軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

隠し部屋の宝箱

地雷原の中でダンスを踊るのっていうのはこういう気分なのだろうか?

ロックタートルへの中途半端な一撃は爆発を引き起こす原因になる。特に防御値が高いため、姫の攻撃はあくまで牽制として行う。

メインは俺、ミルク、アヤメの攻撃になるのだが、一番危険な位置にいるのは姫だ。

分身は全員、次の階層を探しているので、牽制を行っているのは姫の本体だ。

俺が一撃を誤れば、爆発を引き起こして姫を巻き込んでしまうと思うと、剣の柄を握る手に力がこもる。

銃声が聞こえた。

ミルクの放った弾が命中したロックタートルが一撃で倒れる――が気配は残っている。

死んでいない?

「ロックタートルを眠らせたよ! 眠ってるロックタートルは爆発しないからそっちは姫が攻撃して!」

睡眠石の銃弾を使ったのか。

これを見ていたリスナーたちは、デルタの新しいスキルだって騒いでいた。

状態異常石については、公表していない。

人間相手にも効果があるので、悪用し放題だから、ダンジョン局に報告したが、そこで情報がストップしている。

配信中も、睡眠石や麻痺石、猛毒石、鈍重石についてはスキルということで誤魔化して、魅了石については極力使用を控えるようにと言われている。

精神操作系のスキルや魔道具には厳しい制限が課されるらしい。

「ありがとう、ミルク!」

姫が早速攻撃を仕掛ける。

睡眠石による睡眠の状態異常は、ちょっとやそっとじゃ起きないからな。

とその時、剣を叩きこむ角度を間違えた。

剣が岩の甲羅の上を滑り、表面を削っただけで亀の本体に剣が届かない。

それが引き金となり――大爆発を巻き起こし、次々にロックタートルが爆発した。

視界が爆炎に覆われ、全身に甲羅の破片が当たる。

身体全身に痛みが広がる。

俺が受けたダメージに加え、姫の受けたダメージを肩代わりしているせいだ。

「泰良、大丈夫?」

姫が心配そうに言う。

「あぁ……少し痛かった。姫が爆発の時に咄嗟に後ろに飛びのいてダメージを減らしてくれてなかったらもっとヤバかったかもしれない。それでも体力五パーセントくらい削られたかな。ミルク、ポーションをかけてくれ」

「うん」

ミルクが銃の尖端からポーションを水鉄砲のようにぶっかける。

しかし、お陰でロックタートルはいなくなった。

〔放送事故かと思ったが無事でよかった〕

〔むしろあれだけの爆発でなんで5%しか体力削られてないんだ?〕

〔あれを見たら、リア充(ベータ)爆発しろってもう言えない〕

〔リア充爆発じゃなくて、リアル爆発だったもんな〕

俺、リスナーたちからリア充爆発しろって普段言われてるの?

カワイイ女の子三人の中に男一人いたら仕方ないかもしれないが、今の状態でそんな風に思われているのなら、三人と結婚していることがバレたらどうなるのか?

あの時、牛蔵さんから向けられた殺意を今度は日本中から浴びることになるかもしれない。

落ちているのはDコインと亀の甲羅と……ん? 甲羅の中に肉もある?

