軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

鉄化したダンプル

ダンプルの鉄の像は何の気配もしない。

だが、青木のラージマッピングの地図には人がいることを示しているという。

石化状態だろうか?

石化したら一時間もしないうちに内臓まで石になって死ぬ。

でも、これは鉄だ。

鉄に似た金属かもしれないが、とにかく石ではない。

「ア〇トロンかもしれないな。鉄になって外敵から身を守ったのかも」

青木がそんな予想を述べる。

ア〇トロンというのは、とあるゲームの、自らの身体を鉄に変え、全く動けなくなる代わりに外敵からの攻撃を完全に防ぐことができる呪文らしい。

身体を鉄に変えると言われたら、鈴原の 鋼鉄肉体(メタルボディー) を思い出すが、それとは違うんだよな。

「とりあえず、万能薬をぶっかけてみるか」

インベントリから万能薬を取り出してダンプルにぶっかける。

しかし、元に戻らない。

トレジャーボックスの中に入っていた低ランクの万能薬とはいえ、石化くらいなら治療できるんだが、石化よりもヤバイ状態異常なのか?

「とりあえず持って帰るか」

インベントリに収納――できない。アイテムじゃないから当然か。

だったらアイテムバッグ――にも入らない。生物は中に入れることができない。

つまり、このダンプルはまだ生きているということだ。

だったら、雀の大きな葛籠に……も入らない?

魔物じゃないからか?

持って帰るしかないのか?

重い。

いまはステータスの補助があるからなんとかなるが、地上に戻ってステータス補正がほとんど失われた状態でこいつを持って帰るのが大変そうだ。

ダンプルがダンベルになってるんじゃねぇよ。

とりあえず、適当な布に包んで背負う。

迷宮転移(ダンジョンワープ) で21階層に移動し、そこから転移魔法陣で1階層に。

そして外に出た途端、ステータス補正が無くなりどっと重さを感じる。

30キロくらいあるんじゃないか?

熱で少し溶けたボウリングの球みたいな形してるんだから、14ポンド(約6.4キロ)くらいにしてくれ――肩が捥げる。

着替えを済ませ、タクシーを呼んで家に帰る。

「じゃあな、壱野、牧野。ダンプルのことは任せた。また三人でダンジョンに行こうな」

と青木と別れ、

「バイバイ、泰良。何かわかったら連絡して」

とミルクと別れ、ようやく自宅に。

布に包んだダンプルを持って庭に直行。

ダンポンに見せるためにPDの中に――持って入れるのか?

PDの中に入る事ができる条件は、俺、もしくは俺と結婚しているパートナーだ。

試してみたが、動物であるシロ、同じ家に住んでいるトゥーナは中に入る事ができなかった。

例外として、クロだけは名もなきダークネスウルフだったころから入る事ができたが、ダンプルはまだ試したことがない。

足を一歩踏み入れる。

俺は入れる。

ダンプルは?

お、連れて入ることができそうだ。

「お前、まさかPDの中に入るために鉄化したんじゃないだろうな?」

と声を掛けるも、無反応だ。

まぁ、ダンプルならそこまで手の込んだことをしなくてもPDは普段から常設してあるんだから、勝手に入ろうと思ったら入れるんだよな。

ダンプルを持ってPDの中に入る。

「ダンポン、いるか? 見せたいものがあるんだ」

「おかえりなのです! 今日のお土産はなんなのです? 一度大阪名物の雷おこしってお菓子を食べてみたいのです」

「お土産じゃないよ。それと雷おこしは東京名物で、大阪名物は粟おこしとか岩おこしだ」

とツッコミを入れて布を外してダンプルを見せる。

「これは――岩じゃなくて鉄……じゃなくてダンプルなのです!? え? どうしたのですか?」

「ダンジョン学園ダンジョンの22階層で拾った。一応生きているみたいだが、どうなってるんだ? お前に治せる?」

「んー、これは鉄化のスキルなのですよ。ダンプルが使ったスキルなので、解除も自分でできるはずなのです。逆に言えば 使った本人(ダンプル) 以外には解除できないのです」

「え? じゃあこいつ、死んだふりしてるってこと?」

「んー、それにしては……ちょっと調べてみるのですよ。一週間以内には結果が出ると思うのです」

ダンポンはそう言って念動力でダンプルを持ち上げて奥の部屋に運ぶ。

「俺がここにいた方がいいんじゃないか? 俺がいたらPDの時間の流れ的に外への影響が少ないだろ?」

「泰良がいないときでもやろうと思ったら時間の流れを100倍遅くすることはできるのです。必要ないからやらないだけなのですよ。ただ、仲間と連絡を取ったりするときは時間の流れを戻す必要があるので、やっぱり時間がかかるのです」

そうなのか。

俺が居る時でも普通に仲間と連絡を取っていた気がするが、特別な処理でもしていたのだろうか?

まぁ、ダンプルのことはダンポンに任せるか。

いくらライバルだからって、溶鉱炉にぶち込んで溶かしたりはしないだろう。

翌日。

青木にはダンプルのことはしかるべき人に預けたことを伝えた。

「あの、このことは他の人には言わないでくれ」

「あたりまえだろ? 他の人に知られたくないからダンプルは俺に画像を送ってきたみたいだし。その信頼を裏切るわけにはいかないだろ」

と青木が話題を変える。

「それより! 泰良、昨日のダンジョン新聞見たかよっ!?」

「見た見てない以前にダンジョン新聞の単語を俺は知らない」

「ダンジョン局ホームページのお知らせ記事のことだよ。スキルを覚えるスキル玉が発見されたんだ。そのことを知っていたらなぁ」

と青木が悔しがる。

あぁ、そのことか。

それなら俺も見た。

ネット掲示板もディスコも大騒ぎだった。

特に、これまでダンジョンドロップを手に入れて噛んで食べていた連中は大騒ぎだ。

詳しい検証についてはダンジョン局と月見里研究所が合同で行うことになったと記事にあった。

「でも、お前、飴は最後まで舐める派だろ? 子どもの頃に虫歯になるのが怖いって泣いて舐めてたじゃないか」

「いつの話してるんだよ! まぁ、最後まで舐める派だし、スキルを覚えたことないけど。ほら、ダンジョンドロップをネットで買い占めて舐められたじゃないか。昨日見たらネットオークションに出回ってるダンジョンドロップは全て即決価格で完売してたぞ」

知ってる。

発表前にダンジョン局が買い占めた。

放課後、スキル玉がないか調べに行かないといけない。

あと、超激レア缶の開封もしないとな。

「忙しくなるな」

「本当だよな。昨日響さんと連絡を取って、今度、ダンジョンドロップを舐めてスキルを覚えるまで帰れません企画をしようって思ってな」

「そっか。まぁ、頑張れ。たぶん覚えられないと思うけど。ちゃんと歯磨きしろよ」

「わかってるよ。まぁ、二日くらいやって無理なら諦める。あと、言われなくても歯は大事にするよ」

と青木が白い歯を見せて言った。

……響さん、前に会った時、少し様子がおかしかったけど、青木と泊まりって大丈夫なのか?

心配だな。