軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

公園でいじめられていたのは――

「ありがとうございました」

俺は頭を下げて部屋を出る。

推薦入試の面接が終わった。

ダンジョンの探索者としての質問がほとんどだった。

在学中の探索者としての活動や、探索者として何を為したいか? など。

この辺りの質問は予想して対策してきたので、問題なく答えることができた。

合格は決まっていると閑さんが言っていたけれど、最低限、恥ずかしくない結果は残せただろう。

試験が終わり、大学の外に行くと父さんが車で迎えに来てくれていた。

「どうだった?」

「うん、ぼちぼち」

「そうか」

大学がほぼ合格間違いないことは父さんも知っているので、それ以上は聞いてこない。

車の助手席に乗り、シートベルトを締める。

エンジンとともにFMラジオの音楽がかかり、車がゆっくりと動き始める。

「泰良、免許は取らないのか?」

父さんがハンドルを握りながら尋ねる。

「一応、うちの高校は卒業までは免許禁止だから」

「そうだったか?」

「うん。大学に行ってから考える。会社の方でも教習所の費用を出してくれるらしいし」

今後、遠征することを考えると自分で車を運転できた方がいいかもしれない。

「明日から、また滋賀に行くのか?」

「うん。政府からの依頼だから断れないし。まぁ、危なくはないから大丈夫。家でやってることと基本一緒だし」

「そうか。あまり無茶はするなよ」

「しないって。俺が留守の間、トゥーナのこと頼むよ」

「ああ。トゥーナちゃんとミコトちゃんはいまでは娘みたいなものだからな」

「助かるよ」

俺はそう呟いた。

頼んだら、政府でも企業でも助けてくれると思うけれど、やっぱり一番信用できるのは家族だからな。

「飯は? もう食べたのか?」

「まだ食べてない――あ、そこのハンバーガー屋に寄ってもらっていい? ドライブスルーでいいから」

「あんまり食べかす落とすなよ」

「塩は落ちるかも」

とりあえず、俺はてりやきバーガーのセットで、父さんはアイスコーヒーを単品で注文する。

冬でもアイスコーヒーブラックなんだよな、父さんは。

「支払いはダンジョンペイで――」

「いや、カードで払うよ」

スマホで支払いの準備をしていると、父さんが早々にクレジットで決済を済ませてしまった。

「ごちそうさま」

「おう、しっかり食え。探索者は身体が資本だからな」

父さんがそう言って信号待ちの間にアイスコーヒーを飲み、俺は無言でハンバーガーを食べながら、窓の外を見る。

てりやきソースがうまい。

ポテトとコーラの中毒性がヤバイ。

くそっ、アヤメの弁当は美味しいし、ダンジョン素材で作った料理は至高の料理という感じがするのに、なんでファストフードの食べ物はこんなに身体を刺激するのだろう。

うまさのベクトルが違うんだろうな。

と食べながら窓の外を見ていると、公園で遊ぶ小学生らしき一団が目に入った。

何かを囲んで遊んでいる?

「父さん、止めてっ!」

「どうしたっ!?」

「いいから、早く!」

「待て、急に止まれない」

父さんがウインカーを出して、近くのコンビニの駐車場に車を入れる。

停車すると同時に俺はさっきの公園に走った。

「君たちっ!」

「あっ! メシアの人だ!」

「ガチ!? ベータさんっ!?」

「あの、僕ファンなんです! サインください!」

「う、うん。それよりそれ――」

子どもたちが囲って、蹴っていたそれ。

これが童話の世界だったら、いじめられていたのは亀で、俺は浦島太郎になっていただろう。

だが、いじめられていたのはカメではなく、スライムだった。

「泰良、どうしたんだ一体……それは?」

「スライムだ。君たち、これをどこで?」

「どこって、そこに」

そこは草むらの陰だった。

空になった猫缶が置いてある。

ご丁寧に、『野良猫にエサをあげないでください』と書かれた看板の前だ。

「よく変なばあちゃんが猫にエサをやってるんだ」

「僕たち、猫を見に来たんだけど、猫の代わりにそいつがいたんだ」

「だから、やっつけてたんです!」

事情はわかった。

俺は直ぐにダンジョン局に電話をするが、話し中で電話が繋がらない。

仕方ないので、直接やり取りをしたことがある園原さんの携帯電話に電話をした。

十コール程したところで、園原さんが出た。

「壱野さん、申し訳ありません。ただいま緊急事態で――」

「公園にスライムが出たんです」

「え、そっちにもスライムですかっ!?」

「そっちにも?」

「ああ。君だから言うけど、いまあちこちにスライムの目撃情報が来てるんだよ。お陰でこっちはパニックで――とにかく、詳しい住所を教えてください」

詳しい住所――ってここは――と思ったら、父さんが公園の住所と名前をスマホで調べて俺に見せてくれた。

俺はその場所を伝える。

「係の人をそっちに向かわせます。くれぐれも倒さずにそのまま見ていてください」

「わかりました」

通話が終わり、子どもたちには危ないからとその場を離れてもらう。

そして、とりあえずインベントリから適当に箱っぽいものを取り出し、その中に入れてその上に座った。

これで逃げられないだろう。

「SNSを見てるが、本当にスライムの目撃情報が上がってるな。川辺でスライムを見たとか、畑をスライムが荒らしてるとか。幸い怪我人は出ていないみたいだが」

「スライムは倒そうと思えば小学生でも倒せるよ」

何かの気配に気づいて振り返ると、野良猫が空になった猫缶を見て寂しそうに舐めていた。

ため息をつき、俺もSNSを見る。

幸いにも、スライム以外の魔物の目撃情報はいまのところ上がっていない。

だが、これってやっぱり瘴気が溢れそうになっている前兆だよな?

琵琶湖の黒のダンジョンによる瘴気の浄化作業、もうすぐ開始時刻になるはずだけど、思ったよりギリギリのようだ。

三十分後、ダンジョン局の職員がやってきて事情を説明。

スライムを回収していった。

そして、小学生たちにはサインを書き、車に戻った。

ポテトがしなしなになっていた。

明日から、琵琶湖ダンジョンで黒のダンジョン攻略のサポートを頑張らないといけないな。