作品タイトル不明
休日四日目の朝
ロランの休暇四日目の朝、神殿からの使いが書状を携え駆け込んできた。
ロランは嫌な予感がし、すぐに内容を確認した。
【緊急事態発生! ドラゴン王の卵が盗難に遭った】
その内容に戦慄が走る。ドラゴン王の卵が盗まれるなど前代未聞、あの厳重な神殿から盗まれるなど想像もしていなかった。
ドラゴン王の卵はジゼルがこの世界に来た理由。聖女の命そのもの、すぐに対応しなければならない事件が起きたのだ。
ロランは至急出かける準備をし、執務室にジゼルを呼んだ。
ドラゴン王の卵に何かあればジゼルにも何か起こるかもしれない。そんな不安がロランを襲う。
突然呼び出されたジゼルは何かを察したように不安げな表情を浮かべた。
ロランはジゼルを見つめる。見たところ異変はなさそうだ。
その様子に安堵するがすぐに出かけなくてはならない。ロランは強張った表情を浮かべるジゼルに心配をかけないよう穏やかな口調で言った。
「せっかくの休暇が潰れてしまった。今から出かけなくてはならない。夜には戻る」
ジゼルはわかりましたと頭を下げ、ロランはそのままランスロットと共に出かけた。
神殿に行く前にベルトランが滞在する他の別邸に向かう。ドラゴンのことは古に大魔法使いだったベルトランに相談するのが一番だ。
「ロラン、案ずることはない。ドラゴン王の卵は通常大人のドラゴンが守っている。だが、今回の卵は神殿に安置されていた。それはおそらくドラゴンの意思。それが何者かによって持ち出されたならばドラゴンが探し始めるだろう。すぐにドラゴンが現れるぞ」
ベルトランは険しい表情を浮かべるロランを安心させるよう声をかける。
「お祖父様、もし何者かがドラゴンの卵を傷つけようとしたら……今の私では対応できません」
魔力の下がったロランは不安に両手を握る。通常ならばすぐに行動するが今は何もできない。それがロランを苦しめる。
「ロラン、心配することはないだろう。ドラゴン王を手にするものは世界を手にすると言われておる。生まれない卵を傷つける馬鹿はいない。ジゼルは大丈夫だ。おそらくドラゴン王を手にしたい人間の仕業だろう」
「世界を手に……未だ生死不明のマチアス!! ジゼルが心配です。ドラゴン王はジゼルと一心同体。万が一何かがあったら……」
ロランの顔が青ざめた。生死不明のマチアスが万が一ドラゴン王の卵を手にしたら……考えるだけで鳥肌が立つ。
「ロラン、大丈夫だ。ドラゴン王の卵が危険にさらされると凶暴なドラゴンを呼ぶ。そんな状況に陥ったら人間も生きていられない。とにかく今はむやみやたらに探すより、ドラゴンに任せる方が確実だ」
その言葉を聞き、ロランは胸の内を話し出した。
「お祖父様……私は、シャルロットを疑っています。証拠はありません。そしてシャルロットはマチアスと通じているのではないかと思っています。これも証拠がありません。けれど、もしシャルロットが盗み
マチアスに渡したら…………そうならないことを……切に祈ります」
今のロランは二人に対抗できる魔力がない。できるのは祈ることだけ。ロランは不安と悔しさに瞼を閉じ奥歯を噛み締めた。
その様子を見たベルトランはロランの肩に手を置き、安心させるよう穏やかな笑顔を浮かべ言った。
「ロラン、お前の不安はわかった。心配する気持ちは理解できるが、一人で背負うことはない。まずはドラゴンが現れるのを待ち、それから影たちに調べさせよう」
その言葉にロランの気持ちが落ち着く。ベルトランのおかげで漠然とした不安が和らぎ、ロランは冷静さを取り戻した。
「お祖父様ありがとうございます。では、私は神殿に向かいます」
ロランはベルトランに礼を言い、そのまま神殿に移動した。