軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

国王の動揺

ジゼルと結婚し、四ヶ月が過ぎた。

あの日以来ドラゴンは毎日王都に現れる。

王都上空を何度も旋回し時折城の屋根で羽を休める。その眼光は鋭く、事情を知らない人々は噂通り王がドラゴンの怒りを買ったと信じていた。

国民のことを考えない王、大魔法使いを蔑ろにした上に、この状況になっても何も手を打たない王に対する不満が爆発し始めた。

実はドミニク王は何もしなかったわけではない。魔法使いにドラゴンを追い払うよう要請した。だが、魔法使いは大魔法使いと密接な関係がある神聖なドラゴンに攻撃できないと断る。

その言葉にドラゴン王の卵が盗まれたと知らないドミニク王は気が動転し焦り始める。仕方なく兵士に命令するが、兵士もドラゴンの前では手も足も出ない。

矢を射ろうとすればドラゴンは大空に舞い上がりその風圧で兵士を無力にする。それに、兵士達も内心神聖なドラゴンに刃を向けたくないと思っているだけに、見事なやられっぷりを演じていた。

その心中を知っている魔法使い達は笑って見ている。兵士も魔法使い達にアイコンタクトする。誰一人ドミニク王を助ける人間はいない。

そして国民は毎日飛来するドラゴンを見て噂話は本当だったと確信した。

『戦争にかかる大きな軍事費を節約するため、この世でたった一人の大魔法使いを一人で敵と戦わせた』

『ドラゴンは聖女と大魔法使いを守る存在。ドラゴンは怒っている』

『自分の利益のために大魔法使いを危険に晒したドミニク王を引退させよ! 王家はいらない!!』

その声は日に日に増してゆき、とうとう国民は抗議のデモを始めた。

ドミニク王は国民を抑えろと兵士に指示を出すが、噂を耳にしている兵士は誰一人動こうとしない。そもそも多くの兵士はロランを慕っているだけにドミニク王の命令に従うつもりもない。

ロランはこの状況を静観していた。そして秘密裏にドラゴンの卵を探し続けている。

ドラゴンが王都にやってくる理由はこの街のどこかにドラゴンの卵が隠されているからだ。ただ、城を攻撃しない様子を見ると、シャルロットの手元にないことだけはわかる。それがロランの安心を誘う。

そして一方で国民が騒げば騒ぐほど、ロランにとって有利な状況になる。ロランはこの騒ぎを利用し、王家とジュベール公爵家の干渉を排除しようとしているのだ。これが上手くいけば安心してジゼルに『この先も一緒にいよう』と伝えることができる。

「ロラン様、エミリーの我慢が限界を超えそうです! ジゼル様の使っていたものがほとんど無くなり、本気でここを出て行こうとしていると言って……それに結婚当初ジゼル様が着ていらっしゃったお母様のドレスを焼却炉で焼いたとエミリーがそれはもう……ロラン様の代わりに私が言うと私に詰め寄りまして……」

ヤニックは苦々しい表情を浮かべロランに言った。

「そうか……私が言う、か。けれどジゼルは誰の言葉も信じないだろう。どれほど態度で示しても頑なに出てゆこうとしている。私が言葉を発しても信じてくれるかわからない。自己肯定感が低いのはわかっているが、説明できない、何かがある」

ロランはため息を吐いた。

「……確かに、私もそう感じております」

ヤニックも同意し、唇を結ぶ。ロランは拭えない違和感に一抹の不安を感じた。

「未だ頑なにジゼルが私から離れようとしている理由がわからない。私たちは、想いあっていると確信している。だが、なぜ、ジゼルは出てゆこうとする? 誰かがあらぬ嘘をジゼルに吹き込んでいるのではないかと疑ったがそれらしい動きはない。ところで、メルシエ家はどうだ?」

ジゼルに届く封筒、メルシエ家についてロランは尋ねる。

「ロラン様、メルシエ家はポカンとした様子で、身に覚えがないと震え出し、まあ、やましいことだらけですから、ご報告するまでもない想像通りの様子でした」

ロランはその言葉にがっかりしたようにため息を吐いた。漠然とした違和感。その解決の糸口はまだ何も見つからない。

数日後、城の執務室で仕事をしているとリカルドがロランを訪ねやってきた。

最近、リカルドの新作小説、『その手を掴む』が爆発的人気を博している。この小説は虐げられていた妻を夫が最終的に選ぶという話だが、リカルドはロランの結婚にインスピレーションを得て書いた話だと言った。ロランは苦笑いしたが、ロランの周り全てがジゼルを愛し受け入れ、二人の結婚がこの先も続くことを願っている。

「フフ、感謝する」

ロランはリカルドに礼を言い、飛来したドラゴンを見つめた。