軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それぞれのお宝ダンジョン

扉を潜った先は、普通のダンジョンだ。

宝箱の数に制限はあっても時間に制限はないので、とりあえず歩いて進む。

角を曲がると、早速宝箱が二個もあった。

さて、開けてみようかな?

屈んで開けてみる。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………(ぷに?)」

金色のスライムと目が合った。いや、ダンジョンのスライムに目はないけれど。

手に取ってみる。

本当に攻撃してこない。そして逃げない。

ふむ……滅多に出てこないって話だったが、いきなり出てきたな。

自分の幸運値の異常さを少し理解してきた。昔はちょっとくじ運が良い程度にしか思っていなかったんだけどな。

無抵抗の魔物をいたぶるのは少し悪い気がする。

せめてキューブのように逃げてくれたら倒しやすいんだが。

もう一度見つめ合う。

手を挙げる。

やっぱり逃げない。

振り下ろしてチョップを与える。

金色スライムが死んだ。

Dコインは落とさなかったが、スライム酒を落とした。

【スライム酒(金):金粉入りの最高級スライム酒】

瓶の底に金粉が沈んでいる。

レベルが87から88にあがった。

……ふむ、レベルが必ず上がるという触れ込みに嘘はなさそうだ。

金色のスライムの入っていた宝箱を再度確認するが、中身は空っぽだ。

どうやら金色のスライムが入っていると、他の物は入っていないのか。

いや、なんか籠が入っていた。

【恵比寿の 魚篭(びく) :いっぱい魚を入れることができる魚篭】

……一応魔法の道具なのか。

インベントリには生きている魚を入れることはできないから、魚釣りとかするときに便利そうだな。

さて、他のみんなはどんな感じかな?

※ side 東 アヤメ ※

お宝ダンジョンといっても、普通のダンジョンと違いありませんね。

ただ、壱野さんと別行動っていうのは少し残念です。

でも、その代わりに恋人の聖地はとてもよかったです。壱野さんとの思い出の写真、帰ったら早速印刷してアルバムに追加ですね。

思い出すと少し顔がにやけてしまいそうになりますが、集中しないと。

とはいえ、ここは宝箱ばかりなので危険はありません。

きっと今頃、壱野さんは金色のスライムを見つけて退治していることでしょう

私はそんなに運が良い方ではありませんが、それでも皆さんの役に立てるように頑張ります。

早速宝箱を見つけました。

さて、中身はなんでしょうか?

開けてみると、入っていたのは片眼鏡でした。

これは図鑑で見たことがあります。

確か、鑑別のモノクルですね。

装備すると鑑定スキルのようなものを使える装飾品です。

いきなりレアなアイテムが出ました。

試しに自分のローブを鑑定してみます。

【魔術師のローブ:魔術師用のローブ。魔法に強い耐性がある】

鑑定できました。

ただし、鑑定結果は偽装されていて、正しく表示されません。

壱野さんのように詳細鑑定で見ることはできないのですね。

出だしは順調です。

さすがはお宝ダンジョン、もっと頑張りましょう。

※ side 押野 姫 ※

私は一つ気になっていた。

過去にお宝ダンジョンにやってきた探索者は一体誰なのか?

さっきダンポンに尋ねたけど、個人情報だからと教えてはもらえなかった。

ただ、ダディではないかと思っている。

状況証拠すらない。

直感だ。

ただ、不思議と確信していた。

泰良と初めて出会ったとき、この人となら世界一を目指せると思ったときの直感も似たようなものを感じた。

私はそういう直感を外したことはない。

子どもの頃、一度だけダディのアイテム倉庫に行ったことがある。

大量のD缶を見たことがあった。

あの時は、世界一の探索者だからD缶だっていっぱいあると思っていた。

だけど、今考えてみたらあの量は異常だ。

PDに運び込んだ量の数十倍はあった。

ダディはD缶に何かを求めている。

あれだけの数のD缶だ。

その中には宝の地図と鍵が入っていたD缶があっても不思議じゃない。

D缶の開く条件にはステータスやランクに関係するものも多いので、ダディなら他の人より開きやすいと思う。

「……ダディも七年前に通った道か」

私はそう言って宝箱を開ける。

ダディの目的はまだわからない。何を考えているのかも。

それでも、私が目指す先にダディがいることは絶対に変わらない。

私の絶対だ。

宝箱の中からD缶が出てきた。

それを手にすると、つい笑みがこぼれた。

※ side 牧野 ミルク ※

私は昔からくじ運が悪い。呪われているんじゃないかって思うくらいくじ運が悪い。

でも、不思議と怪我をしたり事故に遭ったり、そういう運の悪さはない。

人生で一番運が悪かったのは、たぶん石舞台ダンジョンでバイトウルフに襲われて殺されそうになったときだ。

その次に運が悪かったのは、月新高校の受験日当日に謎の発熱で受験ができなかったことだろう。そのため、滑り止めに受験していた桐陽高校に行くことになってしまった――みんなは桐陽高校の方が偏差値が高いんだし、むしろそっちの方がよかったんじゃないかって言うけれど、私は泰良と同じ高校に行きたかったからとても残念だった。

それらを除けば、答えを迷った選択問題は全部外すくらいの、ちょっと笑える程度の運の悪さだ。

でも、私自身は運が悪いと思ったことはない。

だって、本当に運が悪かったなら、泰良に出会うことはできなかったはずだ。

そして、泰良と結婚できたことで、確信を持った。

実は私は運がいいと。

宝箱を見つけた。

私の運の良さをここで実証する。

宝箱を開ける。

中身を見た。

「…………」

一瞬固まる。

そっか。

「うん、大丈夫。中身が入っているならハズレじゃない」

私はそう言って、宝箱の中のポケットティッシュを鞄に入れて、次の宝箱を探すことにした。

泰良と結婚できたことで運を使い果たしたんじゃないかなんて考えてはいけない。