軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

琵琶湖ダンジョン再び

滋賀県の琵琶湖ダンジョン近くの店で、俺たちは昼飯を食べていた。

ちゃんぽんの店だ。

ちゃんぽんと言ったら長崎ちゃんぽんだと思うが、愛媛の八幡浜ちゃんぽん、北海道の網走ちゃんぽんなど地元の人にとってはソウルフードと呼べるものが数多くあり、トゥーナも鳥取にはカレーちゃんぽんがあるって言っていた。

そして、ここ滋賀には近江ちゃんぽんというソウルフードがある。

「美味しいな、これ――」

途中で酢を入れると味が変わって美味しいらしいが、まだそこまでは行っていない。

「へぇ、泰良も見たんだ、スライム」

「ああ、子どもにいじめられていた」

「スライムだもんね」

ただのスライムだから人的被害はない。せいぜいペットの餌が盗まれたり畑が荒らされたくらいだ。

だが、それでも世間はパニックになっていた。

スライムとはいえ、魔物が地上に現れたのだ。富士山から魔物が溢れて自衛隊が苦戦を強いられたこともそうだが、海外で夏に魔物が溢れ、多くの犠牲者が出た事件が記憶に新しく、その予兆かと思われた。

政府も緊急の記者会見を行っていた。

これは暫くパニックが続くと思ったのだが、不思議な事に翌日には騒ぎは収束し、テレビでもスライムについて扱わず、SNSでもほとんど騒がれていない。

テレビだけだったら政府とスポンサーからの圧力かな? って思うが、SNSまでこうも騒ぎが収束するのは不思議な感じだ。

「ネットっていつもこんな感じよね? 富士山から魔物が溢れたときも、翌日くらいはネットで議論されたけど、直ぐに収束してたわ」

「そういえば、石舞台ダンジョンの事件の時もその日は騒ぎになったけど、直ぐに世間は収束したよね」

姫とミルクがそれぞれ言う。

万博公園ダンジョンの時もそんな感じだったっけ。

何故かダンジョン関係の不祥事についてはその日は騒ぎになるのに、直ぐに落ち着きを取り戻す。

万博公園ダンジョンと石舞台ダンジョンの事件があってから、一気に探索者志望者の数が減ったが、それも直ぐに元に戻った。

確かに妙な感じだよな。

「もしかしたら、呪禁師の仕業じゃないでしょうか?」

「呪禁師って、不破さんの?」

「いえ、不破さんに限った話じゃなくて、海外だとシャーマンとかそういう職業の人もそうですが、言葉に力を乗せることで噂を広めたり、逆に収束させたりする力があるって、お婆ちゃんに聞いたことがあります」

アヤメのお婆ちゃんって、陰陽術の?

うわぁ、いろんな企業が喉から手が出るほどに欲しい力だな。

金になりそうだ。

「そんな力があるのなら、いまの政党も支持率で悩むことはなさそうだけど」

「明治三年に発布した天社禁止令で政府と陰陽師が袂を分かったせいで、陰陽師やそれに関する技術が行政に介入することがなくなりましたからね。不破さんがどこに所属している呪禁師かはわかりませんが、現与党のために働くことはありませんよ」

アヤメが説明をする。

陰陽師や呪禁師と日本政府の間には俺たちにはわからない溝があるようだ。

「それで、黒のダンジョンの方は?」

「昨日の午後三時に開放したみたいよ。日本のトップランカーたちが魔物退治に参加してるわ。これで日本中の瘴気が黒のダンジョンに集まるから、昨日みたいなスライム騒ぎはなくなるわ。ただ、そのダンジョンから魔物が溢れる危険は拭いきれないでしょうけどね」

と話しながら食べていると、酢を使って味変する前に近江ちゃんぽんを食べきってしまった。

「おかわり頼みます? 替え玉もあるみたいですよ」

「いや、これから運動だからやめとく」

俺はそう言って水を飲んだ。

しっかり食べ終えた俺は、琵琶湖ダンジョンに向かった。

いまも低層階では西条さんの従魔が、中階層では妃さんや元ホワイトキーパーのメンバーが狩りを続けている。

彼らとは今日の夕食、一緒に食べることになっているので挨拶もせず、一気に四十一階層に転移した。

早速姫が分身を生み出す。

ってあれ?

