軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

青木ガチ天使

世界のルールが変わったところで、実感はない。

結局、その設置アイテムが出現しないことにははじまらない。

「壱野さんは宝箱から何が出たんですか?」

最後の俺にアヤメが尋ねる。

「金のスライム40匹」

「そっちはミルク以上にいつも通りね」

「全部当たりは羨ましいよ」

ミルクがハワイ旅行引き換え券の入った封筒を抱えて言う。

「全部当たりだけど、大当たりが一つもないんだから、運がいいか悪いかわからないぞ」

レベルアップは嬉しいが、スキル玉やダンジョンルールブックの方が嬉しい。

「それでどうするの? 四人でレベル10ずつアップする?」

姫が尋ねた。

「そのことなんだが、水野さんのレベルを上げないか?」

「え? 私!?」

まさか自分の名前がここで出ると思っていなかった水野さんが驚いて言う。

金のスライムを魚篭に入れている間、ずっと考えていた。

この前、亀相手に苦戦したときもそうだが、今後強い敵と戦うには武器や防具の調達は必須。

だが、いまのままでは加工はできない。

それに、魔物の素材が死蔵されていく。

姫は外部の鍛冶師に依頼するようなことを言っていたが、ミルクの銃火器の作成や整備は水野さんにしかできない。

だったら、水野さんを強化したらどうかと思う。

「とりあえず、水野さんのパペットを借りて、レベルを上げてから一気に強くするのはどうだ?」

パペットをうまく使って、21、22階層くらいの魔物を倒し続けたら、水野さんのレベルを120くらいまでなら上げるのは容易だ。

「そうね。金のスライムも恵比寿の魚篭に入れてたら勝手に脱走したりしないでしょうし。真衣にレベルアップしてもらった方がよりいい武器が手に入るわね」

「いいのかな? 私だけそんな楽してレベル上げても」

「「「「楽してないでしょ」」」」

俺たちは声を揃えて言った。

水野さんがどれだけ働いているかは知っている。

PDで一日二十四時間以上魔物狩りをしている俺たちが言っても説得力はないが、絶対に楽はしていない。

「そういうわけで、青木や胡桃里さんには分け前は渡せないんだが、よかったら今回手に入れた武器やステータスの上がる装飾品をいくつか持って帰ってもいいぞ」

「本当かっ!?」

「え、いいんっすか? あたし、ただついて来ただけっすよ」

「いいわよ。要らない物は売るかこの後するビンゴ大会の景品になる予定だったし」

ビンゴ大会とかあるのか。

俺は参加予定はないが。

「じゃあ、俺はこの武人の槍貰っていいか?」

「あたしはこの技工士の腕輪が欲しいっす」

胡桃里さんが技工士の腕輪を装着し、青木が武人の槍を持つ。

『泰良、あの槍の詳細鑑定はした?』

『ああ、詳細鑑定したけど、特別な効果はなかったぞ』

アヤメの持っている大魔術師の武器のように偽装されている様子はなかった。

問題ない――って――

「青木、光ってるぞっ!?」

「え? なんだこれ!?」

どういうことだ、槍には不審な点はなかったはずだ。

俺は再度詳細鑑定を使う。

そして、気付いた。

槍には何の不審な点もなかった。

だが、槍の柄の部分に埋め込まれた宝石が魔道具だった。

まさか、そんなパターンがあるなんて。

光が収まって、そこにいたのは――

『……………………』

「なんだ? どうなってるんだ? どうしたんだ、みんななんでこっちを見てるんだ?」

「青木、なんだよな?」

「何言ってるんだよ、壱野」

うん、声は青木だ。

「青木、これ」

「なんだよ、牧野。鏡?」

青木がミルクの持っていた手鏡を見て、そして気付いた。

背中に白い翼が生えていて、髪が金色になり長くなり、そして女物の戦士の服を着ていることに。

「なんじゃこりゃ」

「一応聞くが、アレはあるよな?」

俺が尋ねると青木は自分の股に手をやり、

「あぁ、ある」

そこは安心した。

もしかしたら女になってしまったんじゃないかと思ったよ。

俺は再度宝石を鑑定する。

【エンジェルストーン:天使になることができる変身アイテム(※青木専用)】

そして、槍も、

「ワルキューレの槍:殲滅天使が邪を穿つために持っている槍(※変身中)」

と効果が変わっていた。

「青木、ステータスはどうなってるの?」

「えっと、うわ、そこそこ強くなってる。あと飛行スキルがついてる。えっと、変身解除はできるのか? お、解除できた」

青木が元の姿に戻った。

元に戻ったのはいいんだけど……これ、どうするんだ?

うん、まぁいいや。

どうせ、槍はパーティの中で俺にしか使えない。

そして、俺が天使になるなんて絶対に嫌だ。

だったら青木で別にいいや。

「青木、本当に似合ってるわね」

「女性の私たちより似合いそうです」

「天使って元々中性的な存在だから、彼にちょうどいいのね」

「あはは、私はあの姿になるのはちょっと嫌だな」

「あたしはちょっと興味あったっすけど、青木さんより美人になる自信は無いっすね」

「……ん」

女性陣は微妙な表情で青木を見ていた。

「青木、入手経路誤魔化してくれるなら配信で使ってもいいぞ。人気になることは間違いない」

「俺の求めていた人気探索者の姿と全然違うぞ……」

青木がげんなりした口調で言ったのだった。

「お宝の確認は終わったか? じゃあ、皆で宴会をしようぞ。泰良、めでたい席じゃし、白金の寿司折を出すのじゃ!」

ミコトがゲームをしながら、俺に白金の寿司折を要求した。

そして、全員で寿司折やバーベキューをしながらゲーム大会をして――

「楽しかったのですよ、お客様。また今度一緒に遊ぼうなのです」

「ああ、また遊ぼうな」

お宝ダンジョンのダンポンは再び卵の姿に変わった。

本当に、また遊ぼうな

尚、後日青木は配信で天使姿をお披露目して一躍世界中で人気者になり、響さんが苦悶の表情を浮かべることになるのだが、それはまた別の話。