軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

すれ違う気持ち

ジゼルは指の隙間からロランを見つめ、再び指を閉じた。

(これほどまでに遠慮することなのか?)

頑なにここから去るといい、腕に抱いて寝ただけでジゼルが謝る理由があるのだろうか?

(何かがある。だが、その 何(・) か(・) が(・) わからない)

ジゼルは裸だったことに気が付き髪で上半身を隠し、体の横にあったシーツを引っ張り始める。その慌てぶりが愛らしい。

「……傷跡が、あるな」

ロランは徐に言った。

この突拍子ない質問を投げかければ、ジゼルが本音を話してくれるかも、と、期待する。あの日どれほど悲しい思いをしたのか、願わくば話してほしい。

この微妙な距離感は気のせいだと思わせてほしい。ジゼルの本当の気持ちを知りたいと、ロランはジゼルを見つめた。

「ロラン様、こんな傷平気です。心配してくださりありがとうございます」

そう言いながらジゼルはロランから視線を逸らした。責任を感じてほしくないという優しさが込められたような行動にロランの胸は苦しくなる。

ジゼルはいつも笑顔を浮かべ心のうちを隠す。

まだ、信用されていないのだと突きつけられた気がした。

ゴーン、ゴーン

微妙な沈黙に終わりを告げるかのような鐘の音。

「あ、すみません、ロラン様、今日お出かけは?」

ジゼルはハッとしたような表情を浮かべロランに言った。

(朝の準備を心配しているのだろうか?)

ロランは顔にかかる髪を片手でかき上げ、ジゼルに答えた。

「二週間出かけない。休みなしで働いたから」

ジゼルを見つめなから、心配することはないと言うように笑いかける。

「……それは、本当に、お疲れ様でした。すぐに朝食を用意いたしますからお待ちくださいませ」

ロランの言葉にジゼルはパッと顔を輝かせ言った。だが、すぐにロランに背を向けベットから出ようとする。

「待て」

その笑顔にジゼルの本心を見たような気がし、ロランは思わずジゼルを呼び止めた。

「はい」

ジゼルは動きを止めゆっくりとロランの方に振り返る。

窓からの柔らかな朝の光がジゼルを照らす。透き通るようなその姿があまりにも美しく、ロランは息を飲んだ。

心の底から湧き上がる感情を止められそうにない。シャルロットの件もジュベールも解決していない状態で言うべき言葉ではないとわかっている。だが、魔力が弱まった今、誓約魔法も弱まっている。

(今、言いたい。愛している、と)

その衝動がロランを後押しする。理性を投げ捨て感情のままぶつかってみたい。先のことはそれから考えれば良いんだと覚悟を決め、顎を引いた。目の前のジゼルは柔らかな微笑みを浮かべロランを見つめる。

ロランは喉の奥でつっかえていた溢れ出る思いを言葉に変えようと口を開く。だが、その瞬間、心臓を締め上げられ、喉を潰されるような感覚がロランを襲った。

(クッ……言えない……)

ロランは苦しさに喉元に手を当てようとしたが、不可解に思われると目の前に出した手を伸ばし、突然ジゼルの髪に触れた。

ジゼルはその行動に驚いたのか、ビクッと反応し、ロランを見つめた。その様子を見たロランは感情に任せた結果驚かせただけだとわかり咄嗟に言い訳を口にする。

「……埃がついていた」

「あ、ありがとうございます……直々に取って下さって」

ジゼルはそのまま逃げるように部屋から出ていった。

「……何を、やっているんだ。私は……」

ロランは自分らしくない行動に唇を結び、ジゼルが去ったドアを見つめた。