「また分身の数増えてないか?」

「増えたわよ。いまは十二人出せるわ」

「前まで分身の数は九人だったから、分身だけで野球チームが作れるって思ってたが、十二人だと……サッカー? アメフト?」

「どっちも十一人だよね」

「十二人のスポーツってなにかあったっけ?」

「ドッヂボールの正式人数が十二人らしいですよ」

ドッヂボールに正式人数とかあったのか?

クラスで二つに分かれていた記憶しかない。

「じゃあ、姫は分身だけでドッヂボールチーム作れるな。全員回避特化とか最強チームじゃないか?」

『作らないわよ』

本体含め十三人の姫に言われた。

「じゃあ、私たちはもう行くわね」

分身Aがそう言って下の階層にいった。

「なにしてるんだ?」

「魔物をいっぱい狩るにはこれが一番でしょ。三人一組四チームで安全に戦える場所で分かれて戦ってもらうわ」

「やる気だな」

「当然よ。今回、私たちの狩りは魔物退治数の管理のためにDコインの提出が義務付けられているの。ここでしっかり狩って成果を示すことで、私たちが超一流の探索者であることを認めさせるわ!」

なんでも、ダンジョン局にはDコインを解析すると、倒した魔物の種類までわかる装置があり、それを持ち込んでいるらしい。

しっかり数を数え、どのくらいの魔物が減って、どれだけ瘴気が消費されたかも計測するらしい。

「世界一位を目指す姫にとっては通過点であると同時に、当然のことってことか」

もう一流だっていうのは認められていると思うけど、それでもまだ若いからと遠慮されているところもあるからな。

だから俺たちはできる範囲で仕事をしよう。

「こいつも使わないとな」

と言って俺はインベントリから一体のパペットを取り出した。

全身にトゲの生えたニードルエルダートレントの木材から作った水野さんの新作パペット。

名前はアビコくんだ。

以前の戦闘特化のパペットをさらに強化している。

もっとも、四十階層の敵と戦うにはいささか力不足だ。

なので、俺たちが弱らせた魔物にトドメを刺させることにする。

四時間ほど戦った。

念話で確認したところ、水野さんのレベルは4つ上がったらしい。

順調だな。

一階層に戻ると、入った時にはいなかった若い女性スタッフがいた。

「は、はじめまして。ダンジョン局大阪支部から派遣された御山です。天下無双のチーム 救世主(メシア) の皆さんですね」

「はい」

「皆さんの担当になりました。手に入れたDコインの確認をします。提出をお願いできますか?」

「わかったわ」

姫がアイテムボックスからDコインを出す。

次々に出て来たDコインが一つの山になっていた。

「え? ええと、こんなに!? しかも、高額のものばかり。皆さん、朝からダンジョンに潜っていたんですか?」

「いいえ、昼からよ。ちゃんと伝えていたと思うけど」

「ですよね……すみません。数が多くて驚いてしまいました。しかし、四人でこれほどとは」

「え? これは私だけの分よ」

姫がそう言うと、御山さんは顔をきょとんとさせた。

「姫が最初に出すなよ。お前が一番多いんだから」

俺がそう言って、残りのDコインをインベントリから取り出す。

姫の山より少し大きいくらいだ。

「これは残り三人の分です」

以前まで溜め込んでいたDコインはPDの中に置いて来たので、正真正銘、今日稼いだ分だけだ。

「え? こんなに!?」

「はい。すみません。明日からは朝から潜るので――あ、換金額の算定は四人均等でお願いします」

「は……い……?」

呆けている御山さんに後は任せ、俺たちはとりあえず夕食を食べるため、ホテルに向かった。

妃さん、姫と一緒に飯を食えること楽しみにしていたからな。

「これ、私一人で記録つけるの? 先輩がチーム救世主は四人しかいないから質の高いDコインはあっても数は集まらないから直ぐに終わるって言ってたのに?」

御山さんの声が聞こえた。

そちらについては手伝えないのでダンジョン局に応援を呼んでもらってください。