軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再び、対峙

「お帰りください」

ロランはそれだけを言ってテントに入った。あまりの馬鹿馬鹿しさに話す気力も失った。

近くに控えていたランスロットは出入り口を塞ぐ魔法をかける。ロランはそのままベッドに横になった。

破壊消滅魔法を二度使い、魔力が55%まで低下した。その事実はベルトランとランスロット、そして親友グレアムだけが知っている。常にランスロットがロランの代わりに魔法を使い、ロランはできるだけ魔力を温存するように努めている。この事実を知られる訳にはいかない。

ランスロットはロランが指示をする前にロランの希望通り動く。だから誰一人ロランの異変に気がついていないのだ。

「このまま何事もなければいいが……」

ロランは力無く呟いた。

だが、ロランを取り巻く環境は大きく変化している。

今カパネル王国は王族派とロラン派に別れようとしている。実力ある貴族、魔法使いはみなロラン派だ。

その状況がジュベール公爵をここに来させたのだとロランはわかっている。対立する王族派とロラン派を繋げるのはジュベールしかない。そしてロランとシャルロットが結ばれればこれ以上の結束はない。

だが、ロランはその要求を突っぱね一人で戦った。

ロランの意思は固くその提案は絶対に受け入れない。

ジュベール夫妻はジゼルを諦めないロランを説得するために『ジゼルを愛人に』そんな考えが生まれたのだ。

だがロランは、ジゼルを愛人にという両親に対し怒りすら湧かなかった。何も期待していないからだ。

怒りさえ湧かない関係。興味すらない。両親も、この国も。

分断を煽るつもりは毛頭ないが、ジゼルとの関係に踏み込んでくるならば話は変わる。そして今回の件で王命を無視した仲間の家門が不利になるようなことが起きれば実力行使しかない。

実権を握る。

だが、きっとジゼルはそんなことを望まない。だから一番望ましいのはシャルロットの兄、ガブリエルが王位に就くことだ。王族の誰一人ガブリエル王子に期待をしていない。が、ロランはわかっている。彼ならこの国をいい方向に導ける。

それから二日経った時、ガブリエル王子がロランを訪ねてきた。

「ロラン、大変だったな。国を守ってくれたこと、顔を見せない陛下の代わりに礼を言う」

ガブリエル王子はロランに頭を下げた。

「ガブリエル様、顔をあげてください。当たり前のことをしただけです。なぜこちらに?」

ガブリエルの突然の訪問にロランは驚き言った。

「……友が一人で戦ったと聞いたら、な」

ロランはその言葉に頭を下げた。

青い空、空気は澄みわたり数日前ここが火の海になったなど想像もできないほど穏やかな朝。二人は国境にまたがる山を眺めながら話をした。

「そういえば、マチアスが現れたと聞いた。会ったのか?」

「……そうですね」

仕留められなかったことを思い出し複雑な心境になる。次会ったら必ず……と手を握り締める。だが魔力、あの規模の魔力を再び使えばロランの魔力は二十%も残らない。

(何を優先すれば……)

「ところで、ロランは知っているか、シャルロットがアカデミーにいた頃マチアスと恋仲だったことを?」

ロランはその言葉に驚く。

「……なるほど……」

シャルロットとマチアス、その意外な接点に何かがつながった気がした。

「なぜ、そんなことを私に?」

ロランはガブリエルの真意が分からず訊く。

「マチアスが聖女を狙っていると聞いて、なんとなく、な」

ガブリエルの言葉に嫌な予感が胸をよぎる。ガブリエルは歴史を研究していた。恐らくジゼルが魔力を無効にする唯一の存在だと気がついている。だから遠回しに言ったのだ。

ガブリエルらしい言い方にロランはフッっと笑った。ガブリエルも笑う。

何も言わなくとも通じ合う仲。ロランを心配し、ここに現れたガブリエルはロランにとって大切な仲間だ。

「恐らく、マチアスはジゼルの価値を知っている。そう言うことですね」

ガブリエルは頷いた。

シャルロットとマチアス。あの日見たマチアスはシャルロットの意のままに操れる人間ではないと確信できる。たとえ今も二人がつながっていたとしてもシャルロットはジゼルの秘密を知らないだろう。知っていたら世界中の人間がジゼルを求め、その価値はシャルロットなど足元にも及ばない。

逆に、マチアスがシャルロットを意のままに操っている可能性もある。

ただ、これも推測だ。真実はわからない。

「……貴重な情報をありがとうございます」

ロランがガブリエルに頭を下げた時、ランスロットが現れた。

「ガブリエル様、ロラン様失礼します! 突然ブルレック王マチアスが現れました!!」

ロランとガブリエルは顔を見合わせ、ロランはすぐにガブリエルを安全な場所に案内するよう上級魔法使いに指示をした。

「マチアスはどこにいる?」

ロランはランスロットから渡されたローブを羽織り聞く。

「ジュベールの防御壁の向こう側、兵士の数一万、百人の魔法使いがジュベールの壁に攻撃を始めています。恐らく防御を解除する能力に特化した魔法使いです」

「…………急ぎお祖父様を呼んでくれ。グレアムはいるか!?」

ロランは攻撃を受けているジュベールの壁を見てグレアムを呼んだ。

「おい、ロラン、俺の勘が言っている。ヤメロと……」

その言葉にロランは口角を上げ言った。

「グレアム。この先数ヶ月は頼むぞ、今ここでやっておかねばならないんだ」

ロランはダークネスドラゴン、バジルを呼び出した。周りの空気が張り詰める。

「皆! ロランを守れ!!!」

グレアムが叫ぶと同時にロランの周りに防御魔法が施される。ロランはダークネスドラゴン、バジルを召喚した。

『ロラン、これが最後だ。この先数ヶ月お前は簡単な魔法しか使えない。だが、私はいつもお前と共にあり、ジゼルを見守ろう』

バジルの言葉にロランは目を細め頷いた。

消滅破壊魔法!!!

ズズズ……ドカーン!!

強烈なエネルギーにジュベールの防御魔法が破壊されその向こうにいたブルレック軍が魔法使いもろとも一瞬で消えた。その破壊力の痕跡が峡谷のように遥か遠くまで続き、生命の痕跡は何一つなくなっていた。

グレアムはふらつくロランを支え、駆けつけたべルトランとモーリスがジュベールの防御壁を張り直した。ベルトランは肩で息をするロランを抱きしめる。

「ロラン、防御壁は気にするな。だがな、魔力が下がった現実を隠し通すんだ。ランスロットには引き続きお前のそばから離れないよう命令した。何かあればすぐに私を呼べ」

その言葉にロランは頭を下げる。

「お祖父様二度もお手数をおかけし申し訳ありません。……お心遣い心から感謝します」

ロランはジュベールの壁を壊したことを詫びた。この壁は遠い過去初代ジュベール公爵ジョルジュ、過去のベルトランが施した強力な魔法だ。それを操れるのはベルトランだけ。

「ロラン。魔力が戻ればこの特別な防御魔法を教えよう。それまでは無理するな」

ロランはベルトランの言葉に安心し、そのまま意識を失った。