軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

突然変異トレントたち

「任せてください。この日のために、お婆ちゃんのところで修行を受けてきましたから」

とアヤメは言うと、鞄の中から大量の人の形をした紙を取り出したのだった。

形代だ。

ただ、前にこれを出したときは使えなかったはずだが。

「拙者を使役している間に陰陽師としての格が上がった。ヤツデの葉を媒介としているとはいえ、前鬼である拙者を使役しているのだからな。わかりやすくいえば、陰陽術に慣れたと言うべきか」

ゼンが現れて説明をする。

慣れたって――陰陽術って、ずっと使っていたら慣れるものなの?

微妙にサイズの合わない靴みたいなものなの?

と思っていたら、アヤメが形代を七枚飛ばした。

「ゼンちゃんも調べてきて。金色に輝くエルダートレントとか虹色に輝くエルダートレントがいたら教えて」

「わかり申した」

形代が飛んでいき、そしてゼンも飛んでいく。

姫の分身といい、広範囲索敵が得意すぎる。

速度は姫に劣るが、アヤメの場合は空から探せるのもいい。

「凄いな。これ、アヤメにも見えてるのか? ……アヤメ?」

「すみません、壱野さん。集中しているのでちょっと返事できません」

「あ、わかった」

陰陽師には慣れたけど、形代を使うのはまだ慣れていないみたい。

しかし――

「エルダートレントって、見た目はほんとうにただの木なんだな。気配探知がなかったら気付かないぞ」

俺は目の前の巨木を見る。

一見すると周囲となんらかわらない広葉樹だが、魔物の気配が木全体から伝わって来る。

俺が一歩近付くと、木の枝が動いて襲い掛かってきた。

剣でそれを薙ぎ払う――が、俺の足に突然木の根っこが纏わりついて来た。

なるほど――これで動きを封じるつもりか。

さらに根っこから体力を奪うつもりのようだ。

だが、これは悪手だ。

「エナジードレインっ!」

根っこを通じてエルダートレントから逆に体力を奪い返す。

エルダートレントの体力吸引と俺のエナジードレイン。

どっちが優れているかな?

「おっと逃げるなよ。ちょっと面白くなって――じゃなくてエナジードレインの熟練度上げに最適なんだ。付き合ってくれ」

木の根っこが俺の足から離れて地面に逃げようとしたが、俺はそれを右手で掴む。

襲ってくる木の枝は全て左手で持った剣で斬り払う。

そして、五分後、全ての枝が無くなったところでエルダートレントが力尽き、古トレント丸太とDコインを落として消えたところで、形代が戻ってきた。

ナイスタイミングだ。

「……壱野さん、少し変わったエルダートレントが見つかりました」

とアヤメが言って形代を鞄に入れる。

「それ使い捨てじゃないんだ。貴重な紙なの?」

「いえ、ただのコピー用紙です。ただ、一枚一枚作る時に力を込めていますので、作るのが面倒なんです。一枚作るのに一時間くらいかかりますね」

「それは貴重だ」

一枚たりとも無駄にできない。

ってあれ?

「なんか二枚少なくない? 五枚しか戻ってこなかったけど」

「えっと、空を飛んでいるところで鳥の魔物に餌と間違えられて食べられちゃいました」

二枚無駄になっていた。

そしてエルダートレントが見つかった場所に移動する。

「これは確かに普通のエルダートレントとは違うな」

一目瞭然だ。

普通のエルダートレントと違って、目の前のエルダートレントは……針葉樹だった。

というか松っぽい。

「……広葉樹が突然変異で針葉樹になるって、なんか変な感じだな」

「そうですね。でも、トレントの突然変異としてはメジャーな変化らしいですよ」

「そうなんだ」

とりあえず剣を抜いて、一気に斬り倒す。

針葉樹トレントがあっという間に倒れてアイテムを残した。

『トレント松脂:針葉樹となったトレントが残した松脂。様々な用途で使われる』

『トレント松かさ:トレントの種が入っているが植えてもトレントは生えてこない』

『トレント松茸:トレントに寄生していた最高級キノコ。その香りは特級品』

やっぱり松じゃねぇかっ!

とツッコミを入れたかったが、しかしそれより手に入れた松茸だ。

「アヤメ、松茸だ! しかも一気に五本も落としたぞ」

「はい! 香りがここまで漂ってきます」

匂いを嗅いでみるが、かなり香り豊かだ。

「松茸ご飯にして食べたいな」

「いいですね。秋の味覚です」

そうだよな。

秋といえば松茸ご飯もいいけど、もう一つ食べたいものがあった。

と考えていたら――

「ご主人様。珍しいエルダートレントを見つけたぞ」

とゼンが飛んできた。

「気を付けろ。かなり狂暴だ。俺も危うく刺さるところだった」

刺さる?

よくわからないが、ゼンに案内されたそこにいたエルダートレントは――なるほど、確かに普通のエルダートレントとは違う。

そして狂暴だった。

何しろ、出会いがしら、毬栗を投げてきたのだから。

「ちょうど松茸ご飯もいいけど、栗ご飯も食べたいなって思ってたんだよな」

「壱野さんの幸運のおかげですか。でも、松茸に栗って、若草山っていうより丹波篠山みたいですね」

「そうだな。あとは黒枝豆があったら完璧だ」

とりあえず、エルダートレントを倒してトレント栗とトレントうにをゲット……うに?

いや、どう見ても毬栗にしか見えないが。

投げてダメージを与える? これを持って投げる方がダメージを受ける気がする。

うーん、深く考えるのは辞めよう。

「しかし、突然変異を倒しても丸太が出ないと意味がないよな」

「そうですね」

アヤメがもう一度形代を飛ばして周囲の索敵をしてもらう。

その間、俺は一応普通のエルダートレントを倒してエルダートレントの丸太を集めておく。

そして――

「見つけました! これは凄いです!」

アヤメが見つけた。

そのエルダートレントとは――うん、これは凄い。

「これ、呪われてない?」

「なんか周囲の草とか枯れてますよね」

ムンクの叫びのような顔が浮かび上がった枯れ木のトレントだった。

と思ったら、トレントからイヤな声が聞こえてきた。

頭が痛くなる。

これ、状態異常か?

「呪いの歌ですね。いま、ラーニングで覚えました」

「呪い……アヤメは大丈夫なのか?」

「はい。私に掛けられている蛇の呪いに比べたら大したことがないので、私には効果がありません」

あぁ、アヤメは封じられているとはいえ蛇の呪いを掛けられている。

その呪いはミコトにより封じられている。

そのお陰で、並の呪いは通用しないらしい。

このままだとマズイな。

「アヤメ、頼む。倒してくれ」

「はい! 解放: 神竜巻(ゴッドトルネード) 」

アヤメの魔法によって生み出された竜巻が呪われたトレントをなぎ倒す。

少しマシになった。

低級の万能薬を飲むと完全に呪いが消えた。

ふぅ、スッキリした。

【暗黒トレントの丸太:呪われたトレントの丸太】

……これは水野さんには渡せないな。