軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

見えない敵との戦い

あれ? 俺の嫌な予感どこにいった?

いや、でも嫌な予感はさっきからずっとしてるんだよな。

「あぁ、お前たち、俺の命令聞いてくれるか?」

魔物たちは頷いた。

もしかしたら、テイムしているはずの魔物に襲われたり、地上でテイムした魔物が自衛隊を蹂躙したりしているのではないかと悪い想像をしたが、そんなことはなかった。

俺の命令に従い、ダンジョンの奥に向かってもらう。

ただし、一階層より下には行かないように言っておく。

あまり下の階層に行きすぎて、奥にいる他の探索者に追いついてしまえば事情を知らない彼らがテイムしている魔物を襲うかもしれないからだ。

ただ、転移陣も使えないようなので、もしかしたら階段を上って戻って来るかもしれない。そうなったときのために、他の探索者に出くわしたら全力で逃げるようにとも伝えておく。

「泰良、変な感覚はまだしてるの?」

「ああ。牛蔵さんのところに行こう」

俺はミルクの手を握り、今度こそ魔法を使う。

「解放: 迷宮転移(ダンジョンワープ) 」

一階層の入り口に移動する。

そして扉を開けると、聖域シートの上に牛蔵さんが倒れていた。

「パパっ!」

ミルクが駆け寄る。

まさか、嫌な予感の原因はこれか!?

聖域の中だと魔物も入れないはずなのに、まさか魔物ではないなにかに――

と思ったら、牛蔵さんが上半身を起こして、ミルクに向かって笑みを浮かべた。

「ミルクか。少し疲れていたから横になっていた」

「もう、心配させないでよ」

疲れて寝ていただけか。

一安心する。

「壱野くん、君には助けられてばかりだな」

「当然のことをしているだけです。それに、牛蔵さんを越えるって約束をしているんですから、こんなところで怪我でもされたら困るんですよ」

「そうだったな。君のことは認めているが、それについてはまだまだ負けるわけにはいかないぞ」

「もう、パパったら」

笑い声が部屋の中にこだまする。

これで一安心だな。

とその時だった。

俺は剣を抜き、振った。

だが、手応えはない。

「泰良っ!?」

「ミルク、聖域シートの中に入れ! 何かいる!」

気配はほとんど感じない。

だが、俺の勘がそう告げている。

「魔法を――解放: 聖なる領域(サクレッドゾーン) 」

光がミルクを中心に広がる。

見えない相手が幽霊のような魔物だったら効果がある。

しかし――

「ミルクっ!」

牛蔵さんがミルクを引き寄せ聖域シートの中に引っ張った。

その時だった。

何かが弾けるような音がした。

聖域シートが作る結界に何かがぶつかったのだ。

やっぱり何かいるのは間違いない。

「泰良も中に!」

「いや、俺まで結界の中に入ったら、こいつは外に出て行くと思う。そうなったら対処できる人が誰もいない」

気配探知のスキルを全力で使う。

微かに、本当に微かにだが何かの気配がする。

正確な位置はわからない。

だいたいあっちにいるってことがわかるくらいか。

いまだっ!

俺は剣を振るった。

さっきも言ったように正確な位置はわからない。

だが、俺の勘がいまだと告げたのだ。

第六感スキルが早速役に立った。

だが――

「避けられたっ!?」

気配が遠のく。

くそっ。

「壱野くん! 敵が避けるということは、剣の効果があるということだ!」

牛蔵さんが言った。

そうか、プラスに考えればいい。

なら広範囲の攻撃をするか。

「双剣竜巻切り!」

二本の剣で竜巻を生み出す。

これなら――よし、当たった――

とその時、牛蔵さんが体当たりをしてきた。

一瞬理解ができなかったが、魔物の気配が俺のいた場所に。

「大丈夫か、壱野くん」

「はい……すみません、油断しました。牛蔵さんも気配探知を使えたんですね」

竜巻切りを使って敵に当たったと感じたとき、気配探知が疎かになった。

くそっ、敵が見えないのはやっぱり辛い。

何かいい方法はあるか?

透明人間の対策……そういえば漫画でもそういう透明な敵と戦う展開はよくある。

ド〇ゴンボールだったら、音を聞いたり、鼻血をぶっかけたりして対処したが、今回の敵、ただ透明なだけとは違う気がする。

敵の正体がわからない以上、トライアンドエラーで試すしかないのだが、一つのエラーが命取りになったら。

……いや、待てよ?

「そうか。あの手があった」

「何か思いついたのだね」

「はい。牛蔵さん、敵を引き付けていただくことはできますか?」

「引き受けよう。ミルクはそこから出るな」

牛蔵さんがミルクに注意を促しながら、仁王立ちで構える。

「スキル、挑発っ!」

牛蔵さんがスキルを発動させた。

挑発、兎束さんが使っていた魔物を引き寄せるスキルだ。

これなら見えない敵は牛蔵さんに集中する。

かなり危険な行為だが、牛蔵さんを信じよう。

俺は気配を感じ取ることに集中する。

牛蔵さんが見えない何かを殴ろうとする。

傍から見たらシャドーボクシングをしているようにしか見えないが、しかし俺は感じ取る。

そこだっ!

俺はインベントリからアイテムを取り出した。

真実の鏡。

相手の真の姿を暴き出すその鏡で――

「お前の本当の姿を俺の目の前に現せっ!」