軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

謎の敵との第一ラウンド

【真実の鏡:鏡に映った者の真の姿が明らかになる】

これで映し出せば、その正体が明らかになる。

たとえ幽霊であっても、透明人間であっても関係ない。

真実の鏡を掲げた次の瞬間、視界に黒い何かが映った。

あれは、蛇?

見た目は京都ダンジョンの三十五階層で大量に倒した黒い蛇に似ているが、それより遥かに大きい。

そういえば、京都ダンジョンの蛇も処理できなくなった瘴気により生み出された魔物だって言っていた。

この蛇もそういう種類なのだろうか?

正体が明らかになった時点で、蛇の気配も俺に伝わってきた。

しかし、この蛇の持つ気配は不破さんが使った呪いの蛇、いや、それよりも――

「終末の獣」

ミルクが呟いた。

そうだ、アレに近いんだ。

俺が戦った終末の獣は白い蛇だった。

「あの蛇……まさか」

「牛蔵さん、知ってるんですか?」

「かつて富士山のダンジョンの前で私を襲った魔物に酷似している」

牛蔵さんを襲ったって、もしかして――呪いの蛇っ!?

「泰良っ!」

ミルクが装備していた八尺瓊勾玉をこっちに投げた。

俺はそれを首からかける。

「この首飾りがあれば呪いを防げます。牛蔵さんは下がってください!」

「わかった」

牛蔵さんが聖域シートの中に戻ろうとするが、先程の挑発の効果が続いているのか、それとも逃げる者を追う野生の本能か、奴が狙ったのは俺ではなく牛蔵さんだった。

「解放: 短距離転移(ショートワープ) 」

真実の鏡をインベントリに収納して牛蔵さんを庇うように転移した俺は、黒蛇を正面から迎え撃つ。

姿が見えているとはいえ、こいつはかなり速い。

だから――

基礎剣術其之壱。

「必中剣」

基礎剣術の一つ。

その命中精度は俺の剣技の中でも一番だ。

蛇を叩く。

だが、斬れない。

剣で斬ったのではなく、棒で叩いたような感じ。

だが、ラッキーパンチのお陰で、確実にダメージは与えているはずだ。

基礎剣術其之弐。

「燕返し」

下ろした剣の切っ先を変えて黒蛇を上空に飛ばす。

そして、落ちて来た蛇に対して、基礎剣術其之参。

「薙ぎ払い」

黒蛇を横に薙ぎ払おうとするが――

「なっ!?」

空中で急に軌道を変えた。

あれは、姫の使う天翔みたいなものか。

くっ、攻撃が外れてコンボが途切れた。

次の真っ向切りでトドメを刺す予定だったのに。

俺の攻撃を避けた蛇は後ろに飛び、こちらを恨めし気な目で見てくる。

ダメージはあるはずだが、まだ倒れないか。

とその時だった。

黒蛇が階段の方に向かう。

まさか、逃げるつもりか。

あんなの地上に逃げられたら厄介だ。

とその時、地上から魔物が降りて来た。

俺たちがテイムした魔物だ。

「よし、挟み撃ちだ!」

と俺が言った次の瞬間だった。

黒蛇が一瞬消えたかと思うと、テイムした火を吐く赤い蜥蜴の魔物の背後に現れ、後ろから呑み込んだ。

ドロップアイテムの赤い尻尾が落ちている。

黒蛇の気配が強くなった。

まさか、魔物を取り込んで回復、いや、パワーアップしているのか?

でも、魔物を倒しても死体は残らないから食べることはできない――いや、違う!

あの黒蛇が食べているのは魔物の肉ではなく、魔物が持っている瘴気そのものか。

「壱野くん、魔物たちを下がらせろ!」

牛蔵さんが言った。

「でも、あいつが地上に向かったら――」

と俺が言ったが、黒蛇はこちらを見ている。

「俺と戦う気満々ってところか」

そうか、こいつは俺を敵と見定め、勝負を挑もうとしているのか。

魔物たちがごたついている。

降りてこようとしている魔物と、俺の命令で戻ろうとしている魔物で渋滞状態だ。

できれば、魔物たちが地上に戻るまでいて欲しい。

魔物が階段に残っている状態だと、黒蛇は回復し放題だからな。

「騎士道精神を見せて、できれば魔物たちが地上に戻るまで第二ラウンドのゴングを鳴らすのは待って――」

と待ったをかけるが、人間の言葉を理解していないのか、騎士道精神を持ち合わせていないのか、黒蛇がこちらに向かって跳んできた。

剣で受ける。

と思ったときだった。

蛇が口を開けると炎を吐き出した。

「嘘だろっ!?」

俺は横に転がるように跳んで炎を躱す。

さっきまで炎を吐いたりしなかったのに。

まさか、食べた魔物の能力をコピーできるのか?

だとしたら、アヤメのラーニングみたいな力ってことか。

さっきの魔物の死骸もこいつの仕業か?

もしかしたら、さっきまで姿を消していたのも、こいつの能力ではなく別の魔物の能力なのかもしれない。

「泰良、危ないっ!」

「解放: 短距離転移(ショートワープ) 」

避けてバランスを崩したところに向かって襲ってくる黒蛇に噛みつかれそうになるが、すんでのところで転移し、黒蛇の背後から斬りかかる。

「私も――」

「この蛇の防御値だとミルクの銃は効かないっ! それに呪われたら厄介だ、絶対に聖域シートから出て来るな! 牛蔵さん、ミルクを頼みます!」

「わかった……君に任せる」

とはいえ、油断はできない。

さて、どうする?

ヒートアップは使うとして、影獣化は?

いや、光魔法は効いてないが、それでも闇属性っぽい相手だから、影獣化は避けよう。

殴って倒すときはついでにエナジードレインも使ってダメージを与えられるメリットもあるのだが、第六感的にそれは避けろって言ってるんだよな。

以前、呪いの蛇に使ったことはあるが、あの黒蛇は瘴気の塊みたいなもんだ。

八尺瓊勾玉を着けてるとはいえ、そのエネルギーを吸収したら絶対に身体に悪い。パンの焦げた部分だけを削って食べるよりも悪そうだ。

他にステータスを底上げできるスキルは――

「解放: 活力の蕾(ブーストオーラ) 」

ミルクが聞いたことのない魔法を唱えた。

力が漲ってくる

「ミルク、これは!?」

「救済措置のポイントを使って補助魔法のスキルを覚えたの。覚えたばかりだから使えるのこれだけなんだけど、ステータス全体を少し上昇させる効果があるよ」

「助かるっ!」

ミルクも覚えたいスキルがあっただろうに。

だが、ありがたい。

さて、第二ラウンド、本当に開始だ。