軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

派手な戦いの舞台裏

ヘリに乗っていても凄まじい戦闘音が聞こえてくる。

緊張してきた。

「本当に大丈夫なの?」

「これは武者震いだ」

「そう、怖いのね」

俺の言葉を姫は信用してくれない。さっきは信じてくれたのに。

まぁ、武者震いってのは嘘で、本当は怖いが。

「一度降ろすと迎えには行けないわよ」

「大丈夫だ。いざとなったら逃げる手段は確保している」

「……そっちは本当のようね。日本国民を代表して、あなたの勇気に感謝するわ。って、私みたいな見た目の 娘(こ) が日本代表って相応しくないかもだけど」

「見た目小学生だもんな」

「日本人っぽくないって言ってるのよっ!」

姫はため息をつき、そしてとても優しい笑みを浮かべる。

「アヤメもさっきのミルクって子も、あなたが死ぬことを望んでないわ。たとえ百万人の命が救われてもあなたが死ねば絶対悲しむ。だから、逃げる手段があるというのなら、本当に実行して」

「逃げ足には自信があるぞ」

「俊敏値250以上で回避型タンクを目指してる私にそれを言うの?」

姫の返しに、俺も笑みが零れる。

本当にこいつには世話になりっぱなしだ。

いっぱい作ってしまった借りは、ダンジョンで返さないとな。

死ねない理由がまたもう一つできた。

絶対に生きて帰る。

次の瞬間、さっきまで聞こえていた戦闘音がピタリと止んだ。

先ほどの姫の交渉のお陰だろう。

ヘリが降下を始め、道路の真ん中に着地した。

扉が開いた。

俺はヘリから降りる。

振り返り、姫と視線があった。

お互い頷き合う。

挨拶はヘリの中で済ませた。

ヘリは飛び立って行く。

もう後戻りはできない。

俺はさっそく準備に取り掛かる。

PDを生成した。

目の前に階段が現れる。

そして、俺はその階段の中に一歩足を踏み入れ、魔法を放った。

「解放: 地獄の業火(ヘルファイア) 」

炎が飛んでいったと思うと巨大な火柱が上がった

これが地獄の始まりの合図だ。

※ ~side 姫~ ※

上空のヘリから、押野姫は火柱が上がるのを見た。

(あれが泰良の魔法……凄い、本当に使えるなんて)

双眼鏡で見る。

さっきまで自衛隊も歯が立たなかった魔物の群れの、そのほんの一部が確かに削れた。

イビルオーガを倒したというのも頷ける威力だ。

(この瞬間――彼は世界で最も注目される探索者になったわね)

マスコミのヘリは遠ざけた。

しかし、離れていてもカメラで撮影できるほどの火柱だ。

わかる人にはあれが魔法の炎だと理解できるだろう。

魔法はダンジョンの外で使うことはできない。

ステータスの効果はダンジョンの外では著しく減衰する。

泰良はこの瞬間、その常識を覆した。

きっと、世界は彼を放っておかない。

その方法を求めようとする。

そして、その方法が明らかになったとき、探索者は兵器に生まれ変わる。

この魔物との戦いで、人間は近代兵器の脆さを痛感したはずだ。

そして、その代替品になるのが探索者。

銃弾をくらっても死なない人間。

ミサイルより強力な魔法を放つ人間。

(お金も技術力も必要のない最強兵器なんて――人の歴史を冒涜しているとしか思えない。それに、それがきっかけで戦争になったら――)

泰良はきっと悔やむだろう。

悲しむだろう。

それだけはあってはならない。

必ず、泰良の秘密は守らなければならない。

もう一度火柱が上がった。

先ほどの火柱が上がってから、一分少々しか時間が経過していない。

(存分に暴れなさい、泰良。あとのことは私がなんとかしてあげる)

