絶対に応募しないようにと念を押された。

言われなくても自分たちの抽選企画に応募しないよ。

という感じで気付けば四十四階層に。

エンペラートレントのいる四十五階層は目の前だ。

一度休憩をする。

安全地帯ではないが、気配で魔物の居場所はわかるので問題はない。

「質問コーナーはこれで終わりね。じゃあ、次の階層からエンペラートレント狩りをするわ。感想は随時受け付けてるからみんな一杯コメントしてね――」

[はーい!]

[ありがとー!]

[途中で拾ってた果物美味しそう。視聴者プレゼント楽しみ]

[エンペラートレント狩り楽しみ]

[さっきVRで視聴するって言ってた奴が全員いないんだが]

[うん、気付いてた]

[成仏しろよ]

……よくゲームとかラノベで完全没入型VRの話があるけど、本当に身体がレベルアップしない限り激しい動きができないんだよな――と俺は思ったのだった。