あとは卵の殻? これは水野さんに渡して、捕獲玉にしてもらおう。

〔ロックタートルの肉は珍味。スープにするとおいしいらしい〕

〔亀、スープ……うっ、頭が……〕

〔ウミガメじゃないからセーフだろ〕

〔甲羅も薬の材料になるから高値で買い取られる。ダンジョン産素材の漢方はC国でめっちゃ高く売られてる〕

リスナーからのコメントを見ながら素材を集める。

さて、まだ魔物の気配はある。

「これ、泰良が一人でつっこんで片っ端から爆発させていったほうが楽な気がするよ」

「俺もそう思った」

ミルクが言う。

火鼠の外套のお陰で火耐性はばっちりだし、岩の甲羅のダメージは土属性のダメージらしいが、対応力のお陰でそちらのダメージも軽減されている。

その後、ロックタートルの群れの中を走り回り、爆発させていく様子が切り抜きで配信され、無敵スーツを着たリアルボンバーマンとして世界中に拡散されることになった。

その後も岩山の探索を続ける。

この階層には山羊の魔物もいる。

名前は疾風の山羊。

目が合うや否や、群れで突撃してきた。

かなり速い。

「これよ。こういう魔物がいいのよ」

と姫が山羊以上の速度で戦っていた。

石神やロックタートルのような防御特化の魔物ばかりだったからストレスが溜まっていたのかもしれない。

ん? この気配は――

「泰良、どうしたの?」

「いや、この下にな――」

自分の身体よりも大きな岩を持ち上げて横にずらすと、大きな空洞を発見した。

「隠し空間?」

「ああ。この先に宝箱の気配がする。姫――」

山羊の群れと戯れている姫に声をかけるが、

「私は戦ってるから行ってきていいわよ」

と戦いに集中したいらしい。

姫の様子を見ると、一度もダメージを食らっている様子はないし、22階層くらいの魔物なら仮に攻撃を受けても問題はないだろう。

疾風の山羊の相手は姫に任せ、俺たちは岩山の穴の中に入っていく。

俺が持ってる予備の配信用クリスタルを起動させた。

きっと、二画面で動画が配信されていることだろう。

そして、姫はせっかくの見せ場だが、ワイプになっている可能性が高い。

〔隠し通路の宝箱はロマン〕

〔わかる。レア宝箱もあるかもな〕

〔How did you know there was a chest?〕

〔He has……気配探知スキルって英語でなんて言うんだ?〕

〔カレーハケハイタンチ、モテルカラワカール〕

〔全部日本語のままだ〕

〔Oh Great!〕

〔なんで通じてるんだよ〕

相変わらずコメントがバカだ。

英語圏の人も動画を見てるのだろうか?

「……いま、カレーの話してなかった?」

「変なところに食いつくな。してないしてない」

それより、

「レア宝箱ってなんだ?」

聞いたことのない言葉だな。

〔隠し部屋にあるレアな宝箱。通常の宝箱より珍しいものが入っていることが多い〕

へぇ、そんなのがあるのか。

もしかして、今まで開けた宝箱の中にもレア宝箱とかあったのだろうか?

〔見た目が金色に光ってるから、直ぐにわかるよ〕

金色の宝箱か。

だったら、見たことはないな。

初レア宝箱があったらいいなぁ。

そんな呑気な思いとともに、俺は横穴の中に入っていく。

中は薄暗いが、ミルクが光魔法を使って、照らしてくれるので問題ない。

岩肌の地面だが、不安定な岩がゴロゴロしている山肌より歩きやすいな。

宝箱の気配はドンドン近付いてくる。

さて、宝箱の色は通常の色か、それとも金色か。

どっちかなー? どっちだろうなー?

まぁ、俺の幸運値があれば、きっとレア宝箱なんだろうな。

そして、リスナーから「やっぱりな」「うん、わかってた」「ベータだから」と言われるのだろう。

「そこを曲がったら宝箱が――ってあれ? レア宝箱じゃ……ない?」

ミルクが作った光の球が照らし出した先にある宝箱は金色ではなかった。

だが、普通の宝箱でもない。

何故なら宝箱は虹色に――まるで、ガチャで☆5アイテム確定のような、そんな色に光っていたのだから。

何かの見間違いだろうか?

「……レジェンド宝箱。81年生きてきて初めて見た」

トゥーナが呟いた。レジェンド宝箱。

そんな凄い宝箱があるのか。

とその時、突然何か凄い気配が現れた。

「……泰良様、気を付けて。レジェンド宝箱のある場所には 守護者(ガ―ディアン) がいるから」