姫はそう誓い、彼の無事を祈った。

※ side 泰良 ※

地獄の業火(ヘルファイア) を使った直後、俺はPDの中に入った。

魔力を回復するためだ。

俺の魔力が完全回復するまでの時間は約2時間、120分かかる。

体力が万全で、かつ激しい運動をしなかったらの場合だ。

PDの中だと地上の1/100しか時間が経過しないから、実質1分くらいで次の 地獄の業火(ヘルファイア) が撃てる。

「ってことになってるんだ」

と俺はダンポンに説明をする。

「無茶をするのですね……ダンジョンに片足を突っ込んだ状態で魔法を使えるなんていつの間に検証してたのです?」

「ははは、ぶっつけ本番に決まってるだろ! それで、やっぱり無茶なのか?」

「魔物次第なのですよ。炎属性の魔物がいたら対処できないのです」

「そっちはな……テレビの放送を見る限り、獣系の魔物が多かったから大丈夫だと思うが」

炎を完全に無効化する炎竜や火の精霊などが現れたら、それこそお手上げだ。

ダンジョンの中に引きこもって時間が経過するのを待つしかない。

「それと、もう一つ一番重大な問題を泰良は忘れているのです」

「重大な問題?」

「食糧、足りるのです? 魔力を回復させる間は通常以上にエネルギーを消費するからいっぱい食べないといけないのですよ?」

「あっ」

そうか。

食糧……うん、食糧の問題があった。

食べられるものといったら、キノコとドロップくらいだが、サバイバルにおいて重要なのは食糧より水の確保だという。

キノコの八割は水分だっていうから、これを食べ続ければ水不足は解決する。

しかし、生でキノコを食べ続けるのはさすがに。

それに、キノコにはカロリーがほとんどない。

「そうだ、D缶だ! 俺の幸運値を持ってすれば、水の入ったペットボトルや水の出る水筒、カ〇リーメイトなんかが出るはずだ!」

今すぐ開けられる缶は3000以上あると言ったが、湯煎をするとか、花の種を供えるとか現時点では開封不可な物も多い。

だが、それでも一割の300缶以上は現時点で開けることができる。

決まった文言を唱えるとか、人肌で三分温めるとかそういう条件の缶だ。

そして、きっとその中に求めているアイテムがあるはず。

六時間が経過した。

「解放: 地獄の業火(ヘルファイア) 」

四発目の魔法を放つ。

火柱が上がるのを確認する前にPDに戻る。

時間の節約を考えると、一秒でも早くPDの中に入った方がいいと思った。

きっとこれを見ている自衛隊のみんなは、俺がド派手に連続で魔法を放っているように見えるのだろうな。

実際は二時間に一発で、あとは時間を潰すだけという暇な生活なのに。

その間、ひたすらD缶を開ける。

「よし、開いた……って、青の魔石か」

売れば500万円にもなる魔石だが、今は必要ない。

「次の開封条件は――ダンポン、この上に載ってくれ」

「はいなのです」

「よし、開いた! ダンポンに踏まれるってなんだよ」

中身は――よし、マシュマロ来た!

詳細鑑定しても普通のマシュマロの成分表示しか出ない。

コンビニとかスーパーで100円くらいで売ってる奴だ。

俺はそれを食べる。

うん、うまい。

しかし、空腹は収まらない。

「魔法ってこんなに腹が減るもんだったか?」

「魔法もあるのですが、問題はレベルだと思うのです」

「レベル?」

そう言えば確認してないな。

魔力が満タンになったときは感覚でわかるので、敢えてステータスで確認していなかった。

あれだけド派手に魔物を倒しているんだ。

レベル28になっているかもしれない。

――――――――――――――――――

壱野泰良:レベル30

換金額:75518D(ランキング:9k-10k〔JPN])

体力:450/450

魔力:3/170

攻撃:167(+16)

防御:161

技術:148

俊敏:144

幸運:301

スキル:PD生成 気配探知 基礎剣術 簡易調合

詳細鑑定 獄炎魔法 インベントリ 怪力

投石 火魔法

――――――――――――――――――

レベル30になっていた。

幸運値が300を突破した。

それと、火魔法が生えていた。

ちなみに、投石ってのは、10メートル離れた場所から魔石を投げて当てて開いたD缶の中に入っていたスキル玉で覚えたスキルなので、レベルとは関係がない。

「ちょっと早い……か? いくら敵が強いっていってもレベルが一気に3も上がらないだろ」

「そりゃ、レベル50相当の魔物をいっぱい倒しているですからね。レベル差で経験値ボーナスも盛り盛りなのですよ」

「レベル差で経験値ボーナスって付くの?」

イビルオーガを倒したときも一気にレベルが上がったが、それはてっきりイビルオーガの経験値が通常より多いからだと思っていた。

現時点で魔物の群れとは最低レベル20以上。

レベル20差とか、安全マージンの設定のない国でもまず行われないだろうしな。

「一気にレベルが上がるとお腹が空くのです。そしてそれはレベルが高いほど顕著に現れるのです」

「そういうものなのか……」

火魔法っていうのは、うん、理解した。

獄炎魔法は 地獄の業火(ヘルファイア) しか使えないが、魔力の消費に応じていくつかの種類が使えるらしい。

使い続けていけば熟練度ってのが上がり、使える魔法の種類も増えて、魔力も増えるって感じか。

そういや、アヤメも何種類か風魔法を使っていたな。

マシュマロを食べながら俺は考える。

って、もうなくなった。

そろそろ喉が渇いてきたな。

次は飲み物が欲しい。

「D缶、開けっ!」

俺の剣で缶をトントンと叩く。

出てきたのは砥石だった。

ただの砥石で、特別な効果はない。

俺の剣が切れ味悪すぎるから、いい加減に研げっていいたいのだろうか?

剣を砥石で研いでいいのかは知らないし、ちゃんとした研ぎ方もしらない。

それに、欲しいのは水と食べ物だ。

いい加減に気付いていたが、どうやら缶の開封条件と中身には因果関係があるらしい。

まぁ、鍋で温めたらホカホカのコーンスープが完成していたときからなんとなく気付いていたが。

てことは、水が入っているっぽい条件の缶を開ければいいんじゃないかとも思ったが、それがわかれば苦労しない。

自動販売機に入れるとか、グラスに入れるとかわかりやすい条件のものはないだろうか?

と思いながら片っ端から缶を開けていたらまた時間になった。

「行ってくる」

俺は階段から上がって魔法を放とうとする。

すると、目の前に黒い狼の魔物が迫ってきていた。

「っ!? 燕返し」

咄嗟に身体が動き、ウルフを上空に切り上げ、

「解放: 地獄の業火(ヘルファイア) 」

と上空のウルフに魔法を放つ。

距離が近いと思ったときには俺は爆風に巻き込まれ、階段の下に落ちていた。

さすがに死ぬかと思っ……嘘だろ?

ぼーっとしている暇はなかった。

俺は立ち上がると、即座に構えを取る。

さっきの狼がPDの中に入ってきていたのだ。

どうなってるんだ? 俺専用ダンジョンじゃないのかよっ⁉