軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ロランの策略

神殿にロランが現れた。

厳しい表情のロランを見て神官達はその圧に息を呑む。

ロランはそんな彼らを横目に、無言で神殿内部へと歩き出す。神官も慌ててロランの背を追った。

薄暗い神殿の奥に進む。その突き当たりにある一室にドラゴン王の卵は安置されていた。

神官が鍵を取り出し厳重な扉を開ける。

正面の台座に安置されていたはずのドラゴン王の卵はなかった。

神官の話では一日一度の確認、昨日の朝まではあったが、今朝確認するとなくなっていたとのこと。

「怪しい人物は見かけていないのか?」

ロランは神官に聞く。神官は淡々と話すロランを恐れ頭を下げたまま答える。

「ロラン様、神殿には平民から貴族まで様々な人間が出入りします。その全員を管理することはほぼ不可能です。が、奥に入ってくる人間は……おりません」

「だが、卵がなくなった。これはどう説明する? ドラゴン王の卵は聖女の命。何かあったら責任を取れるのか?」

ロランの静かな怒りが室内を凍らせる。

「申し訳ございません!! 今神官たちが手分けして探しており……ただ、卵の生命力と魔力が低く、捜索魔法にも反応しない為……」

神官は恐怖に顔をひきつらせ必死に弁明する。

(弱々しいドラゴン王の卵)

以前ロランもドラゴン王の卵を確認した時同じように感じた。何かが足りない、ドラゴン王になり切れないような弱々しい卵。だが、それがなければジゼルがこの世界に来た意味がなくなってしまう。絶対に見つけなくてはならない。

「ところで、卵は成長していたか? 以前は掌に収まるほど小さかったが……」

「はい、ロラン様、ドラゴン王の卵は今は両手で持つほどの大きさに成長されております。ただ、先ほど申し上げたように魔力と生命力が弱々しく……ですが、必ず探します!! ですから、この件は内密に……」

神官はこの失態が世間に露見すれば、聖女を慕う人々の過激な抗議活動が勃発すると懸念している。以前ロランとジゼルが結婚する時に、シャルロットの策略に踊らされた人々が神殿に押し寄せた苦い経験があるからだ。

「……随分と勝手だな」

ロランもあの時のことを思い出した。シャルロットの策略に皆騙された過去。

(……策略……)

ロランはある考えが頭に浮んだ。

シャルロットは懺悔の為毎日ここにきていた。王家は特別室で祈りを捧げる。特別室はさほど離れていない。盗むチャンスはあったはずだ。

(もしシャルロットが犯人ならば……それならば、私はこの騒ぎを利用する)

ロランは神妙な面持ちで再び神官に話しかける。

「わかった。この件は内密にし、王にも報告しなくて良い。これは神殿と大魔法使いの問題だから」

ロランの言葉に神官の表情が和らぐ。失態を公にしたくないと思っていた神官の震えが止まる。

「は、はい! かしこまりました。この件は秘密裏に……引き続き探します」

ほっとした表情を浮かべ頭を下げる神官に頷き、ロランは神殿を後にした。

神殿を出て城に向かう頃、カパネル王国にドラゴンが現れた。

王都はパニックに陥ったが、ドラゴンは王都上空を旋回するだけで攻撃を仕掛けてこない。

ベルトランの言葉通りだった。

ドラゴンはドラゴン王の卵が神殿から持ち去られたことを察知し、探しているだけ。

その様子を見る限りドラゴン王に危険は迫っていないとわかりロランは胸を撫で下ろした。

ベルトランの言葉通りだとわかると、ドラゴンの飛来はロランにとって頼もしいものとなる。

ただ、それを知らぬ国民は恐怖に慄いている。

通常ドラゴンは北の大地レオミュール王国の山に生息し、ほとんどその地から離れることはない。だからカパネル王国ではドラゴンは伝説の生き物に近い存在だった。

だが、ドラゴンの飛来を目の当たりにした人々は恐れを抱いている。

ロランは早速先ほど思いついた妙案を影を使い実行することにした。

恐怖に怯える人々の不安を利用し、噂を広める作戦だ。

『聖なるドラゴンがカパネルに飛来するようになったのは、ドラゴンの代弁者である大魔法使いを国王が蔑ろにしているからではないか?』

国民は先の戦いでロランが一人でブルレック軍と戦った事を噂で知っていた。

ただ、詳しい事情は誰も知らない。それを利用しロランは噂を広げる。

『戦争にかかる大きな軍事費を節約するため、国王はこの世でたった一人の大魔法使いを一人で敵と戦わせた』

国民は飛来してきたドラゴンを見上げ、その噂を信じた。強欲なドミニク国王に天罰が降り、ドラゴンが現れたのだと噂が一気に広まった。