軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

呪物を集める者

一時間程、突然変異のエルダートレントを倒し続けた。

松エルダートレント、栗エルダートレント、呪われたエルダートレントの他、蔦に巻き付かれたエルダートレント、岩を割って出てきたド根性エルダートレント、若木エルダートレントなどいろいろなタイプの相手を倒したが、水野さんの要望に沿うものは見つからない。

…… 古い(エルダー) トレントなのに、若木?

「うーん、弱ったな」

「PDで集めることはできないんでしょうか? あちらなら時間も気にせずに戦えますが」

「ダンポンに聞いたところ、可能なのは可能だけど、別の意味で面倒らしい」

「なんでですか?」

「俺が戦ってる魔物は突然変異――つまり元々いるエルダートレントの中から変異したものなんだよ。だから、ダンジョンができた直後に突然変異のエルダートレントはいないんだ。何度も人間がエルダートレントを倒したからこそ生まれるんだって」

過去にトレント狩りが流行った時期があった。

ボウガンを作るためだ。

ダンジョンの中には銃を持ち込めない。正確には銃に使う火薬を持ち込めない。

弓矢などは持ち込めるが、普通の弓矢で倒せるのはせいぜい五階層までの魔物くらい。圧倒的に矢の強度が足りないのだ。

その強度を上げる方法がないかと思ったとき、思いついたのはダンジョン内で採れる素材で弓矢を作ることだった。

ダンジョン内の素材で弓矢を作ると、その攻撃の威力に攻撃値が上乗せされることが判明した。

その後はより扱いやすく、そしてより強力なボウガンを作るために世界が動いた。

結果、素材として重宝されたのがトレントだった。

一時期ミルクも使っていた。

トレントでできたボウガンですら何百万円もする。

そして、金持ちの探索者は、高レベルの探索者にエルダートレント狩りを依頼した。

結果、エルダートレントのいるダンジョン――たとえば若草山ダンジョンではエルダートレント狩りが盛んになった。

そして、多くのエルダートレントが倒れた結果、突然変異のエルダートレントが生まれるようになった。

「四葉のクローバーは人間がよく通るような場所に出てくるようなものだってダンポンが言ってたよ」

「つまり、PDでエルダートレントの変異種を倒すには、みんなで大量のエルダートレントを倒し続ける必要があるってことですか?」

「そうなるね」

とはいえ、形代を使って探し回ってもらっているのに見つからないってことはこの場所に凄い変異種はいないのかもしれない。

見つからないものを延々と探すのもダメだな。

「そろそろ帰ろうか――ん?」

言いかけた時、突然魔物の気配が現れた。

ダンポンの作った通常のダンジョンの魔物の数は一定数以上には増えない。

そして、倒せば一定の時間を置いて新しく現れるので絶滅することはない。

俺たちが倒した分のエルダートレントが生まれたのだろう。

「壱野さん、行きましょう!」

「え? どうしたの、急に」

「だって、これまで私たちが倒して来た突然変異のエルダートレントは元々この階層にいたエルダートレントです。だから、壱野さんの幸運値が介入する要素はありませんでした。でも、これから新しく現れるエルダートレントってことは、壱野さんの幸運値が関わってくるんじゃないでしょうか。少なくとも変異種であることは絶対です」

「いやいや、さすがに俺の幸運値はそこまで万能じゃ――」

全身が岩のような樹皮に覆われたエルダートレントがいた。

うん、わかってた。

むしろ、黄金色に輝くエルダートレントとかじゃなくてよかったと思う。

とりあえず倒――堅っ!?

めっちゃ堅いな、こいつ。

なんとか倒せたが、ラッキーパンチによる防御値貫通があったお陰で攻撃が通ったが、それがなかったら逆に剣が刃こぼれしてたぞ。

【エルダートレントの丸太(岩):とても堅いエルダートレントの丸太】

【エルダートレントの枝(岩):とても堅いエルダートレントの枝】

うん、これなら水野さんも満足できるだろう。

そう思っていたら――また別の気配を感じた。

「またエルダートレントですか?」

「いや、人の気配だ」

21階層――レベル100の探索者なら日本に何百人もいる。

若草山ダンジョンは大阪から遠征に来る人もいるだろうし、実際20階層に来るまでも15階層と18階層で探索者を見かけた。

ただ、なんかむず痒いんだよな。

そしてその気配は真っすぐこちらに近付いてきた。

和服を着て下駄を履いた、灰色の髪の薄気味悪い男か。

灰色の髪――そんな覚醒者の色はあっただろうか?

「呪法の気配を感じて来たが、もう祓われた――なるほど」

男は挨拶をせずにアヤメを見て言う。

「陰陽師か」

アヤメを見て男が言った。

形代もゼンもいないのに、アヤメを一目で陰陽師だって見抜いたのか。

正確には陰陽術を教えてもらっただけで陰陽師じゃないんだけど。

「あの、あなたは――」

「しかし蛇の呪いに狐の守護」

「――っ!?」

アヤメの問いに答えず、だが一目でアヤメの呪いとミコトの封印を見抜いた?

こいつも陰陽師なのか?

「あなたは誰ですか?」

「面白いが、この呪いを引き剥がすのは面倒だ」

「――っ!? それってどういうことですか」

呪いを引き剥がすって、アヤメの呪いを消すことができるのか。

「無駄骨だったな。次の呪物を捜しに行くか」

「ちょっと。俺の話を――」

と男の肩を掴もうとしたら、突然その姿が消えた。

転移魔法?

それも無詠唱で!?

「壱野さん。今の人は一体」

「わからない。ただ、呪物を捜しに行くって言っていた。もしかして、突然変異の呪われたエルダートレント目当てだったのかもしれない」

呪われたものを集めるって、まともな奴とは思えない。

一体、何者なんだ?